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六話 初陣。

 ガルーザスを除くベオウルフ達はロイド救出の為、森の端に回り込む様に森を進む。


「槍を」


 前方にロイドとリンターク兵数名を確認したベオウルは槍をロイド目掛けて遠投した。


「うおっ!」


「な、なんだ?」


 槍がロイド目掛けて飛んできた。両手を前に縛られているロイドは自分に刺さる寸前で半身になって交わし自分と同じ様に唖然としているリンターク兵士の隙をついて槍を取って振り回す。


「うぉぉりゃゃゃ!」


「うわっ」


「ギャ~」


 両手を縛られながらロイドは、逃げない様に周りを囲っていたリンターク兵に槍を振るう。

 いきなりロイドが槍を持って暴れだし動揺してる隙にベオウルフ達が攻撃を仕掛ける。


「突撃!」


「「「おう!」」」


「ぐわッ」


「ひっ」


 兵数は同数ながら動揺したリンターク兵は敵ではなく、瞬く間に斬り伏せる。


「ハァハァ、てめえ俺を殺すきか?」


「上手くいっただろ」


「ハハハ、ロイドの坊主が勝手に居なくなったからな、ちゃんと探してやっただろ迷子の子猫ちゃん」


 そうやって冗談を言いながらお互いの無事に安堵し、辺りを見ると丁度川沿いを進軍中の方面軍が小高い丘の近くに差し掛かろうとしていた。


「そろそろ奴等も動き出す頃だ」


「そうだ、アイツ等の狙いは方面軍の幹部達なんだ!どうするベオウルフ?」


「既にガルーザスを向かわせてる」


「なっ、随分手が早いじゃねーか」


「奴等が動いたら俺達は背後を突くぞ!」


「「「おう!」」」






 こうしてロイド救出は成功する。人質を取られての奇襲は人質を危険に曝しもっとも危険だ、人質を助け様として真っ先に人質が殺される可能性もある。

 だからベオウルフはロイド目掛けて槍を投げ人質を安全にしてから奇襲を仕掛けた。

 先の物置小屋でルメノ兵士長達の死体に直面し、その隙にベテラン兵士二人を斬り殺され呆然としている中一人奴等と言葉を発せれるロイドを信じての行動に見事応えて見せた。

 多少の文句を言われながらも無事に。





 方面軍が小高い丘の近くに差し掛かると、方面軍が進軍している丘の反対側の窪地に潜んでいるリンターク兵達が這い出て方面軍に襲い掛かる。


「「「うおぉぉ」」」


 リンターク兵達が怒涛の如く押し寄せる中、方面軍は混乱する事なく盾隊を前に出し迎撃体勢で迎え入れる。



リンターク兵達が動くと背後を突く様にベオウルフ達が動く。


「動いたぞベオウルフ」


「よし、準備は良いか野郎共!」 


「「「おう!」」」


「ルメノ兵士長達の弔いだ!突き進めぇぇぇ!!」


「「「おぉぉぉ!!!」」」



 ベオウルフ達は僅か数名でリンターク兵達よりも大きな怒涛を発しながらリンターク兵50余数名の背後に突き進んだ。


 此処に来てリンターク兵達は状況の悪さに気付くが既に方面軍と衝突しており退くに退けなくなり、エンブレムの剣を持つ指揮官は後方から来るベオウルフ達に向き直り迎え入れる。


「おやおや、せっかく助かったのに自ら向かって来るとは愚かな」


「へっ、ヤられっぱなしは性にあわねえんだよ」


 先陣切ってロイドがリンタークの指揮官と斬り合うと、ベオウルフ達も指揮官の周りに居た兵士達と斬り合いが始まる。


 リンターク兵達は隙を衝いての方面軍幹部襲撃が失敗し、数で勝る方面軍に少しずつ討ち取られ背後をベオウルフ達が取る事で完全に混乱していた。


「クッ、やってくれましたね小僧共!」


 常に丁寧な言葉を使っていた指揮官の男が言葉を荒げ怒りで顔歪めて、さらに力を込めてロイドに剣を振るってきた。


「へっ、随分余裕がなくなって来たみたいじゃねえか」


「チッ、黙れ!お前等が余計な事しなければ」



「どけロイド、そいつは俺がヤる」


 指揮官の男がロイドに怒り任せに剣を振るっている時、ベオウルフが剣を振るって二人の距離を空けロイドにその場を譲る様に言う。


「ああ、 わかった」


 珍しく聞き分け良く譲るロイドはベオウルフに怒りや悲しみと決意の籠った目を見て今までとは違う何かを感じ取っての行動だろか。


「ロ、ロイド?クッ、騙しやがって!」


「勝手に勘違いしたのはそっちだろ、俺がベオウルフだ。」


「散々馬鹿にしてくれましたね、此処で貴様の首を取らせてもらいますよ」


「そう言えば、俺達を捕まえてラッキーと言ってたな」


「また揚げ足をと『ザン』」


「アンラッキーみたいだったな」


 冷静さを欠いて隙だらけなリンタークの指揮官を一刀のもと斬り伏せて、この初陣での愁いを払った。



 指揮官を失ったリンターク兵達は完全に勢いを無くし討ち取られていき、数名は捕縛されていった。

 決着がつきベオウルフ達は健闘を称え合いながら休んでいると方面軍の指揮官が声を掛けてきた。


「貴殿がベオウルフ殿か?」


「はい、ベオウルフ・アル・バルトです。」


「私はこの方面軍の指揮官、エンリケ・アモンド大隊長だ、此度の働き見事!! 陛下にも報告させてもらおう。こやつ等の尋問もあるから我々は王都に戻る、バルト伯に宜しく伝えてくれ。」


「はい、了解しました。」





 こうしてベオウルフ達の初陣は盗賊団の討伐から、敵国リンタークの暗殺・奇襲部隊の作戦妨害及び壊滅、捕縛になり見事と完遂した。


 半数を討ち取られ、大きな犠牲を払ったがリンタークに大きな一撃を与えた事で責めてもの慰めになればと祈るベオウルフ達であった。








 後に軍神と吟われるベオウルフの初陣は犠牲と失敗と悲しみ怒り甘さ覚悟の欠落、その全てを学ばせる大きな出来事になった、戦いとは何か、戦術とは何か、此処から全てが始まっていく。





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