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冷たい

 海の中で、少女が一人眠っていた。膝を抱えて、丸くなって。長い髪を水中にたゆらせながら。

 少女は、死んでいるのではない。眠っているのだ。その証拠に、彼女の体は、時折ぴくりと揺れる。

 こぽっと、少女の口から空気が漏れる。その泡が上に登っていき、やがて爆ぜる。すると、少女は目をゆっくりと開いた。

 自分が海の中にいるということを、少女は気づいていないようだった。息ができることにも、気づかないようだった。

 瞳には光がなく、あるのは虚無。何も考えず、何も感じない。感情はなく、ただ、この状況の理解をしようと頑張るだけ。


『 ……寒いな 』


 ぽつりと呟いて、少女は自分の肩をかき抱いた。そして、自分がふわふわと浮遊していることに気づき、目を丸くした。周りを見て、海の中であることを知った。

 しかし、わめくことはなかった。ただ、その流れに身を任せた。寒さからは相変わらず逃れられない。しかし、彼女は全然それを苦に感じなかった。


『 お母さんも、お父さんも、お兄ちゃんも。全員、信じられないから。海は、無機質だけど、信じられる 』


 こぽり、こぽり。体内の酸素が、泡になって漏れていく。少女は、肩をかき抱いていた手を、片方上へと差し伸べた。その先には、何もない。誰もいない。その手は、再び肩に回される。


『 誰かに 』


 頬を伝うのは、波か、涙か。


『 愛されたかったな 』


 誰にも愛されなかった少女は、孤独の中で、何もかもを失った。命の灯火を、海の冷たさが消し去る。波が、彼女をさらう。


























「 私、命ってなんだろう、って思う 」


「 人を助けて、命を助けて 」


「 それで、自分は命を落として 」


「 それって 」


























「 他人の命が自分の命を殺したってことだよね 」


























「 もう、嫌なんだよ 」


「 誰かを助けろって言う社会が 」


「 命を無駄にするなって社会が 」


「 それが人の命を凍てつかせて 」


「 それを、簡単に砕く社会が 」


























「 もう、うんざり 」


「 このまま、この命を潰せば 」


























「 楽になれるのかな? 」









初投稿作品は恋愛小説です。儚く、脆い。そんな漢字をイメージして書き上げました。短いシリーズものです。是非この後も、お楽しみください。

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