『はじまり』の始まり(4)
「立ったままじゃあ、可哀そうだよなぁ。俺が楽にさせてやるよ!」
「やめろ! カイウに、手を、出すな……!」
カイウに向かって必死に手を伸ばす。でも力が入らないこの手が数メートル先の彼に届くはずもなく、ぼくの行動は軍人に笑われていた。
(ねえ、なんで…なんで答えないの? カイウに、何が起こってるの?)
男が引き金に指をかけると、恐怖のあまりぎゅっと目を瞑った。すると足を撃たれて血が足りないせいか、フッと眠りについてしまいそうな…体が浮いたような錯覚に襲われた。
――――パアンッ――――
耳を裂くような銃声で、意識は無理やり現実に引き戻された。
(うそ…死なないでよ、カイウ! ぼく、毎日退屈になっちゃうよ。冒険ごっこをして遊んだり、喧嘩みたいな言い争いも……。いつも、ぼくのお兄ちゃんみたいに一緒に遊んだくれたじゃないか……!)
固く閉じた眼から涙が出てきた。
「おいおい…どこ狙ってんだよ」「お前が外すなんて、珍しいじゃないか」
銃声から数秒して、軍人たちの笑い声が聞こえた。
恐る恐る眼を開くと、カイウはさっきと何も変わらない態勢で無表情で、その瞳には何も映っていなかった。
「……は? お、俺はちゃんと心臓を狙ったぞ!」
それから、軍人たちの嘲笑うような…馬鹿にするような声は、恐怖の悲鳴に変わっていった。
「そ…それじゃあ、どうして無傷なんだよ……! このガキは!」「お、俺だって、し、知らねえよ!」「外したんじゃないのかよ!」「この…この俺様がたかがガキ一人、外すと思うのかよ!」
銃を持った軍人は、再び銃口をカイウに向けた。
「化け物がああぁぁぁ!!」
――――パアン、パアン、パアン――――
今度は、目を見開いて、この眼で見た。
見えない速さで銃口から顔を出した弾は、何故かカイウに届く前に銃弾は地面に落ちていた。
「は、はあ……!? なっ、なんなんだよ!」
ぼくらを囲んでいる軍人たちは完全に混乱していた。そのかわり、人々を車へと運んでいる軍人は冷静で、作業はかなり進んでいた。
「ソウ、逃げて……! ソウ!」
はっとして顔を上げると、お父さんとお母さんが大きな軍の車から叫んでいた。一人の軍人がお母さんの脇腹を蹴った。
「お母さん…、ぼく、助けに、行…く、から」
懸命に足を立たせようとしても、ただ下半身に余分な錘をつけているような、足全体の感覚を失っていた。
「助け、て…誰か、お母さんたちを、助けてよぉ……っ!」
そのとき。
――ぴいぃぃぃぃぃぃ――
地面の下から響くような、甲高い叫び声のような、金属同士がこすりあうような音が聞こえた。
脱・ワンパターンを目指しています。
感想・アドバイス等お待ちしています。




