第五話:踏み出した一歩、人という犠牲の上に立つ。
さて話は変わり、こちらは郭升、詠或、斉誄―――。
「雛覇。抵桧の治める北東の地へ侵攻しよう。守ってばかりで天下は狙えぬ。時には攻めるのも必要だ」
軍議の最中、詠或が机上へ手を軽く叩き付ける。
「そうだよ。誄も色々あって迷惑掛けちゃったし『かた』を付けないとね」
以前抵桧に無理矢理同盟を組まされていた斉誄も、侵攻することを薦めていた。
「ああ。たまには侵攻も良いだろう。それに、出陣の準備は済んでいる。いずれの侵攻は俺も考えていたからな」
「…馬を引け!出陣だ!」
郭升の言った通り、出陣の支度は既に整っていた。
郭升は白馬に跨り、先頭を進んだ。
詠或の耳に銅鑼の音が、遠く聞こえた。
斉誄は鼻に、血と錆の匂いを覚えた。
遙か遠くに、戦の様子が見受けられた。
織嘉は、一人立て籠もった城の中に、ひとつの足音を感じた。
「本陣を開け放して前線へ飛び出してしまうとは、岱夷も落ちぶれたものですね」
抵桧の声だった。
本陣には身代わりを立て城を制圧しようとしている抵桧は、織嘉に気づいていない様子だった。
『抵桧殿の方こそ、落ちぶれているのではありませんか?』
心の中でそう問いかけ、壁に立てかけてあった剣を手に取り、後方より接近した。
そして。
一気に抵桧の首級を飛ばした。
大将首を、討ち取った。
天下に一歩、近づく。
抵桧が討ち取られた事にはまだ誰も気づいていないのだ。
織嘉が剣を捨て、ふと外を見ると遠くに郭升、詠或、斉誄の姿が目に映った。
織嘉は刀武に気付かれぬ様、すぐそこに繋がれていた軍馬に跨り三人の所へ向かった。




