それからの悲劇(上)
どおおん、どおおん。
ごおおん、ごおおん。
町が瓦礫になっていく。人々は悲鳴を上げ、逃げ惑う。
ブレイカーは人を直接【破壊】するわけではないが、建物の中に人がいたら――――。
「コウヤ、早く逃げよう!」
バンの声で、我に返った。
そうだ。これは現実だ。ニュースなんかじゃない。現実を見よう。
「ミゾレ。おまえも来い!」
「お兄ちゃんたちだけでも、早く逃げてっ!」
必死なようすでミゾレが叫ぶ。
ミゾレは立つことはできるが、病気のせいで走ることはできない。
「……お前を置いて行けるか!」
「そんな、ミゾレのせいで、お兄ちゃんたちがっ……」
ぽろぽろと、ミゾレの瞳からは涙があふれ出ている。
そんなミゾレの手を、バンはしっかりと握った。
「大丈夫。みんなで生きよう」
「……でも、どうやって……?」
音は、だんだん近づいてくる。
「早く逃げるぞ!」
俺はミゾレを抱きかかえると、ドアを蹴って開けた。
十歳とは思えないくらい、ミゾレの体は軽かった。
「ブレイカーは、町をすべて破壊するらしい。つーことは……もう破壊されてしまった区域なら、ブレイカーも来ないかもしれねぇ」
「コウヤは物知りだね」
今はバンの言葉をいちいち拾っている暇はない。裏道を通って、町の南に向かう。
「お兄ちゃん、ごめんね……。ミゾレのせいで……」
「そんなこと言うな! 俺が生きててもお前が死んだら、意味がないんだよ! その逆もだ。みんな、生きてないと…」
「ありがとう。お兄ちゃん。本当に、あり、が……と……」
しっかりと俺の首に巻きついていたミゾレの手は、すこし緩くなっていった。
「……ミゾレ? おい、ミゾレ!」
走るのを止め、ミゾレの顔を覗き込む。真っ青になっていて、生気が感じられなかった。
「聞こえる? ミゾレちゃん!?」
とりあえず隠れるためとミゾレの様子を見るため、近くにあった家の中に入った。
「急に外に出したり、走って衝撃を与えたのが悪かったみたいだ……」
「とりあえず、水を飲ませるか」
「先に逃げた方がいいんじゃないか?」
「南はもう、水も電気も止まってるだろ。それなら、今の方が――――――」
どおおおおおおん。
ブレイカーはすぐそこまで来ていた。
暴走しすぎました…。詩の【錆びた町】と表現やキャラクターが違い過ぎですね。




