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魔王の異世界戦記~その最強の実力は願った平和を求めるために~  作者: D-delta


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▽第27話 アルセイダ家

 ブレイズに勝利後、ダブレメラズ魔法教団の施設にて。


「我の想いに恵みを与えよ、ヒール」

「出血が酷くなっている! 誰かもう一人来てくれ!」


 ユウとポクニ公爵が戻ってきて、まず目にするのは負傷者の治療で忙しい光景。

 施設内ではユウによって回収された負傷者の治療が現在進行形で行われていた。


「あ、ユウ君! おかえり!」


 ユウとポクニ公爵の帰還に、ルーシーは一番に気付いて喜ぶ。


「ユウ殿! ポクニ公爵もおかえりか!」

「え、帰ってきましたの?」


 トレイルとマカルタも帰還に気付き、その場の全員も二人の帰還に続々と気付いていく。


「イサム様に、ポクニ様……勝ったのですね?」


 リシタ伯爵も気付くが、負けて帰ってきたかもしれないという少しの不安を抱く。


「ワシらは勝ったぞ! 勇者イサムのおかげで、ワシらは強敵に勝つことが出来た!」

「おぉ、勝ったのですか!」

「や、やったぁ!」


 それに対してポクニ公爵は笑みを浮かべて、勝利を告げた。

 この世界の人間にしてみれば化け物レベルのブレイズに勝ったという事実。

 瞬く間に勝利の歓喜が場を包み、リシタ伯爵の不安も吹き飛ばした。


「ユウ君」


 そんな中、ルーシーがひっそりとユウの横に来る。


「どうした?」

「ブレイズはどうだった?」

「……変わらなかった、なに一つ。学校時代のままだった」

「それなのに戦えたの?」

「俺にも、ブレイズにも、捨てられないものがあるからな」

「そっか……まぁなにはともあれ、お疲れ様!」


 ルーシーは優しい笑みを浮かべた。

 彼女が気を遣ってくれているのは、鈍感なユウでも分かる。


「ありがとう」


 ユウは固い表情を崩して、ルーシーの気遣いに感謝を示した。


「あの、ユウ様! ルーシー様!」


 リシタ伯爵が呼び掛けてくる。

 ユウとルーシーが視線を移せば、愛らしい笑みを浮かべて寄ってくるリシタ伯爵の姿が映る。


「おっ、なになに?」

「これから僕はお母様に状況を報告しに行きます。そのついでにお二人も僕の家──アルセイダ家に寄っていきませんか?」


 リシタ伯爵は言う。

 言わばアルセイダ家と顔を合わせる提案だ。


「ユウ殿」


 そこに割り込んでくるトレイル。マカルタと共にやって来る。


「戦力調達をアルセイダ家にも掛け合ってみるのはどうだ?」

「戦力は多いに越したことはありません。アタクシからも行ってみることを提案しますわ」


 そのままトレイルとマカルタは告げる。

 実際、王都騎士団から約千人、王家直属兵団から約百人の戦力供与ではビス家の大規模兵団に大きく頼ることになる。

 その負担は大きい。同時にマレイア辺境伯に大きく借りを作ることでもあり、後でどんな見返りを要求されるか分からない。


「分かった、行こう」


 ユウはアルセイダ家に行くことを告げる。

 アルセイダ家からも戦力供与を引き出せば、戦力供与の負担軽減と見返りの大きさを分配出来る。

 まさに一石二鳥。どんな思惑を抱えているか分からないマレイア辺境伯の不穏な要求を少なく出来るだろう。


「それならアタシも行くぅ!」


 そしてユウが行くと決めれば、ルーシーも行くと決める。


「分かりました! えーと、トレイル様とマカルタ様は?」


 リシタ伯爵の誘いがトレイルとマカルタにも向けられる。

 すると、トレイルとマカルタの表情が途端に真顔に変わった。


「あれれ? 可愛くなれますよ?」


 リシタ伯爵は続けて言う。その表情はとてもニチャアとしている。

 トレイルとマカルタは二人揃ってそっぽ向き、聞かなかったことにした。


「また悪癖を出しているのか?」


 そこに回復魔法で体力の回復を終えたポクニ公爵がやってくる。


「あ、ポクニ様! ポクニ様もどうですか!」

「おっと、次はワシか」


 悪癖全開の表情のリシタ伯爵に目を付けられた。

 これにはポクニ公爵も真顔になる。


「ん?」

「なんだろうね、この空気」


 ユウとルーシーには分からない、アルセイダ家の悪癖。

 それを知っている者たちの間で変な空気が出来上がる。


「まぁいい。トレイル、マカルタも同行してくれ。ポクニ公爵も同行をお願いします」

「うえぇ!?」

「はいぃ!?」

「いやぁ、ワシの同行までは必要ないと思うよ?」


 三人共、同行には否定的。


「戦力供与の調整など、各貴族の代表として直接話せば手間が少ないはずでは?」


 ユウの言うことに〝それはそうだけど〟と言いたげで、三人は微妙な表情を晒す。

 分かってはいても行くのは気が重い様子であった。


「まぁ戦争やってんだからさ。今は行こうよ、みんな」

「ルーシー殿まで」

「はぁ……お姉様、ここは折れておきましょう。戦争やっているのは事実ですから」

「むぅぅ、ワシも行くとするか。アルセイダ家には顔を出さんとな」


 ルーシーも行くことを告げる。

 ユウに加えてルーシーも言うのなら、と三人は観念して行くことを決断した。


「やったぁ! じゃあ皆さん、案内しますね!」


 全員行くことが決まり、リシタ伯爵は上機嫌。

 早速案内が始まる。

 行き先はリシタ伯爵の家──アルセイダ城塞。そこでは悪癖が待つ。


  ※


 少しの移動を要して、ユウたちはアルセイダ城塞に到着。

 視界に入るのは城塞という名に恥じない大きさの建物。第一城壁都市ルキセディアの中心に建てられており、アルセイダ家の権威が示されている。


「おかえりなさいませ、リシタ様! お怪我はございませんか?」

「僕は大丈夫! この通り!」


 アルセイダ城塞の城門で警備を行う衛兵──ミニスカートのメイド姿な衛兵たちが心配するのに対して、リシタ伯爵は笑顔で返す。


「ポクニ公爵様、よくお戻りになりました。リシタ様の護衛、ありがとうございます」

「いや、ワシはそこまで活躍していない。今回の件はこっちの勇者イサムが一番活躍したと言えよう。こうやって無事に戻ってこれたのは勇者イサムのおかげだ」


 ポクニ公爵に名指しされるユウ。

 メイド姿の衛兵がユウの方へ向く。


「噂の新しい勇者様、ですか。この度はありがとうございます!」

「俺はやることをやっただけだ。礼には及ばない」


 衛兵のお礼に対して、ユウはいつもの調子で答える。

 そこからメイド姿の衛兵は「リシタ様?」という一言で客人どうか確認。

 リシタ伯爵はすぐに確認の意図に気が付く。


「あ、この方々は全員お客様だから通してあげて!」

「承知いたしました」

「皆様、アルセイダ城塞にようこそ。どうぞお入りください」


 歓迎と共に衛兵の一人が指を高らかに鳴らした。すると大きい音を立てながら城門が開いていく。

 開いた城門の先では衛兵たちが客人を迎えるようにずらりと並んでいる。しかも衛兵たちの服装はメイド姿だけではない。ビキニアーマー、執事、ドレス、男装、女装、様々な格好をしていた。


「さすがのアルセイダ家だな。内側もすごい有り様だ」

「うわぁ、噂通りだ」

「アタクシたちが標的にならないか不安になってきましたわ……」


 ポクニ公爵は呆れ、トレイルとマカルタは不安全開。

 アルセイダ家の悪癖が内側でも猛威を振るっていた。


「ようこそいらっしゃいました。どうぞ、ごゆっくり」

「皆さん、こっちです」


 二度目の衛兵たちからの歓迎。

 そのままリシタ伯爵の案内が続き、城塞内部を歩く。

 城塞内はかなり広い。百人以上は確実に常駐しているほどに人が多く、そしてどの人間も色々な衣装でアルセイダ家の悪癖に染められていた。


「あ、お庭もあるんだ」

「はい! 王城に負けず劣らず、立派な庭園も用意しておりますよ!」


 少し歩いて、全員の視界に入る広い庭園。

 草木、花、そして90cmの高さはある生垣。噴水などは一切ない。


「なるほど。ここは実戦向きか」

「分かるか、勇者イサム?」

「はい」

「我々同様にアルセイダ家もこういうところは真剣なのだよ。悪癖は困るがね」


 ユウは気付き、ポクニ公爵は告げる。

 なにに気付いたのかは進むほどよく分かる。

 城門側は生垣が少なく、そこから進めば進むほど生垣が多い構造になっている。

 つまり防衛側はより多くの生垣で身を隠すことが出来る。この庭園は防衛に活かすことを強く意識された防衛陣地だった。


「そういえばどこまで行くの?」

「あそこです、お城の上階のあそこ」


 ルーシーの質問にリシタ伯爵は指差ししながら答える。

 指差された場所は城塞の中心、ひと際大きい建物の上階。


「まだ歩くので、ちゃんと付いてきてくださいね」

「はーい!」


 案内は続く。

 それから数分後。

 城塞内を歩き続けて、いよいよ案内は終わる。


「ここです」


 案内の足が止まる。足が止まった、その場所はアルセイダ家当主の執務室。

 リシタ伯爵は執務室の扉をコンコンと軽く叩く。


「お母様! お客様をお連れしました!」

「どうぞー!」


 扉越しに応じるのは元気がありつつも落ち着いた成人女性の声。

 リシタ伯爵は執務室の扉を開く。

 扉を開いた先にあるのは細部に至るまでインテリアが豪華な執務室、そして一目で貴婦人の印象を与える女性。


「よくいらっしゃいました、皆様方! さぁさ、入って!」


 その貴婦人な女性こそアルセイダ家の当主──アベイラ・アルセイダ公爵。

 艶のある黒い長髪、美白で若々しくも初老を迎えた容姿端麗な姿、派手さを抑えたドレスを着こなしている。


「久しぶりだ、アベイラ。二年前に王城で会って以来になるか」

「そうね。久しぶりに会えて嬉しいわ、ポクニ様」


 執務室に入っていけば、ポクニ公爵とアベイラ公爵が仲良さげに話していく。


「さーて、早速会ったのだし!」

「あ……!」


 しかし仲良さげな会話はすぐ終わる。

 ポクニ公爵は悪癖を察し、そこから連鎖するようにトレイルとマカルタも悪癖の気配に気付き始める。


「待て! さ、先に戦争について話をしたい!」

「戦争ね。真面目な話の前にはおめかしが必要だと思わない?」

「えぇ!?」

「フフン、さっと終わらせるから」


 着せ替えという悪癖の時間。

 ポクニ公爵はもちろんのこと、トレイルとマカルタも途端に身構えた。


「なにを着させるつもりだ?」

「私のセンスを疑わないで」

「し、しかし!」

「はいはい。マジックステップ! ドレスアップ、アドラブルウィッチ!」

「にゃあぁぁぁーーーっ!」


 現れる魔法陣。使われたのはルーシーも使う変身魔法だった。

 あっという間にポクニ公爵の衣服が光に包まれ、弾けたと思えば別の衣服に変わっていた。

 その姿はまさに魔法少女。フリルが多用されて可愛さ特化の格好になっていた。


「アベイラぁ!」

「可愛いわぁ! とっても素敵♡」

「ぬぅぅぅぅ……」


 恥ずかしさ全開の可愛い姿なポクニ公爵に、アベイラ公爵は満足。

 そうして次はトレイルとマカルタに悪癖の目が向いた。


「えっ?」

「まさかアタクシたちも?」

「もっちのろんよぉー!」


 またも使われる変身魔法。

 今度はトレイルとマカルタの衣服が変わる。


「こ、これ、胸も股間も……!」

「下になにもありませんわーっ!」


 トレイルとマカルタの格好は肌の露出が多く、スリットがとても深いダブルスリットのドレス。しかも下着がない。


「うふふ♡せっかくの魅惑的な体なのだから、大胆な方が良いわね」

「だからと言って、これは大胆過ぎます!」

「うぅ、すぐ横にユウ様がいらっしゃるんですわよ!?」


 恥ずかしさ全開のトレイルとマカルタ。

 そこにルーシーが「ちょっと失礼」とちょっかいを出す。


「うん、デカいおっぱい」

「おぉぉ!? 見るんじゃない、ルーシー殿!」

「へへん」


 ドレスをずらしてトレイルの胸を拝見。下着がないのだから、もちろん丸見え。綺麗な乳首がそこにあった。


「こっちはどうかなぁ?」

「うへぇ!? ルーシー様のすけべぇ!」

「えへっ♡」


 次はマカルタの方へ行って、ちょっかい。ドレスをずらしてマカルタの綺麗な股を拝見する。


「じゃあ勇者ルーシーもお着替えしましょうね」

「えっっ!」


 そんなセクハラをするルーシーにも、アベイラ公爵の目が向く。

 ルーシーを対象に変身魔法が唱えられる。


「おっ、おー?」


 どんな格好に変えられるか、ルーシーは半ば期待。

 光が衣服を包み、弾けると見た目が変わっていく。


「え……なんか普通に可愛いやつじゃないか?」

「でも胸がよく見えますわね、お姉様」


 トレイルとマカルタほどよりもセクシーに極振りした見た目ではない。

 その見た目は肩が出ていて胸元が見えること、ミニスカートなど露出の主張が多少強い剣士の格好。セクシーと可愛さの真ん中を取った衣服だった。


「やっぱり勇者はそういうのがお似合いよね」

「結構いいかも!」


 アベイラ公爵の変身魔法に、ルーシーは恥ずかしさを見せない。

 それどころか気に入った。

 そのままユウに「これどうかな?」と話を振る。


「可愛い。少なくともダサいという感想は出てこない」

「マジぃ? やったぜ」


 高鳴る胸を揺らしてルーシーは喜ぶ。

 その横でトレイルもユウの評価が気になっていた。


「そのー……ユウ殿、我はどうかな?」

「男の視点から魅力的だとは感じる。俺とて、そういう感性はあるからな」

「お、おぉ……!」


 ユウの評価を聞いて、静かな喜ぶがトレイルの中に表れる。


「それで、ユウ様のお着替えはまだですわね」

「うむぅ……ワシらだけとか、そういう訳ではあるまい?」


 そんなところでマカルタとポクニ公爵の目がユウに向く。そしてアベイラ公爵の目もユウに向いた。

 順番的に次はユウの着せ替えの番だ。


「うーん、なしで」

「なに? ワシらは着せ替え人形にしておいてか?」

「だって素材のままが一番いいんですもの。変えようがないというべきね」


 しかしアベイラ公爵の感性は軍服姿のままの方がいいという結論を下した。

 その結論に一同は〝そうかも〟と口に出さずして納得。ユウに変身魔法は使われないで話が次の段階に入る。


「さて、おめかしが済んだことだし。今回の戦争について話しましょうか」


 お楽しみ全開の悪癖は終わる。それまでニコニコしていたアベイラ公爵の表情が真剣になった。

 話は本題に入る。

 まずリシタ伯爵とユウの口から戦争の状況、これまでの戦闘が話される。


「なるほど。敵は子宮外肉体生成装置とやらで無尽蔵に戦力を用意出来るから、すぐにでも攻勢が必要なのね」

「はい。急ぎで戦力供与をしてくれると助かります」


 アベイラ公爵はこれまでの状況を把握、思ったよりも深刻な事態であることを理解した。


「王都騎士団と王家直属兵団からの供与は合わせて千人ちょっと。攻勢に必要なのは最低限一万人と……ビス家の兵団からばかり出させて、アルセイダ家は供与なしなんて家の名が傷付いてしまうわね」

「では、どれくらいの規模を?」

「城壁都市群の騎士団、アルセイダ家専属の傭兵から合わせて五千人くらい出してあげるわ」


 攻勢に最低限必要な人数の内の半分。心強い戦力供与が決まった。

 同時にユウの中で懸念が強まる。


「五千人規模とは……第一防衛線の負担は大丈夫なのですか?」

「大丈夫よ。長大な守りを構える第一防衛線は大規模な第二防衛線に負けず劣らず」

「なるほど、それなら大丈夫ですかね」


 ユウは懸念を消す。第二防衛線に劣らない戦力となれば、五千人ほど引き抜いても防衛力が致命的に衰えることはないだろう。


「決まりね。早速戦力を用意するけど、供与には数時間頂いてもよろしくて?」

「構いません。まだ王都に用事があるので」

「そういうことなら丁度良いわね」


 アベイラ公爵の視線がリシタ伯爵に向く。


「リシタ」

「はい、お母様!」

「あなたも勇者たちに同行なさい。アルセイダ家の者がいれば騎士たち、傭兵たちの士気も高まるでしょう」

「は、はい! アルセイダ家の人間として僕も行って参ります!」


 当主たるアベイラ公爵から正式に同行を言い渡され、リシタ伯爵はアルセイダ家の人間として使命感を強める。

 ルセーレ王国の貴族──ビス家に続いてアルセイダ家の人間も同行者に加わる。つまりリーダー格となる人物が増えた。士気は自然と高くなるだろう。


「さぁ勇者たち、行ってらっしゃい。新たな敵を退けるために」

「はい。平和を我が手にしてみせます」


 アベイラ公爵の言葉を背に、ユウたちはリシタ伯爵を連れて執務室を出る。

 次に行くべき場所は王城。

 ユウの力の秘匿を破ると同時に、供与される戦力を受け取りに行く。

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