研究材料の誕生
3人目の子供が誕生した。
使いの者からその事を聞いた時、いつも冷静な私の心は少し動揺してしまった。
「わかった。すぐに向かう」
1人目も2人目も、今までの子供は二人とも無価値だった。
もっと頭の良く、調教しやすく、おとなしく私の指示に従う子供が欲しかった。
息を切らし、医務室の扉を開けると中は静かだった。
中央のベッドには、妻――王妃が赤子を抱いていた。
「陛下。男の子だそうです。わたくしは女の子がよかったのですが……」
妻がそんなことを呟いているが、顔は嬉しそうに笑っていた。
そうか、男か……。それならすぐに私に懐いてくれるだろう。
「私にもその子を、抱かせてくれないか?」
「ええ。もちろんです。あなたの子供ですもの」
私の手が子供に触れた瞬間、眠っていたはずの子供は大きな声で泣きだした。
「あら。どうしたのでしょう。さきほど女医さんが抱いたときには何ともなかったのですが……」
また子供を妻へ渡すと、ぴたりと泣き声は止んだ。
「まあ、陛下が怖いのかしら……?」
クスクスと妻は笑っているが、私もは大きな声で笑いたくなる衝動を必死に殺していた。
私の研究に対するの執着が、伝わったのかもしれないと。
「この子はきっと、優秀になるさ」
私がそう言うと、妻は驚いたように目を見開いた。
「…どうかしたのか」
「いいえ、あなたが子供の将来を語ったのは初めてなのではないかと思いまして…」
「どういうことだ」
「上の子の時も下の子の時も…国のために、ということしか言いませんでした。でも今は、この子自身のことを言ってくれました」
妻は赤子をそっと抱きしめる。
ふと、胸が熱くなった。
今まで体験したことのない、痛いような痒いような感覚だった。
「……〈シュロ〉だ」
「はい?」
「この子の名前だ。棕櫚の木は手がかからないと言われているからな」




