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23日、僕はひとりで買い物に出掛けた。
ラッキートランプで、プレゼントしてみない?って出たから、プレゼントを買いに。
真鍋先輩にだけ?って考えたけど、でもクリパにはみんな来るし。
散々悩んで、財布の中身とも相談して、自分の分も含めて5人分のシャープと消しゴムを買った。
赤、緑、青、黄、紫。
うん、よし。みんなのイメージとぴったり。
ショボいよ?ショボいけどね?
こういうのは気持ちの問題であって値段の問題じゃないっ。
どうせなら毎日使って欲しいもん。
そう、気持ちの問題なの!!
「ただいまーー。うわ」
玄関を開けたらものすごい量の靴があって、ちょっと引いた。
これは………あれだ。
「おかえり、真尋」
「まーくん、おかえりなさーい」
「まーくん、お邪魔してるわー」
「まーくん、久しぶりだな」
「おお、まーくんまた背伸びたか?」
「こ、こんにちは………」
「まー、上行こうぜ」
「まーくん、避難しよ」
「あ、うん」
やっぱり何故か透と友弥んちのおじさんおばさん勢揃いで、うちの中が人だらけだった。
あれ、うちの父さん居た?まあ、いいや。
僕は透と友弥と2階の部屋に避難した。
「まーくん、どこ行ってたの?」
「うん、ちょっとね」
「明日デートだろ?」
「で、デートじゃなくて、クリパの買い出し!!」
「だからデートじゃん」
「デートだよねぇ」
昨日のことはね、ちょっとだけ話した。
て言うか………いつものように無理矢理言わされた。
そりゃね、隠すつもりはないよ?ないけどさ、もうちょっと余韻に浸ってたいじゃん!!
喜びに浸ってたいじゃん!!
なのにこの2人はいつもの時間にやってきてニヤニヤしながら根掘り葉掘り根掘り葉掘り根掘り葉掘り!!
「真尋、ちょっといい?」
コンコンってノックされて、母さんの声。
どうぞって言ったらドアが開いて母さんと透と友弥んちのおばさんも居て。
「1日早いけど、お誕生日おめでとう」
「まーくんおめでとう」
「これ、プレゼントね」
「あ、ありがとうございます」
ちっちゃい時から、毎年僕たちは母さんたちから誕生日プレゼントをもらってた。
ここ数年は服がほとんどで、今年もそんな感じ?
「ほら、まーくん開けてみて」
「絶対似合うから!!」
透と友弥のおばさんに言われて、僕は恐る恐る袋を開ける。
何で恐る恐るかってさ、母さんたちはいつも僕たちが自分では選ばないような服を選んで来るから。
着ると誉められたりするからきっとオシャレなんだろうけど、ね。
でも絶対母さんたち僕たちで遊んでるよねって、いつも3人で言ってるんだ。
取り出した服はやっぱり僕が自分では選ばないような服だったけど。
「まー、それ似合いそう」
「うん、なかなかいいんじゃない?」
うん、ちょっと僕も今回はそう思う。
「でしょ?今回はおばさんたち頑張ったの」
「奮発したんだから」
「え?何で?」
「だって真尋、明日真鍋くんとお出掛けなんでしょ?」
「それと服が何か関係あるの?」
「デートならやっぱり、ねぇ?透ママ、友弥ママ」
「そうよ、まーくん」
「後で髪の毛も切ってあげる!!明日の朝もちゃんとセットしに来るから!!」
「あら、透ママお願いしてもいい?」
「いいに決まってるじゃない!!他でもないまーくんのデートよ!?私張り切ってセットしちゃう!!」
「さすが美容師さんね」
「友弥くんの時もやるから言ってね!!」
「ぜひお願いするわっ」
「ちょっと!!何勝手に話を進めてるの!?」
あまりにもどんどん進んでいく会話に、入るタイミングを完全に失って思わずぽかーんとしちゃったけど。
真鍋先輩と出掛けるとは確かに言ったよ?言ったけど、デートって、デートって言わなかった!?今⁉︎
しかも髪の毛とかっ!!勝手に!!
「まーくん?」
「は、はい」
透のおばさんがずいっと透にそっくりな顔で僕に近づく。
こ、こわい。
「後で髪の毛、切るわよ」
「は、はい…………」
「明日の朝も、おばさんがかっこよくしてあげるから」
「いや、その、明日は、別に………」
「いいわね?」
「………はい」
その迫力に勝てる訳もなく、僕は頷くしかなかった。
「8時には来るから、起きて髪の毛洗って着替えておくこと!!」
「はい…………」
「あー、もう、楽しみー」
「まーママ、私も見に来ていい?」
「もー、友弥ママったらいいに決まってるでしょ。あ、真尋、その服1回洗いたいから、後で下に持ってきてね!!明日着て行くでしょ?」
「………」
答える気力もなく黙っていたら3人はバタバタと去って行った。
何だろう。
何かものすごく、疲れた気がする。
「完全に遊ばれてるな」
「まーくん、頑張ってね………」
透と友弥の声が、むなしく響いた………。




