▽第26話 打ち倒すための力
「イサム……勝ったのか?」
「はい、勝ちましたよ」
ブレイズに敗北し、勇者として情けない姿を晒したポクニ公爵。
ユウが質問に答えると、ポクニ公爵は「そうか」と視線を落とした。
数秒の沈黙。
ポクニ公爵は自らの裸体と城壁の床を見つめ、そこから思い立ったように顔を上げる。
「勇者イサム」
「はい」
「ワシは……貴様と同じ力が欲しい。見返りはなんでもしてやる、この若い体が目当てなら我が身を好きにしてもいい」
上目遣いで、羨望と希望がユウに向けられる。
「残念ですが、俺の力はルゼン王との取り決めで秘匿されています」
「だとしてもだ! ワシは力が欲しい!」
ブレイズに勝った圧倒的な力。
拒まれても、ポクニ公爵は欲しがる。
「しかし──」
「力を元から持っている貴様とか、話し合えば平和を得られるなんて考えるルゼン王は秘匿でいいかもしれない! だけど現実は、ワシらは敵に対してあまりに無力……必要なんだ、力が! 平和という名の支配じゃない、自分たちの自由と平和を守るための力が!」
一人の勇者として、教団の当主として、ルセーレ王国を守る一人として、ポクニ公爵はブレイズに勝てた圧倒的な力を必死に欲しがる。
「ブレイズとさっき直接話して確認し合った貴様になら分かるはずだ!」
自らが裸体であることも局部を隠すことも忘れ、ポクニ公爵は必死な想いでユウの足を掴む。
「貴様は平和が欲しいのだろう!?」
「だから敵に抗うための力をくれ、と?」
「そうだ!」
ユウは考える。マナと思考型魔法の秘匿を破るべきか、それとも秘匿を守るべきか。
秘匿を守っても、この国、この大陸を守れないなら意味がない。しかし秘匿を破った場合はマナと思考型魔法が新たな武力として普及、戦勝と敗戦のどちらにしても戦後以降の戦いは確実に以前よりも激化したものに変わる。
「俺の力は平和よりも、争いと人間の兵器化を加速させるものです。それでも良いというのですね?」
だからユウは問う。問いに対して、ポクニ公爵がどう思うかを確かめるために。
「それでもいい! まずは目の前の敵に対応すべきだ。この国が、この大陸が、貴様という存在が敵の支配に落ちたら、その力の影響を議論するどころではない」
そしてポクニ公爵は答えた。
要約すると〝敵に支配されてしまうなら力の秘匿は意味がない〟だった。
「……分かりました。ルゼン王に掛け合ってみます」
「本当か?」
「はい。俺一人の力では戦争に勝てませんので」
「ありがとう! ルゼン王に掛け合う際は、ワシも同行しよう!」
ユウはポクニ公爵の言い分に理解を示して、秘匿を破る方向に進めることにした。
「では戻りましょう、ポクニ公爵。転移します」
「頼む」
ポクニ公爵は衣服を着直して裸体を隠す。
そこから手と手を繋ぎ、ユウは思考型の転移魔法を使用。
二人はルーシーたちが待つ場所──ダブレメラズ魔法教団の施設へと転移していく。




