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平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる〜ムカつく上司は全員ざまぁ! 転生した最強魔法使いの蹂躙下剋上譚〜  作者: 花音小坂
領地運営編

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バルマンテ皇子(2)

「……っ」




 バルマンテ皇子は、ゾッとした。わざわざ店を貸し切り待っていたと言うことは、まんまとこの場に誘導されたことになる。




「な、なぜ、そなたがこんな所に?」


「いや、頻繁に帝都歓楽街で豪遊をなさるVIPがいるとのことを私の秘書官から聞きましてね」




 ヘーゼン=ハイムは、笑顔で答える。




「……そこまで、ハメは外していないつもりだぞ?」


「わかってます」




 そう答えて、手をパンパンと叩く。すると、店の中から中年紳士風の支配人が出てきた。




「あ、アーナルド……お前っ!?」


「彼とは、古くからの知り合いなんです」


「はぁ……呆れたな。ここにも根を生やしているなんてな」




 バルマンテ皇子は深くため息をついた。帝都歓楽街は、古参が市場を独占していて新規参入が非常に難しい。新しく戯館を開こうとしても、まず、相手にされない。




 いったい、どうやって古参を説得したのだろうか。




「正直、弱みを握れれば握ろうと思ってましたが、上手くはいきませんでしたよ。まるで、演技フリをしているかのようだった」


「……演技フリ?」


「無能な皇位継承候補に見せるために、です」




 へーゼンは、グラスにワインを注ぎ、バルマンテ皇子に手渡す。




「……どこにそんな証拠が?」


「カンです。このアーナルドという男のね。彼は、生粋の変態だ」


「ありがとうございます」




 中年紳士風の支配人は、仰々しくお辞儀をする。




「……よくわからないが、言いがかりもいい加減にして欲しいな。皇位継承順位は6位。は、それ以上でもそれ以下でもないよ」




 バルマンテ皇子は、ワインを一気飲みしながら答える。




「イルナス皇子の話は聞きましたか?」


「……ああ、可哀想にな。誘拐されたんだろう? 誰かさんに(・・・・・)




 興味深そうにヘーゼンを眺めながら、答える。




「皇太子になられたという噂も?」


「デリクテール皇子が、あんな手を使うとは意外だったよ。どうやら、優秀な内政官を手に入れたらしい。それにーー」




 茶髪の青年は酔っ払ったような表情で、ワインを手に取ってへーゼンの頭にトクトクと注ぐ。




「相当に、そなたが嫌いらしいな」


「……ククク。人間関係も見えている。どうやら、優秀な皇子ということは間違いがないらしいですね」


「勘違いするな。は、ただの道化だよ。皇子と言っても、名ばかりで、何の力もない」


「では、酒の席ですので雑談でもしましょうか?」


「……」




 ヘーゼンは、酒に濡れた髪を拭きながら、バルマンテ皇子に着席を促す。




「今回の任命式で、エヴィルダース皇太子陣営は若干デリクテール皇子の陣営に数を取られるでしょう」


「……アウラ秘書官は、そこまで甘くはないだろうよ」




 バルマンテ皇子は、再び出されたワインをクイッと飲み干す。




「デリクテール皇子には、モルドド秘書官の他に、ドクトリン領のクレリック領主代行という有能な内政官がつきました。そして、彼は地方の帝国将官、軍人とも親交が厚い。天空宮殿内ではなく地方の信を得るために勢力的に動いている」


「……あのキレ者が」


「まさしく、全門の虎に後門、ですな」




 アーナルドがそう答え、ワインを2人を注ぐ。




「……それでも、地方にはそこまで人数はいない。取れて3割というところだろう」




 デリクテール派閥は、そこまで伸びないとバルマンテ皇子は見ている。あの派閥には、旨みが少ない。




 水清ければ魚は住まず。




 一方で、エヴィルダース皇太子は、今回、なりふり構わずに財を放出している。




「人は、自らを利する者につく。あるいは、恐怖で縛る。エヴィルダース皇太子は両方とも持っている」




 汚濁に染まった水に、いかに清水をかけようと汚濁に染まるだけだ。だが、それを取り除くには遅すぎた。




「ええ。エヴィルダース皇太子は6割。リアム皇子、デリクテール皇子の連合派閥が3割。05割は、皇帝派閥。残りの0.5割は、ルーマン皇子、ドナナ皇子、バルマンテ皇子で食い合うことになるでしょう」


「……」




 ヘーゼンがそこまで答えた時、バルマンテ皇子の脳裏にある考えが浮かぶ。




「……3分の2か」




 バルマンテ皇子がつぶやき、へーゼンがニヤリと笑う。




「そう。重要法案を皇帝に通すための審議可決ラインの半分は、3分の2の総意が必要だ」




 上級貴族の大師ダオスー、あるいは少将級が票を持つ。実質的な権力に一部歯止めをかけることができる。




 そのことが、任命式で表現させることに大いに意味があるのだ。




「エヴィルダース皇太子とデリクール皇子は水と油です。重要法案の可決の際には必ず揉める。その時には、皇帝派とバルマンテ皇子が連合で組めば、2人において主導権を取ることができる」


「……」




 バルマンテ皇子のみで、0.2割を取れば、確かに可能だ。しかし、そこまで都合よく拮抗したバランスになるだろうか。




「皇帝派との折衝は?」


「すでに済んでます。合計で0.7割を取れれば、2者の争いに食い込むことができる」


「……簡単に言うな。薄弱の皇子には0.2割でも難しい」


「できますよ。私以外の全勢力(・・・・・・・)をあなたの派閥に突っ込めば」


「はぁ!?」




 バルマンテ皇子は、素っ頓狂な声をあげる。




「ヘーゼン=ハイム……そなた、正気か? 任命式に、皇太子となったイルナスを推すのではないのか?」


「私はそうです。しかし、他の駒はあなたの派閥に属させる」


「……」


大師だおすー以上、もしくは、少将格以上。これまで、エヴィルダース皇太子陣営から切り崩した駒が、少なからずあります」


「……どうやって、そんな」


「簡単です。彼以上の利、そして、恐怖です」




 ヘーゼンはニッコリと答える。




「なるほど……やはり、そなたは化け物だな」




 バルマンテ皇子は、打ち震える恐怖を抑えながらつぶやく。




「一騎打ちではなく混戦に持ち込めば、誰にもでも勝機は出てくる。バルマンテ皇子にも、ルーマン皇子にも、ドナナ皇子にも……そして、イルナス皇太子にも」


「……」


「どうです?」




 ヘーゼンは紅のワインをトクトクと注ぐ。


















































「ククッ……面白いな。毒のように赤いが、呑んでやる」




 バルマンテ皇子は一気にそれを飲み干した。



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