▽第24話 絶望
この先、敗北描写あり(失禁付き)
第一城壁都市ルキセディア。第一防衛線である長大な城壁の上。
そこで戦いは突然に訪れる。
「竜だ!」
「来るぞ! 傭兵共、出番だ!」
「給料は弾んでもらうぞ!」
盾を上空へ構える騎士。矢を射る傭兵。
城壁の上で待機していた防衛隊は上空からの敵──降り来るスウォーム・ワイバーンの迎撃を始めていた。
「クソッ、止まらない!」
「来るぞぉぉぉぉぉー!」
しかし迎撃で放たれた矢が刺さろうとも、スウォーム・ワイバーンはよろけすらせずに降下を継続。その口から吐かれる火炎放射が迎撃する者たちに襲い掛かる。
「うおぁぁぁぁぁぁ!」
「があぁぁぁぁぁ!」
城壁の上が焼かれる。盾や鎧で防ごうとしても火炎を浴びた瞬間から炎が液体のように纏わり付き、逃れられない炎の中に囚われる。
騎士も傭兵も、身分も育ちも関係なく、火炎を浴びた者は等しく死の炎に包まれる。
「たすけてくれぇ! たすけ──」
炎に全身を焼かれながら、よろよろと助けを求める。それをぐしゃりと踏みつけて、城壁の上にスウォーム・ワイバーンが着地。足裏にべっとりと人間の血肉がこびり付く。
「歯が立たない! 階段だ、下れ!」
「た、退避だ――」
人外の目と人間の目が合う。
スウォーム・ワイバーンは退避を許さない。逃げ出す者たちの背中に向けて火炎放射を放ち、立ち昇る炎の中から悲鳴が響く。
「あの火力に硬さ……立ち向かったところで、俺たちの武器じゃ生存率は一割もないな」
「魔法はどうだ?」
「矢が効かねぇんだから相当な魔法じゃないと倒せないぞ」
「ってなると、頼りは教団の魔法使いか」
「ポクニ公爵が来てくれたら嬉しいんだが……」
スウォーム・ワイバーンの背後、階段で身を潜めている防衛隊の面々。敵を倒せる見込みは魔法教団にしか見出せない。
「お呼びかな?」
そして防衛隊の面々の背後から声。
噂をすれば影が差す。
「あ、あんたたちは!」
「ポクニ公爵と魔法教団の魔法使い!」
スウォーム・ワイバーンを倒せる存在──ポクニ公爵と教団の魔法使いたちがやってきた。
「それとリシタの坊ちゃん!」
「なんでここに坊ちゃんが……?」
ついでにリシタ伯爵も同行していたことで、防衛隊の面々は揃って驚く。
「僕はこの戦いを見届けに来たの、アルセイダ家の人間として」
「ということだ。リシタ伯爵は君たち防衛隊に任せるから、敵のことはワシらダブレメラズ魔法教団に任せなさい」
そう言って、ポクニ公爵を先頭にした魔法教団の面々は階段を上がっていく。向かう先は城壁の上。
その後ろでリシタ伯爵と防衛隊の面々は階段から顔を出し、戦いを見守る。
「要塞陣形。ワシが防御魔法を張っている内に、上級攻撃魔法を放て」
「はい、ポクニ様」
陣形を組む。
攻撃役の魔法使いたちを後ろに置き、ポクニ公爵は盾役として前へと出た。
「我の意思に頑強な防壁を以て応えよ、プロテクトウォール」
詠唱と共にポクニ公爵を中心にして現れる魔法陣。
薄っすらと視認出来る魔法防壁を正面に作り出す。
「魔法書154ページ! アーティラリー・デトネーション、詠唱!」
魔法防壁が展開された次は攻撃役の出番。
魔法使いたちの中にいるリーダーが魔法を指定、魔法使いたちは指示通りに指定された魔法書のページを開く。
「我の意思を乗せて飛翔し、我に敵対せし者を爆砕せよ! アーティラリー・デトネーション!」
魔法陣の展開。詠唱する魔法使いたちは片手をスウォーム・ワイバーンに向ける。
その手のひらに自らの魔力が集まり、魔力を変性させ、光輝く極彩色の色合い──攻撃色になったところでそれぞれの手から放たれる。
アーティラリー・デトネーションと名の付いた上級攻撃魔法──変性した魔力の塊が放物線の軌道で次々と魔法防壁を飛び越え、スウォーム・ワイバーンに着弾していく。
「すごい!」
リシタ伯爵が驚くほどの火力の投射。
着弾、爆発、着弾、爆発の連続。
爆撃の中心にスウォーム・ワイバーンは捕まった。空を飛ぶことも火炎を吐くことも出来ず、爆撃でもげた両翼が城壁の下へ落ちる。
「よっしゃ!」
「こりゃあ勝つぞ!」
スウォーム・ワイバーンを圧倒している。
リシタ伯爵と共に見守る防衛隊の面々は勝利を確信した。
「攻撃停止」
ポクニ公爵は指示。
魔法使いたちの爆撃は止まる。
立ち込める煙が晴れていき、スウォーム・ワイバーンの姿が見えてくる。
「仕留めたな」
スウォーム・ワイバーンは足だけが残っている状態。
足より上はアーティラリー・デトネーションによる爆撃で全て吹き飛んでおり、ポクニ公爵の言葉通りに仕留めていた。
「しかし過剰火力だったか。相手が竜だからと過大評価したな」
≪へぇ、この世界にも中々な魔法の使い手がいるじゃねぇか≫
「!?」
機械を通した声。上空から降下してきて、ポクニ公爵たちの前に現れる。
「なんだ、貴様?」
≪俺か? 仕事上、お前たちの敵になる侵略者だ≫
現れたのは金装飾が施された白い機械。人型の上半身と四脚の下半身、機械的な翼が組み合わさった異形。一つ目が血のように赤く輝く。
それはロボットソルジャー(RS)とも称される機械兵士。
神人類宇宙統一連盟軍の兵士の一種。人間の意識を入れる兵器。
「じゃあ貴様か、ワシらの国を侵略する親玉は!」
≪正解。我が軍に敵対する勇気あるカワイ子ちゃん、お前の名は?≫
「ワシはダブレメラズ魔法教団当主、ポクニ・ドボルニンク・ダブレメラズ。今一度勇者として侵略者である貴様を討つ者だ」
ポクニ公爵たちにとっては未知の敵。それでも物怖じせず名乗りを上げる。
≪勇者か、それにしては可愛い見た目をしている。俺のガールフレンドにしたいな≫
「ワシを好くなら貴様も名乗ったらどうだ? 礼儀を知らない訳ではなかろう」
≪よく口が回るもんだ≫
「で、自己紹介は?」
≪ブレイズ≫
金装飾が施された白い機械兵士は名乗る。
≪ブレイズ・オヌール。第889ブクリエ銀河方面艦隊所属、少佐。イサム・ユウと同じ世界からやってきた≫
そして明確に正体を明かした。
「勇者イサム・ユウと同じ世界の……だが、彼が手を下すまでもない。貴様の名はワシら教団の魔法で消してくれる!」
名乗った後に待つのは戦い。
ポクニ公爵は魔法防壁を張ったまま、片手を上げて指示。魔法使いたちは攻撃再開の意思を汲み取る。
「アーティラリー・デトネーション、詠唱!」
「我の意思を乗せて飛翔し──」
リーダーの指示で詠唱を再開。
≪ユウが勇者か。見事に逆転したな≫
ポクニ公爵の魔法防壁と魔法使いたちの火力。
それを前にして、ブレイズには余裕があった。
「我に敵対せし者を爆砕せよ! アーティラ──」
≪キャンセル≫
ブレイズの放った一言。同時に胸部装甲が開き、ビー玉サイズの内蔵装置を露出。
その途端にポクニ公爵の魔法防壁は一瞬で崩され、詠唱途中のアーティラリー・デトネーションは解除された。
「え? ま、魔法が……」
「魔法が解除された!?」
「確かに詠唱していたはずなのに!」
「ポ、ポクニ様!」
この世界では今までになかった事象。
魔法使いたちはうろたえざるを得ない。
ポクニ公爵でさえ、目の前の事象に思考が一時停止した。
「ポクニ様! 指示を!」
「指示……」
指示を求められて一時停止した思考が動く。
しかし思考が動けば〝魔法の無効化〟が浮上してくる。
魔法使いにはあまりに絶望的。
魔法が使えないと仮定するなら、どう考えても己の身を投げ出す特攻しかなくなる。
「ポクニ様!」
「もう一度、魔法を……」
「はい!」
仮定は仮定でしかない。
魔法の無効化という仮定を頭の端っこに一度置き、ポクニ公爵は指示を出す。
「我の意思に頑強な防壁を以て応えよ! プロテクト──」
「我の意思を乗せて飛翔し、我に敵対せし者を──」
≪キャンセル≫
すぐに仮定は確信に変わった。
「やはり、ワシらの魔法は無効化されている」
「そんな……魔法が無理なら我々はどうすれば?」
ブレイズは魔法を無効化出来るものを持っている。
絶望の仮定が現実となってしまった。
≪さぁどうする? 降伏か、抗戦か、それともガールフレンドになるか?≫
状況は絶望的。
「防衛隊! ワシの後に続け!」
それでもポクニ公爵は抗戦の選択をした。
ガールフレンドは論外。降伏するのは勇者の名折れだった。
「ポクニ様!」
「特攻だ! 全員突っ込め!」
使えないとなれば魔法を捨てる。
剣や弓で武装する防衛隊に後を託して、ポクニ公爵は走り出す。
ポクニ公爵に続いて魔法使いたちも特攻に走った。
≪魔法を捨てて、やけくそに走る。まぁそうするしかないよな≫
ポクニ公爵たちの特攻。後に続く防衛隊のための肉盾となり、あわよくば接近戦でブレイズを倒す。
その思惑はブレイズも分かっていた。
≪だけど通らない。悲しいくらいに≫
ブレイズの背部装備──スラスターと武装を兼ねた機械の翼が広がる。
そして翼から放たれるのは二十発の誘導ビーム。空中を舞った直後、魔法使いたちに向かう。
まるで生きているような軌道。ポクニ公爵を除いた魔法使いたちの肉体を貫く。
「うぐぁっ!」
「あ、熱い! ポクニ様!」
「足がぁ! 動けない!」
ポクニ公爵は足を止める。心配して振り返ると、魔法使い全員が血を流しながら地に伏せていた。
しかし誰一人死んでいない。手足を射抜かれ、動けなくされているだけだった。
「クソッ、野郎共行くぞ! 教団連中に続け!」
「ポクニ公爵を奴の女にさせるな!」
一瞬で魔法使いたちによる肉盾が崩れた。だからといって防衛隊は黙って尻込みする訳にはいかず、リシタ伯爵を残して突撃する。
≪結果は変わらない≫
再び誘導ビームが放たれる。
魔法使いたちの時と結果は変わらない。
革製の鎧、金属製の鎧、衣服、どんな防具、どんな防御も貫く。
「み、みんな……」
あっという間だった。リシタ伯爵が声を上げるより前に、防衛隊は手足を射抜かれて無力化された。
今度も誰一人死んでいない。
「貴様、どういうつもりだ?」
≪人殺しはあまり好きじゃない。それだけだ≫
「ワシだけ残している理由は、本当にそれだけか?」
≪お前はガールフレンドの候補だもん。傷付けるかよ≫
「バカにして!」
懐から短剣を取り出し、ポクニ公爵はブレイズに特攻。肉薄して短剣を振るう。
カキンッ!
高い音を立てて、短剣の刃がブレイズの装甲に当たる。
≪あまり暴れんなよ。抵抗しないで大人しく降伏しろ≫
「……っ!」
当たっただけで斬り込むことも刺さることもない。
ただ装甲の表面に傷を入れるのみ。
「我の闘志に炎を上げよ、バスターフレア──」
≪キャンセル≫
ポクニ公爵はまだ絶望しない。
接近した状態で魔法を唱える。もちろんブレイズの胸部装甲に隠されたビー玉サイズの内蔵装置が露出、魔法は解除される。
しかしこれで良かった。
「それか、カラクリは!」
魔法を仕掛けたのは魔法を解除する〝なにか〟を見つけるのが狙い。
そして見つけた。
ポクニ公爵は露出したビー玉サイズの内蔵装置──マジックキャンセルを見定め、そこに短剣を振るう。
≪へっ、よく見つけたな!≫
「うっ!?」
ブレイズは動いて短剣の向かう先を装甲へずらす。
そこからすかさず反撃。右腕部のスタンブロウをポクニ公爵の腹部に押し当てる。
「があぁぁぁぁぁぁっ!」
スタンブロウから放たれる電撃。
ポクニ公爵の若く保たれた女体に電流が流れ、大型動物を一撃で黙らせる威力で叫び声を上げさせる。
「ぁ……ぐぁ……」
≪惜しい。後ちょっとだったな≫
色の薄い尿が股から脚を伝って垂れる。
ポクニ公爵は力尽きた。短剣を手から落とし、失禁しながら膝をつく。
「……我の想いに、応えて──」
≪キャンセル≫
「…………」
無慈悲な赤い一つ目を見上げる。
目の前の敵に対して、あまりにも無力。もう抵抗のしようがない。
ポクニ公爵は負けを認めるように絶望に身を浸した。
≪絶望したな。気持ちは分かるよ、俺も魔法を使っていたから≫
「同情なんて、今更……」
≪そうだな。じゃあ侵略者らしく好きにさせてもらう≫
もう一発スタンブロウがポクニ公爵の腹部に押し込まれる。
「ぐあぁぁぁ……! ぁ……ぇ……!」
再びの電撃と苦痛が襲う。
失禁は続き、尿以外に涙とよだれも無意識に垂れて、その身に敗北の二文字が刻み込まれていく。
「やめて!」
≪んぅ?≫
隠れていたリシタ伯爵が表に出てくる。
「リシタ……伯爵……」
「お願い! もうやめて!」
≪まだ可愛い奴がいる。ガールフレンド第二候補の登場だな≫
ポクニ公爵に敗北を刻み込む手が止まり、ブレイズの一つ目はリシタ伯爵に向く。
「貴様……ワシを、ガールフレンドにするんだろう?」
これ以上犠牲を出す訳にはいかない。
ブレイズの気を引くために、ポクニ公爵は自ら衣服を脱いで素肌と共に局部を晒した。
≪尊い自己犠牲だな≫
「ワシ一人で、我慢しろ」
≪俺は他の兵士みたいにクソッタレじゃない。さっさと隠せ≫
「え?」
どんな屈辱、凌辱も耐えると覚悟したポクニ公爵は拍子抜け。
ブレイズは無力化以上のことはなにもせず、リシタ伯爵に≪お前≫と呼び掛ける。
≪リシタだったか、伯爵なんだろう? その権限でユウを呼んでこい≫
「えっ……?」
≪敵なのに、てか? アイツとは友達なんだ、早く呼んでこいよ≫
「は、はい!」
意図的に見逃がしてもらったリシタ伯爵は走り、その場を去る。
≪お前はポクニだったな。周りの奴らを治療してやれ≫
「ま、魔法は?」
≪ダメだ。素手で出来る範囲に限定する≫
「……分かった」
魔法が使えない絶望の中で、ポクニ公爵は応急処置程度の治療を行う。
その後ろでブレイズは待つ。ユウとの対面を楽しみにしながら。
ようやくの更新…他の予定も段々と増えて来て、中々更新頻度が戻らないのが悲しみ
一応完結までは見えているので、このまま更新していきたいところ…




