130
「うん。天使だよ、その人」
新学期が始まった、昼休みの屋上。
僕と透と友弥、こーちゃんと木戸先輩での日向ぼっこ兼ご飯タイム。
ラッキートランプの話になって、不思議なあの出来事を言ったら、友弥が見えたの?って笑って言った。
「友弥は知ってたの?」
「うん、トランプに触った時に見えた。秘密だよって言われたから言わなかったけど」
「ええ!?しゃべったの!?」
「しゃべったって言うか、聞こえた」
「そうだったんだー」
一瞬しか見えなかったあの人は、やっぱり天使だったんだ。
すごく優しそうで、すごくキレイだった。
最後だから、姿を見せてくれたのかな?
「は、早佐こええええ」
「天使だから怖くないでしょ」
「真尋に似てたからその時は怖くなかったけど、思い出すと怖いわ」
こーちゃんはそう言って、無理無理って僕の首にがしっとしがみつく。
「光ちゃん相変わらずびびりだな」
「またしましょうか?怪談話」
「やめろよ!!苦手だって言ってるだろ!?」
「あれはいつだったかなぁ」
「早佐てめぇっ!!」
「真鍋先輩………カッコいいくせにこういうところぼりしょんだよなぁ」
「透!!こーちゃんはぼりしょんじゃないよ!!」
「いや、ぼりしょんだろ」
「ぼりしょん………やっぱトイレ行きたくなるなぁ」
「そうそう、中学3年生の夏だ」
「早佐あああああ!!」
「こーちゃん、苦しいっ」
僕たちのくだらない言い合いの声と、笑い声が澄んだ青い空に、響いた。
あの真っ黒な翼の天使が、どこかで見ててくれるような、気がした。
そして、手元に残ったたった1枚のラッキートランプは、これからずっと、僕とこーちゃんのお守りになる。
でもそれは、また、別のお話………。
おしまい
読んで頂きありがとうございました。