後日譚4
さらりとした律の髪を梳いてあげる。
「律って髪の毛、触られるの好きだよね。傷むんじゃない?大丈夫?」
ソファーで、俺の太ももを枕に甘える律の髪を梳きながら、そう尋ねてみた。
「“髪を梳かれるんのが好き”じゃなくて、“澪に触られるのが好き”なんだよ」
そう言うと、律は身体を起こして、「はい、交代」と、今度は自分の太ももを膝枕に俺に寝てもらうよう指示してきた。
「え?別に俺は良いよ」
「なんで!?俺も澪に触りたいのに!⋯⋯あっ!間違えた。俺も澪に寛いでもらいたいのに!?」
「⋯⋯⋯⋯どっちが本音でどっちが建前?」思わず、半眼になる。
「え⋯⋯っ、どっちも本音だよ。ほら早く」
目線を逸らしながら律は言うと、太ももの上をポンポン叩いて、催促してきたので、その上にクッションを置いて頭を預けた。
「澪を感じられない⋯⋯」と、言っていたけど「これはこれで骨があたりにくいのか⋯⋯俺も次回から澪を真似よう」と、納得していた。
律のことは放っておいて、スマホのゲームでもしよ、と起動したけども、さらりと前髪を掻き上げられ、
「おでこ出した澪かわいー」とニコニコ顔の律。
「この髪型も可愛い」両サイドの髪を律の指が軽くつまんで、上機嫌。
「ねぇ、澪。俺達の子供、どっちに似ると思う?俺は、澪に似て欲しいなぁ〜。めちゃめちゃ愛らしい子供になると思ったら⋯⋯⋯⋯俺、嫁がせれない」
突然、律の声のトーン低くなり、俺の心臓が小さく跳ねた。
スマホから律に視線を遣ると、そこには真顔の律。
目線は俺の顔を見ているのに、それを通り過ぎて誰かを見ていた。
(⋯⋯俺はまだこの顔の律に慣れてないんだよ)
慌てて口を開いて、律の表情を真顔から変えれないか試みる。
「律、顔怖いよ、どうしたの?俺、律の笑った顔が好きなんだけど」
はっ、と我に返った律は、慌てて俺に目線を合わせて笑顔。
「ごめん。澪と俺の子供が生まれて、大きくなって、伴侶が出来る歳まで成長させてた」
「⋯⋯⋯⋯」
たまに律は、壮大な想像で勝手に苦しんでいる時があるけれど、今回は、俺達の子供を成長させていたらしい。
「俺、笑顔で送り出せるように、俺に似た子供である事を祈ろう」と、そう独り言を呟いて決着していた。
「もし、律に似た子が生まれたら将来、すごく綺麗な子になるだろうね」
俺は、律の整った顔を見ながら、何気なく呟いた。
律は、突然の破顔。
「澪、俺のこと綺麗だって思ってるの?」
「え⋯⋯、うん。思ってるよ?律は、綺麗だし、格好良いよ?」
俺の言葉に、律は胸を押さえ、目を瞑り、しばらくそのままでいた。
「⋯⋯録音しておけば良かった。いや、なんなら誰が言ったか証拠になる動画」
ぽそり、と放った律の言葉が怖い。
「澪、俺、次は母親役になるよ。澪にずっと、綺麗だって言ってもらいたいからさ。妊娠して、女性ホルモン増やさなくちゃ」
まだ、一人目が生まれていないのに、もう二人目の話を律はしだす。
「⋯⋯それに、澪の処女も童貞も⋯⋯俺どちらも、澪の“初めての人”になりたいからさ」
そう頬を染めて言う律だけど、話す内容が内容だけに、全く可愛く感じられなかった。
「⋯⋯律ってなんか、ちょっと、変態入ってるよね」
律を見遣りながらそう言ってみたが、
「俺の変態は、澪限定だよ」
と、明るく返された。あまり嬉しくない。
俺は呆れて、律から視線を外すと、スマホの画面に集中するのだった。




