66
「うん、別に嫌な感じはしないよ」
でも一応って、友弥がトランプの箱を持つ。
「っていうか………絶対大丈夫」
箱を小さくて丸っこい手で包むようにして、何か意味深に笑った。
その笑い方がすっごい不思議だったんだけど、次の授業が移動だったから、聞くタイミングを逃しちゃって、うやむやになっちゃった。
何だったんだろ、あの、笑いは。
で、今日の授業が終わって、透と友弥は真鍋先輩待ってるんだろ?なんてニヤニヤしながらさっさと帰っちゃって。
僕は。
僕は。
真鍋先輩に、何て、聞こう。何て言えばいい?
クリスマスの予定を決めよう、だから25日?
トランプが示したのは24、25、26だから、そのうちのどれかなら、いいのかな。でも24日は僕の誕生日だし。
うーーーん。
「新井、何やってんの?」
机に肘をついて頭を抱えてたら、いつの間にか来ていた真鍋先輩に笑われた。
「真鍋先輩っ」
「何で頭抱えてんの?」
「あーーー、えと」
「ん?」
真鍋先輩が透の席に座って、何?って言ってる。
「くっ………クリスマス、な、何か予定あります、か」
「クリスマス?」
「は、はい。えと、あの、その」
「うちさ」
超しどろもどろになって困っていたら、真鍋先輩が話し出してくれて、ちょっとほっとした。
あ、でも、何か予定があるのかな。
「父親と母親がバカみたいに仲良くてさ」
「え?あ、はい」
「クリスマスって毎年俺ほったらかして夫婦で泊まりに行っちゃうから、去年と一昨年は亮平くんと滝沢と3人でうちで泊まりのクリパやったんだよ。つってもただ俺んちで騒いでただけだけど」
「じゃあ、今年も?」
ダメかーーー。
って、ガクッてなってたら。
「今年は滝沢がパスって言ってたから、どうしようかと思ってたけど」
「けど?」
「お前ら3人、泊まりに来るか?」
「えええええっ!?」
ま、真鍋先輩の家に泊まる?泊まるって言った!?
「亮平くんと新井と渡瀬と早佐で、泊まりに来いよ」
「あの、でも、あの、いいんですか?そんな大人数で………」
「父親も母親も居ないし、飯はお手伝いさんが作ってくれるし、部屋は無駄に余ってるし、問題ない」
「お、お手伝いさん??」
何となく………。
ほら、雰囲気とか?あとピアノ弾いちゃったりなんかしてたから、何となく、そうかな、とは思ってたけど。
もしかして………ううん、もしかしなくても。
「先輩んちって、お金持ち?」
「さあ?」
ニヤッて笑うその顔が、すべてを語っているような気がしないでも、ない。けど。
「で、どうする?」
「透と友弥に聞いてみないと分かんないですけど、僕は、その」
「ん?」
「………行きたい、です」
何か恥ずかしくて、俯いて。
でも、真鍋先輩がどんな顔をしているのか、見たくて。
チラッと見たら。
顔を見る前に真鍋先輩が立ち上がって、僕の頭をぽんぽんって、叩いた。
「なら、あの2人がダメでも、来いよ?」
「うぇっ…………!?」
「うぇって何だよ、うぇって。亮平くんは絶対来るし、新井が考えてるようなことはないぞ」
「なっ、なっ、なっ、なっ」
ぼ、僕が考えてるようなことはって、何!?
「新井、焦りすぎ」
「だ、だ、だって、先輩がっ………」
「ほら」
くしゃくしゃって真鍋先輩の手が、僕の髪の毛を乱暴に掻き回して。
手を、差し出す。
「帰るぞ」
「う、うん………」
僕はめちゃくちゃドキドキしながら。
真鍋先輩の手を、取った。




