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目覚め

「戻った」


 父のその言葉を聞き、青年は閉じていた瞳をゆっくりと開いた。彼は壁に寄りかかりながら目を閉じていたのだ。瞑想をしていたのである。気分を落ち着かせていたのは、そろそろ会う少女と落ち着いて話すためである。

 青年は歩いてくる父に駆け寄る。気が急いて、舌がもつれそうになる。


「彼女は」

「今は眠っているが、そろそろ目を覚ますだろう。いつも通り、回収して来い」


 男は、青年に何もかもを明かさないつもりではなかった。青年に儀式の後片付けを任せることも多々ある。勿論、後を見るだけでは青年は分からないだろうと言う父親の確信というものもあったりするのだろうが。青年は、一つ礼をした。

 青年は、いつも通り父の通った道のりを、はやる気持ちを抑えて歩いて辿る。父が儀式を行ったと思われる空間に辿り着いた。そして、少女の姿を認め、駆けつける。少女は相変わらず目を閉じていたが、父の処置のせいで生き返り始めているからか、身体に温かさが戻り、動かしやすくなっていた。小さく息をついて、彼は少女に向き直った。彼が気になっていたのは、肩をかき抱きている少女の状況だ。彼は回収したものたちの硬直してしまった身体をマッサージし、柔らかくするのが常なのである。

 少女の凝り固まっていると思われる腕をマッサージしながら、肩をかき抱いている状況を変える。膝もマッサージして、曲げられている状態から脱出させた。そこまでやると、流石に少女も意識が戻りそうになってきたのか、目がぴくぴくと動き、こぽりと泡が漏れ出る。青年は、揺り起こしたい気持ちを堪え、少女を見つめる。


 そして、少女が目を開いた時。



「 …………………………っ 」



 青年が、くしゃりと顔を歪めた。


 少女の瞳は、右目が綺麗な海色、左目が鮮やかな朝焼け色で、瞳の中に、雪の結晶があった。


『 あれ? 死んでなかった? 』


 少女の声はとても美しかった。玲瓏とした声で、特有の一定のリズムで言葉を刻む。しん、とした部屋にその声はよく響いた。そして、それは青年の心も奪う。青年はぼんやりと少女を眺めた。

 たゆたう漆黒の髪は少女の瞳を際立たせる。細い唇は形が良く、少女の顔のパーツの均等を保つ。薄桃の頬は彼女の顔に彩りを与える。不思議そうに瞬かれる瞳は無機質さを孕んでいる。

 少女は初め、青年に気づかなかった。自分の真ん前にいたからである。青年の存在に気付いた時、少女はゆっくりと瞬きをした。慌てて飛び退るとか、何か声を上げるとか、そう言う普通の反応ではなかった。今までそんな反応しかされなかった青年は、何かを噛み締めるように少しの間俯き、そして少女を見つめる。青年の手は、握りしめられていた。

 少女は少し迷った後に、青年に向けて首を傾げた。疑問がある、と言いたげな表情に、青年は喉が詰まったような錯覚を覚えた。


「……君は一度死んだ」

少女は蘇生されました。青年は、少女に何らかの感情を抱いているようです。

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