【神の視点】
景色が歪み、眩暈のときみたいに頭がくらくらした。
「ここは……?」
いつも通りの風景がそこにあった。
塔の最上階から窓の外を見下ろすと、何事もなかったかのように、草が風に揺られていた。
夢だったんだ、すべて。
そう自分に言い聞かせ、窓辺に肘をつく。
頭がズキズキする。自分に合わない、とても大きなものが突然侵入してきたみたいだ。
それにしても、天使だの【神の視点】だの…不思議な力だの。
「もう9歳になるボクに、そんな御伽話は通用しないって」
自分で呟いて、気がつく。そうか、もうすぐボクは9歳なんだ。
毎年祝ってくれていた〈お父さん〉は、何かプレゼントを用意してくれていたのかな……。
こみあげてきた涙を拭きとり、空を飛ぶ鳥を見つめた。
(いいな……。自由に空を飛べて…)
そう思った瞬間、
ボクが住んでいる塔よりも高いところから…いや、
塔が見下ろせるところにいた。
――え……? なにこれ!?
そう呟いたはずなのに、声が出ない。
視界の隅に時折見える白い羽。
……まさか、自分が鳥になった!?
そう思ったとき。
《ああ、ヒナのために餌を……》
殴られたような痛みと共に、そんな声が聞こえた。
《かわいいわが子の為に、餌を……!》
どうやら、鳥の中に入っているらしい。理由はわからないけど……。もしかしたらこれが怪しい人の言ってた【神の視点】って言うやつ……?
――鳥さん、ねえ、鳥さん!
鳥は何も言わず、飛び続けている。
どうして、気がついてくれないんだ?
《お、あんなところに肉が!》
そう言って鳥が急降下したのは、
〈お父さん〉たちが処刑された場所だった。
片づけはもう終わっているけど、小さな肉片が落ちていてもおかしくはないだろう。
――待って、それは、ボクの大切な人の……!
鳥は地面に降りた。
渇いた血の付いた皮膚、切りそろえられた爪。
真っ赤な指がだんだんズームアップされていく。
――い……いやだ! 止まって、お願いだから……っ! やめてくれ――――っ!
心の中でそう思い切り叫んだ。
目を開けると、ボクはいつも通り塔の上で頬杖をついている姿勢だった。
「っ……! あー、あー……」
声が出る。体に異常もない。
『そのうち、すぐにわかるから。君の力の意味が』
使い方はなんとなくわかった。
体験したいものを強く念じて、やめたいときは「やめたい」と思えばいい。
使える力もわかった。
そのもののしていることや、考えていることが解るということ。でも……。
「こんな力、必要あるのかな。なんの意味があるの……?」
翼の真っ白な鳥がくちばしを赤く赤く染めて、地上から天へ大きく羽ばたいた。
この子、もの分かり早すぎですね。
少しの情報でこんなこと考えられるなんて…。




