一方的な宣戦布告、恋のライバル(=恋の相手)
カオスだなぁ……
一ノ瀬さんからのメールがきたのは、次の日の昼間のことである。
『月野さんのメールアドレス知ってるかしら?』
それを来た瞬間に、まってましたとメールアドレスを送った。
もちろん俺のではない、前日に妹へと頭を下げて、経緯を説明したのだ。
妹は面倒くさそうではあるが、
「メールの文面は転送するので、返信内容は妹にメールで送ること」
といって、了承してくれた。
『一つ聞きたいのだけど』
『はい?』
よし、成功とガッツポーズをとっていた俺に、続けざまにメールがきた。
妹からではない、直接きたようだ。
何やら聞きたいそうだが、何だろうか。
『私って綺麗ですか?』
――女子に送らなくてよかったね、と携帯を握りしめながら思った。
これ、嫌味にしか見えない、少し卑屈な人が聞けば、美少女が「私ってブスだしぃ~」と言うようなものだもの、ガンジーがガチギレして、一周回って満面の笑みでマウントとってタコ殴りにするレベルでお怒りになるぞ。
――どう返したものか……少なくとも、Yesなのは当然だが。
神夜さんがいったことによるものだよなぁ……
思い出して、返信を決めた。
『はい、貴方らしい美しさをもっていると思います』
これぐらいしか言えない、神夜さんの言葉を俺の言葉にした程度だ。
若干キモいだろ、と思いながらも、これ以上は思いつかなくて返信した。
『ありがとう』
単純な文ではあるが嫌がられているわけではなさそうだ。
ふっ、この平成の諸葛亮孔明に不可能の問題などないッ!
実を言うと、俺、昨日やったこと、すべてが計算づくだ!
――などと調子に乗ったせいか、次の日しっぺ返しがくるわけだ――
休日を超えて、月曜日となった。
いつも通り学校へと向かい、自分の教室へと入り、一時間目の授業の用意をしていると、横からこえをかけられた。
「おっす」
振り向くと、勇人だった。
「おう、おはよう」
さぁ、いつも通りの日々が続く――
訳がなかった。どうしてこうなったんでしょうねぇ――俺のせいか。
それは昼休みのことだった、勇人は来る前に購入してきたらしいパンを取り出し、俺の前の席に座って、対面する形で御飯を食べようと思った時だった。
「君が――幸助、だね?」
最近よく聞く(聞きたくなくても)神宮司くんの声がして、振り向くと、壁に寄りかかり、前髪を気にしている神宮司くんが、フッとキザッたらしい笑みを浮かべた。
「お、おう」
右ほほにビンタ食らわせたいその笑みに、若干ひきながらそう返すと、神宮司くんはこちらへと近付き、すっと机に手を置いて、ずいっとこちらへと顔を近づけてきた。
――教室が黄色い声に包まれ……ちょっとまってくれ、なんでここで
「神宮司くん×山田くんね! ……交わることのないと思われた、新たなるクロスが」
聞かなかったことにしよう。
「おいおい、昼飯食べたいんだけど」
お、勇人、言ってやれ!
「放課後じゃダメか?」
いけいけ、我が親友よ!
「君には関係がない」
「はぁ?親友が困ってるのに関係ないわけがないんだよ!」
よし、押し通すんだ!
「キャー、三角関係ね!」
黙れ
「神夜さんのメールアドレスは何よりも重要なんだ!」
――やばい。
そう感じて勇人を見る、真っすぐと神宮司くんを見ている自然を、首を動かしゆっくりと俺の方向へと向けた。
「なんだと……女神へと祈りを届ける方法を、我が友が……」
なんだ、なんでお前そんな口調何だ。
仕方がない、妹に再度謝っておくとしよう、勇人と神宮司君からのメールを別のフォルダにしてもらえれば、ごっちゃになることはないだろうし――
(妹のメアド、勇人知ってね?)
思い出してみれば、一度交換した記憶があった。
――ヤバイ、これは逃げなければいけない状況だ。
「トイレに」
「君が漏らすよりも重要なんだ……!」
思い切り殴りたいんだけどこいつ。
「いいか、幸助――親友の青春を応援しようぜ!」
さわやかな笑顔で言ってんじゃない、顔面耕すぞ。
逃げなければ、しかしこのまま走っても摑まるだろう。
ならば!
少し考えて、
「ふぅわかった」
と言って、鞄へと腕を差し込み、探っていった。
「そこに携帯が」
「触るな、勇人も触った瞬間に殴り飛ばすからな、俺の聖域だからな!」
迫真の演技で威圧する、さすがにやめたようだ。
それを見て、鞄を探すが、見つからないフリをする、携帯は後ろポケットにあるので、鞄にあるわけもない。
探すために椅子から腰を上げて、ジッパーを思い切り開いて、深くまで探っていく。
「あ、ポケットにあるわ」
そう言って後ろポケットへと手を当てて立ち上がり。
「よし、あっ――ッタァァァ!」
全力疾走。
「フハハハバァーッカ!騙されてやんの!」
超小物な捨て台詞を吐いて教室を飛び出す平成の諸葛亮孔明。
「ま、待て!」
「幸助ぇ!」
背後から二人の声、追いかける足音。
体育館へと続く渡り廊下へと入り、直線を全力疾走する
しかし、俺と比べれば、勇人のほうが足が速い、それは事実だ、このまま逃げ回っても摑まるだけだろう――ならば!
階段を駆け下りて、食堂を通り抜け、体育館へと入った。
そのまま舞台へと跳びつき、這いあがり、裏へと直行する。
体育館に二人の声が響き渡る、もう入ってきやがったか!
「変身!」
小さな声でそう言い放った。
体育館の二階部分へと続く階段をかけあがる。
「上か!」
勇人の声が聞こえた瞬間に二階にある窓を開け放ち、飛び出した。
屋根に降った雨の排水をするパイプを足場に横に跳び、くるくると三回転をして、着地、そのまま地面を強く蹴り、校庭へと飛び出した。
校庭では、複数人の男がサッカーをしていた。
そして何人かが、真面目にも陸上の練習をしている、その横を人外のスピードで駆け抜けていく、そのまま玄関部分へと回っていく、理由は弁当だ。
お腹減ったし、昼は教室で御飯を食べられないだろう、そして二人は未だ俺を探しているのだ、なんだあいつら……怖ッ。
玄関へと入り、階段を駆け抜けていく、教室へと到着する前に手櫛で髪を軽く整えて、教室へと入った。
教室中の視線がこちらへと向いた、それを気にせずに俺の鞄から弁当を取り出す、教室のクラスメイトたちに笑顔を振り向きながら、さもそれが当然かのように振る舞いつつ、外へ歩いて出た。
廊下――右よし、左よし――いくぞ。
その後人気のない場所、校庭の端っこにある林へと弁当を持っていき、高校になって初めてのぼっちの弁当を開始した。
「うわぁ……すげぇ勇人からのメールだ」
立て続けに震える携帯の電源をぶった切り、俺は神夜さんの状態であることも忘れて箸を動かすのだった。
――あれ、なんか嫌な予感がする。
「くっ、見つからなかった」
幸助を探し続けたのだが、見つからなかった。
さすがに我を忘れすぎたと思い、反省しつつも教室へと戻った。
幸助の姿はなかった、しかしおかしい、鞄が大きく開かれている、覗き込むと弁当がなかった。
(戻ってたのか?)
思案していると、ポンッと誰かが肩を叩いてきた、振り向くと、同じクラスの――
「坂井くん?」
「おう、西崎、ちょっと紹介してほしいんだけどさぁ、山田の鞄から弁当を持っていた女子、心当たりない? すっげぇ美人だったんだけど」
「――黒髪の?」
「あぁ、黒髪の清楚な美女、見た瞬間に心をガッチリ掴まれたね、これは運命だーって、マジやばいんですけど!」
「幸助の鞄――」
聖域だなんだのっていうのは、たぶん逃げるスキを作るための口実だろう。
むしろ今更俺に性癖隠されてもな、部屋にあるアレな雑誌はすべて知っている、あいつはメイド服が好きだということも、黒髪女性が好きだということも分かっている。
たぶん、あいつは心の奥底であの人を思い浮かべているのだろう、ということもわかっている。
――あれ?
「神夜さんってドンピシャじゃないか?」
そう口に出すと、幸助の好きなものと、神夜さんが一致していくのを感じた。
「これは――」
神夜さんのメアドを知っているといい、普通鞄の中身を好きに触らせないということも考えてみると――
「まさか」
アイツは――
(神夜さんと親しいのか!?)
そして恐らく、幸助は恋をしている、親友の恋、応援すべきだろうことはわかっている。
しかし、今回ばかりは引けない!
握りこぶしを作って、力を込める。
今まさに、俺は後れを取っているようだ――しかし、負けないぞ。
親友だからこそ、手など抜けるものかッ!
携帯を取り出し、メールを連射する。
『お前のことはわかった、俺に教えたくない理由もわかった、そうだな、不公平だ、だから俺は本人から直接きいてやる!』
『俺とお前は親友だ!だからこそ、俺はお前に負けないように全力でやる!』
『負けないからな!』
幸助ェ!今日からお前はライバルだぁ!




