第34話 神様、進化する
あかりが、開けた冷蔵庫の前でしばらく立ち尽くしていたのは、冷蔵庫の中身が以前とは変わっていたからだ。
卵、豆腐、ラップに包まれて半分だけ残った玉ねぎと人参、使いかけの味噌、小さな保存容器に入った煮物の残り。
少し前まで、この冷蔵庫はもっと単純だった。
コンビニ弁当、コンビニのサラダ、ペットボトルのお茶、期限の近い菓子パン、たまにスーパーの惣菜。
それらが今や、出来合いのものではなく、調理しなければ食べることができない食材に様変わりしていた。
大学へ行って、バイトをして、帰ってきて、ひとりで食べる生活だったら、それで十分だったけれど最近は、そうではなくなっていた。
三日に一度ほど、月読命が料理を作るようになったからだ。
それは、良いことだ。
とても、良いことなのだ。
問題があるとすれば、良すぎることだ。
「……コンビニ飯に戻れない」
あかりは、冷蔵庫の扉に額をつけ、低くつぶやいた。
背後から、月読命の静かな声が返ってきた。
「戻れぬのか」
「戻れない。 完全に、舌が贅沢を覚えた」
「贅沢」
「うん。 ツクのごはん、普通においしいんだもん」
月読命は、ならば我がすべて作る、と言いかけて、その言葉を飲み込んだ。
「ならば、よいことではないのか」
「よいことなんだけどね」
あかりは冷蔵庫の中をもう一度見たが、どの食材も中途半端な量しか残っていない。
「一品作るには、微妙に足りない」
「足りぬのか」
「足りない。 何を作るにも、あと一つ足りない」
あかりは冷蔵庫を閉めた。
「せっかくだから、何作るか一緒に考えながら買い物しよっか」
月読命は、伊織の言っていた『全部叶えてもらうより、一緒に迷ってもらう方が嬉しい』という言葉を思い出して、月読命は、静かにうなずいた。
「ならば、我も迷おう」
「……うん。 迷わなくていいから、一緒に考えてね。 迷宮じゃあるまいし」
そして、あかりは声高らかに宣言した。
「これからスーパーに行きます!」
月読命は、真剣な顔で応じた。
「よいだろう」
その声音があまりにもやる気に満ちていたので、あかりは思わず笑ってしまった。ただの買い物だが、月読命にとってはたぶん違う。
何を作るか、一緒に考えること。もしかしたら、二人して迷うことになるかもしれない。でも、それは人の世を学ぶことなのだろう。
月読命は、心なしか気合のこもった表情で、静かに言った。
「行こうぞ」
「スーパーにね」
「すぅぱぁへ向かう」
「戦でも始まるのかな」
こうして、あかりと月読命は、夕方の町へ出ることになった。
*
日が落ちるのが、ずいぶん早くなった。
少し前まで、夕方になっても夏の気配がしつこく残っていたのに、今はもう、空の色がすぐに薄くなる。風も、歩いているうちは気持ちいいが、立ち止まると少し冷たい。
あかりは薄手の上着の袖を指先まで伸ばしながら、隣を歩く月読命を見上げた。白を基調にした服は相変わらず人目を引くが、本人はすっかり平然としている。最初に地上へ降りてきた頃の、何を見ても異界を見るような顔とは、もう違う。
信号を待つ。人の流れに合わせる。歩道の端に寄る。自転車が来れば、あかりの少し前に出る。そのひとつひとつが、今ではすっかり自然になっている。
「……進化してるなあ」
「何がだ」
「ツクが」
「我は変わらぬ」
「いや、変わってるよ。 めちゃくちゃ人間界スキル上がってる」
「すきる」
「スキルはまだ知らなかったのね」
月読命は、その言葉を頭の中で分解するように、しばし考え込んだ。
「……もしや、“好き過ぎる”の短縮語ではないか」
「的を大きく外してる! 当たる気配がないよ!」
軽くツッコミを入れて笑った時点で、あかりは完全に油断していた。
「ならば、我はあかりの喜ぶ顔が“すきる”、ということだな」
あかりは、その言葉に膝の力が抜け、カクリとよろめいた。
これは、流れ弾が当たっただけなのか。いや、初めから私が的だったのかもしれない。
「……大当たりです……」
「そうであろう」
あかりは、勘違いしている月読命を正さなければと思ったが、不意打ちのダメージがまだ抜けきらず、諦めた。
その時だった。
「あー!」
公園の方から、明るい声が飛んできた。
あかりが振り向くより早く、ランドセルを背負った子どもが三人、月読命を指さした。
「白ボスだ!」
「白いラスボス!」
「白ボス、今日もスーパー?」
あかりは、足を止めた。
「今日も、って……子どもたちにまで覚えられてるの?」
月読命は、ごく普通に答える。
「奉仕の帰りに、幾度か立ち寄った」
「それは知ってるけど。まさか、そこまで顔なじみになってるとは思わなかった」
「顔なじみ」
「うん。 完全に地域密着型の白ボスになってる」
あかりは、月読命の顔を見上げた。
——何だろう。
知っていたはずなのに、知らないところで、さらに成長している。神様なのに。いや、神様だからなのか。
子どもたちは、さらに騒ぎ始めた。
「白ボス、たまにスーパーにいるよ!」
「じゃあスーパー白ボスじゃん!」
「スーパー白ボス! スーパー白ボス!」
月読命は、静かにその言葉を受け止めた。
「白ぼすより、上位であるか」
「たぶん強い!」
「買い物がうまそう!」
「値引きシール見つけそう!」
月読命は、真面目にうなずいた。
「ならば、その名に恥じぬ働きをしよう」
あかりは口元を押さえた。
——だめだ。笑っちゃだめ。
ここで笑ったら、月読命にも、子どもたちにも失礼だ。
でも、無理だった。
「スーパー白ボス……っぷぅ、ふふふっ」
小さく漏らすと、月読命と子供たちがこちらを見た。
「あかりお姉ちゃん、笑ってるよ!」
「ぷうって言った!」
「どうしたの?」
「何かおかしいか」
「おかしいというか、強そうというか、庶民的というか……っぷふふ」
「強さと庶民は、両立せぬのか」
「両立してるから面白いんだよ……あはははっ」
やがて、子どもたちは、満足げに手を振って去っていく。
「スーパー白ボス、がんばれー!」
「安いやつ見つけてねー!」
「卵は割るなよー!」
月読命は、最後の言葉にだけ、やけに真剣に反応した。
「卵は、守るべきものだ」
「過去に何かあった感じ出てるじゃん。悲劇を抱えた悪役なの!?」
あかりのツッコミに、月読命は答えなかった。答えないところが、いよいよ悪役のように見えた。
*
スーパーに着くと、月読命は入口でごく自然にカゴを取った。それだけではない。カートを引き出し、カゴを載せるまでの動きもスムーズだった。
「今日は、“かぁと”でも進みづらいことはあるまい」
「……ツク」
「何だ」
「今、めちゃくちゃ自然にカートまで用意したね」
「使うものではないのか」
「いや、使うものだけど。 使うものだけどさ」
月読命は、当然のようにカートを押し始めた。
「奉仕の帰りに、幾度か立ち寄ったと言ったであろう」
「いや、聞いたけど、……想像よりちゃんとスーパーしてる」
「人の市を知るには、通うほかない」
「兵法聞かされてるみたい」
あかりはカゴを受け取りながら、少しだけ感心していた。
前に来た時の月読命は、棚に並ぶ食材や調味料の量に、いちいち驚いていた。
『季節が棚に置かれている』なんて言っていたし、魚が切り身になって並んでいることに、神妙な顔をしていた。
けれど今は違う。
驚きながら見るのではなく、ちゃんと目的を持って見ていた。
月読命が、店内の奥へ目を向けた。
「まず、奥を見るべきだ」
「え?」
「この時刻、惣菜に赤き印が現れ始める」
「赤き印」
「値引きしーる、であろう」
あかりは、カゴを持ったまま固まった。
「ツクが……値引きシールを……正式名称で……」
「ただし、安ければよいわけではない。 今夜食べるもの、明日の朝に回せるもの、冷蔵の箱に収まるもの。 それらを見極めねばならぬ」
「待って、待って! ツク、いつの間にそんなこと覚えたの!?」
「自ずと読めるようになる。 通っていればな」
「スーパーに?」
「うむ」
あかりは、深く息を吸った。
「主婦じゃん……」
月読命は、少しだけ背筋を正した。
「いや、……我は、すぅぱぁ白ぼすである」
「自称し始めた!」
そのまま惣菜売り場へ向かおうとした月読命を、あかりは慌てて止めた。
「ちょっと待って。 今日は料理する材料も買うんだから、まず野菜から見よ」
「野菜か」
「うん。 冷蔵庫に残ってるものもあるし、何を作るか考えながら」
月読命は少し考えるような素振りを見せたけれど、すぐに同意の意思を返した。
「そうだな」
野菜売り場に入ると、月読命の表情がほんの少し変わった。
棚に並ぶ大根、白菜、ジャガイモ。夏の鮮やかさとは違う、落ち着いた色が増えている。
月読命は、並べられた野菜を見つめ、静かに言った。
「季節のものは、やはり力が濃い」
「力?」
「人の言い方なら、味がよい、ということだ」
「あ、それは分かる」
あかりが笑うと、月読命はひとつの袋を手に取った。見切り品の棚にあった、少し形の不揃いなジャガイモの袋だ。
「これは、今日使うべきものか」
「うん。 今日使ってもいいし、少し置いておけるからかなり助かる」
「ならば、候補に入る」
「候補って言い方、かっこいいね」
「選ぶのだから、候補であろう」
月読命は真剣だった。
真剣に、ジャガイモの袋を見ている。
それが妙におかしくて、でも少しだけ嬉しかった。
「ツク、本当に覚えてるね」
「そなたが以前、傷ませるのが一番もったいないと言っていた」
「そんなことまで覚えてるの?」
「そなたの言葉である」
あかりは、何か言おうとして、やめた。スーパーの野菜売り場で照れるのは、負けだと思った。
けれど、少しだけ頬が熱い。
そのあと、二人は肉売り場へ移動した。
あかりはいつもの感覚で、使いやすそうな豚肉のパックを手に取ろうとした。
その瞬間、月読命が静かに言った。
「あかり、それは今取るべきではない」
「えっ、なんで?」
月読命は、隣のパックを指した。
「百ぐらむ当たり三十円、こちらの方が安い。さらに、こちらは明日まで保てる」
あかりは、値札を見た。
その通りだった。
「……確かに」
「ただし、そなたは薄切りの方が使いやすいと言っていた。 ゆえに、安さのみで選ぶならこちら。 扱いやすさで選ぶなら、そちらだ」
「ツク……」
「何だ」
「主婦みたい」
「我は、すぅぱぁ白ぼすである」
「二回目!」
あかりは笑いながらも、少し困った。
月読命は、本当に進化している。
しかも、ただ安いものを選ぶだけではない。あかりが使いやすいか。今日使うか、明日に回すか。冷蔵庫に入るのか。
そういうことまで、ちゃんと考えていた。
「うーん。 どうしようかな……」
あかりが迷っていると、月読命が提案してきた。
「こちらの肉であれば、余ったとて、明日に我が一品作れる」
「そうだね、じゃあ、今日はこっちかな。 明日も使える方」
月読命は、選ばれたパックを丁寧にカゴへ入れた。
次に、あかりはお菓子売り場の前を通りかかった。本当に、通りかかっただけだった。見るつもりはなかった。少しだけ、視界に入っただけだ。
「あかり」
「な、何?」
「そなたは今、その菓子を見た」
「見てない」
「一呼吸、足が止まった」
「観察力が怖い」
月読命は、棚の商品を見て、値札を見て、カゴの中を見た。
それから、あかりの顔を見た。
「肉を先ほど選んだものにしたため、その菓子も入る」
「……計算はやっ!! って別に買わなくてもいいよ」
正直、あかりはちょっと食べたいと思っていたけれど、以前、月読命にワインを買ってあげられなかったから、遠慮した。
けれど、月読命は、あかりに柔らかな視線を向けながら、「よい」と言った。
さらに、あかりの遠慮する言葉を先回りして潰すようなことを言った。
「そなたの喜ぶ姿が、我は“すきる”、だからな」
あかりは、固まってしまった。おそらく真っ赤な顔で。
月読命はあまりにもまっすぐな眼差しであかりを見ている。
スーパーの通路で。お菓子売り場の前で。近くには、普通に他の客もいるし、視線も感じる。
状況が悪過ぎだった。
「ここ、す、スーパー! スーパー! スーパーだから!」
早く何か言わないと、と焦って出てきた言葉がスーパーの連呼だった。
「場所によって、真は変わるのか」
「変わらないけど! 変わらないけど言い方!」
月読命はただ、あかりの赤くなった顔を静かに見ている。
あかりは、慌てて菓子を一つ取った。
「買う! 買うからもう次行こ!」
「うむ」
月読命は満足げにうなずいた。
*
惣菜売り場に着くと、月読命の言った通り、いくつかの商品に値引きシールが貼られ始めていた。
「あ、本当に貼られてる」
「赤き印は、この時刻に現れることが多い」
「言い方はまだ神話っぽいんだよねえ」
「ただし、買いすぎれば、明日のそなたが苦しむ」
「明日の私まで心配してくれるんだ」
「そなたは、残すのを嫌がる」
「……覚えてるなあ」
月読命は、半額になったコロッケをじっと見た。
「こやつは、今夜救われるべきか」
「惣菜の命を背負わないで」
「捨てられるより、食される方がよいであろう」
「それはそうなんだけど、言い方が壮大すぎる」
「しかし、こちらの“はんばーぐ”こそ、我らに救われるべきでは」
あかりは、隣で鬼気迫る視線を惣菜に向ける月読命を見た。
まさか、月読命には、究極の選択が迫られているのではないだろうか。一方の命を救えば、もう一方の命は救われない。神様が人の世で究極の迷いの中にいるのかもしれない。
そう思ったとき、月読命の喉仏が上下するのが見えた。あかりには、それがゴクリという音を伴って動いたように感じた。
「ツク、……どっちも食べたいってことでしょ?」
月読命は、なおも惣菜から目を離さずに言った。
「……あちらの“えびふらい”も」
「予算!!」
結局、二人は値引きされた惣菜を一つだけ選んだ。
*
会計前、月読命は懐から小さく畳まれた封筒を出した。
「今日の材料の一部は、我が払う」
「え、いいよ別に」
「我も食す。 さらに、我が料理に使うものもある」
「それはそうだけど」
「ならば、我も払うべきだ」
月読命が真面目すぎて、あかりは笑ってしまった。
「じゃあ、今日はツクが料理する分の材料代だけお願いしていい?」
「うむ」
「細かい?」
「よい。 決まりがある方が、人の世では乱れぬ」
「そこまで大きい話じゃないけど、ありがとう」
会計を済ませると、月読命は袋詰め台の前に立った。
そして、あかりが何か言う前に、重いものを袋の底へ入れた。その上に野菜を置き、柔らかい菓子を横へ避ける。冷たいものと温かいものも、ちゃんと離している。
最後に卵のパックを手に取ると、まるで宝物でも扱うように、慎重に袋の一番上へ置いた。
「卵は、守るべきものだ」
「そこだけ、さっきからなんなの!」
あかりは苦笑しながら、月読命の手元を見た。確かに、袋詰めは妙に上手い。
「……なんでそんなこと知ってるの?」
「以前、あそこのふくよかな店員に忠告を受けたのだ」
「聞こえるよ!」
あかりは慌てて声をひそめた。
その瞬間、レジの向こうから、鋭い視線が飛んできた気がした。
「……手遅れだったかも......」
月読命は、しばし沈黙した。
「ふくよかとは、悪しき言葉なのか」
「悪口じゃなくても、本人の前で体型を説明しない!」
「人の世は、難しい」
「難しいのは女心だよ」
「女心……ねっとで調べるとするか」
「それ、モテないやつだからね!」
「……何を言っておる。 我は普通に持てる」
と言って、月読命は当然のように二つの袋を持った。
あかりは、すぐに片方へ手を伸ばす。
「一個ちょうだい」
「重い」
「だったら、軽い方でいい」
「我が持てばよい」
「それだと、私が一緒に買い物した感じしないでしょ?」
月読命は手を止め、ほんの少しだけ俯きながら、また伊織の言葉を思い出していた。
全部叶えること、全部背負うこと。それがいつも、あかりの嬉しいこととは限らない。
月読命は、軽い方の袋をあかりに渡した。
「これは、そなたが持て」
「うん。 それでいい」
あかりが受け取ると、月読命は静かにうなずいた。
スーパーを出ると、外の空はもうかなり暗くなっていた。店の明かりが、夕方の町の中でやけに明るく見える。
買い物袋が、手に少しだけ重い。けれど、その重さが嫌ではなかった。
あかりは歩きながら、レシートを取り出した。予定より、少し安く済んでいる。
食材も買えた。値引き惣菜も一つ。あかりの菓子も一つ。月読命が料理に使う材料も、ちゃんと入っていた。
「今日、めちゃくちゃ買い物うまくいったね」
「戦果は十分か」
「うん。 勝ちです」
「ならばよい」
あかりは、隣を歩く月読命を見上げた。
その顔はどこか、やり遂げたあとみたいに誇らしげだった。
「スーパー白ボス、強かったね」
「次は、さらに上へ至る」
「さらに進化するの?」
月読命は、少し考えた。
「......特売白ぼす」
「退化だよ!」
あかりが笑うと、月読命もほんの少しだけ表情を和らげた。
*
部屋に戻ると、二人で買ってきたものを冷蔵庫へ入れた。月読命は、早く使うもの、明日に回せるもの、冷凍できるものを分けていく。
その手際を見て、あかりはまた感心した。
神様は、進化する。
それも、月を動かすとか、夜を支配するとか、そういう大げさな方向ではなく、カゴを取り、値札を見て、卵を守り、あかりが好きな菓子を覚えるような、そういう方向に。
あかりは、買ってきたお菓子の袋を開けた。
一つを自分の口に入れ、もう一つを月読命へ差し出す。
「今日の戦果」
月読命は、それを受け取った。
「うむ」
あかりは、少しだけ照れながら言った。
「ありがと。 楽しかった」
「我もだ」
「買い物が?」
「そなたと迷うことが」
月読命は、真っ直ぐにあかりを見ていた。
たぶん、月読命は自分が何を言ったのか、半分くらいしか分かっていない。けれど、もう半分くらいは分かって言っていたように感じた。
——私も、ツクと迷うのは楽しかったよ。恋人とか夫婦みたいだったし。
あかりは恥ずかしくなって視線を逸らし、なんとなく冷蔵庫の方を見た。
月読命も、なぜか同じように冷蔵庫を見て、そして、静かに言った。
「卵は、無事である」
「余韻返して!」
やっぱり、この神様は何も分かってないんじゃないかと思うと、あかりは笑いが止まらなかった。
月読命も、そしてあかり自身もいろいろな迷いの中にいる。けれど、一人で迷うのではなく、一緒に迷うのは、とても楽しいのだ。
その夜、あかりの部屋には、しばらく笑い声が残っていた。




