序:乱世再来、結束の分裂。
別伝も書いていきたい、ということで勝手ながら短篇を削除いたしました。迷惑をお掛けしました。
連載として書いていきます。
小規模な戦すら起こらないこの寂れた小さな国には、玉座に憧れる六人の民があった。
民といっても多少の権利はある位置に置かれている立場の民で、武もそこそこ備わっているのだ。
戦には義勇軍として参陣した事が何度となくあった。
そうやって、勝利を治めたりもしていた。
この乱世、女子供も腰に剣を差す事を許可されており、男女逆転として国を統率していく事も在り得ない話
では無かった。
北の地に、赤髪の民あり。
姓を『刀』、名を『武』といった。
敵軍勢力へ単騎で駆け、怪我ひとつせず功を立てる豪傑だ。
この地で生まれ、この地で育ってきた。
刀武は、字を『岱夷』と定めた。
泰平の向こう側から、少しずつ乱世が近づいていた。
東の地に、碧眼の民あり。
姓を『詠』、名を『或』といった。
冷静沈着な態度で戦に挑み、味方をした軍が優勢になれる策を打ち出す。
この地で生まれ、この地で育ってきた。
詠或は、字を『忠葎』と定めた。
泰平の向こう側から、少しずつ乱世が近づいていた。
南の地に、黄金の首飾りを身に付けた民あり。
姓を『斉』、名を『誄』といった。
華麗な舞踊で味方に幸福をもたらし、敵軍を翻弄する。
この地で生まれ、この地で育ってきた。
縁談は無く、皇后や夫人と呼ばれることもまだなかった。
泰平の向こう側から、少しずつ乱世が近づいていた。
西の地に、緑色の鎧を纏った民あり。
姓を『織』、名を『嘉』といった。
持ち前の器量と才能で、他の民たちからも大いに慕われている。
この地に生まれ、この地で育ってきた。
織嘉は、字を『狗楓』と定めた。
泰平の向こう側から、少しずつ乱世が近づいていた。
北東の地に、黒き気迫と怨念を漂わせる民あり。
姓を『抵』、名を『桧』といった。
彼女の得意とする奇襲戦法は、闇でさえ見抜く事が出来ないと噂されていた。
この地に生まれ、この地で育ってきた。
抵桧は、字が欲しいと切実に願った。
一人の女ではなく、男として国を守りたかったのだ。
泰平の向こう側から、少しずつ乱世が近づいていた。
そして南西の地に、白き心を抱く民あり。
姓を『郭』、名を『升』といった。
大切な仲間たちを守る為、命をかけて戦い抜き戦功を立てた。
この地に生まれ、この地で育ってきた。
郭升は、字を『雛覇』と定めた。
泰平の向こう側から、少しずつ。
確実に乱世が近づいていた。
この大陸は、束の間の泰平に包まれていた。
分裂しては、戦が起こる。
勝者が居て、敗者が居る。
国はひとつとなる。
また国同士が分裂し、戦乱の時代がやってくる。
そして勝者が居て、敗者が居る。
国が、ひとつとなる。
やがて、ひとつの国が分裂するという歴史が時を紡ぐ。
――また、再来する。
そして天下は、乱世となった。
これまで共に助け合い、国を築いてきた六人の民は。
将軍となった。
初めは状況を飲み込める状態ではなかった。
帝へ訊ねても追い返されるだけだった。
仲間だった者たちを、倒して天下を取る。
誰でもいい。
誰かが誰かを、討つ。
そうすれば天下は、丸く掌中に治まる。
掌中に、治めなければならないのだ。




