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【サメ映画和風アレンジ】デス畳 - DEATH TATAMI -  作者: 七谷こへ
第三章 兵器の起動・最終決戦
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第38話 研究室に鳴り響くノック


 ドンドンドンドンッ


 ドア付近でウトウトとしていた“可憐”は、そのノックの音におどろいて目をさました。

 寝ぼけまなこで、出かけたよだれを押しこみながらスイッチに手をのばす。


 しかし――


「ノックを2回、4回……」


 先ほど“わけ知り顔”たちと決めた合図(あいず)を、口のなかで復唱(ふくしょう)する。

 最初の2回が、なかったようにも思う。

 あるいは、聞きのがしただけか。

 ノックというより、力まかせにドアを叩いているだけという気もする。

 しかしデス畳に追われ、あわてていたとしたら?

 そうでなくても、厚い鉄の扉なので、弱いノックがひびかず叩きなおした可能性も……


(私があけないことで、()われてしまうかも……。いぐさだけ入れる手段もないし、無用に信用を失うのも避けたい。音のひびきかたを、事前にたしかめておくんだった……)


 逡巡(しゅんじゅん)のすえ、少しでも情報がほしいと、“可憐”はドアに耳をつけた。

 かすかにでも声が聞こえないか……そう耳をすましていると、


「デス……が……助けてェ!」


 とぎれとぎれにではあるが、助けをもとめる声が聞こえた。


「この情けない声は、“びびり八段”くん……!」


 と気がつくと、さらに「ウウウワァァァァァ!!」という彼特有の悲鳴がドア越しにひびいた。


「ええいっ!」


 (はら)を決めて、ドアをひらくスイッチを、押す。


(もし彼のすぐうしろにデス畳がいたら、いぐさだけ引きとってまた閉めてしまえば……)


 自分はどうすべきか、さまざまな選択肢が頭をかけめぐる。

 なかには残酷なものもあるが、それを選別できるほどの余裕もない。


(それか服をひっつかんでなかに引き入れてすぐにスイッチを……)


 ドアは下から上へと、ゴウンゴウンと音を立てながらゆっくりとあがっていく。

 片手をスイッチのところに、片手をドアの向こうへ突き出せるようにかまえていると――


『ウウウワァァァァァ!!』


 今度は鮮明に、“びびり八段”の絶叫がとどろいた。


「“びびり八段”くん!」


 “可憐”もまた、負けじとさけんで呼びかける。

 しかし、ドアが半分強ひらいたあとには無人の廊下だけが広がっていた……


「まさか、喰われた……?」


 手を口にあて、悲嘆(ひたん)の声をもらすが、しかし血肉が散っているわけでもない。


「どういうこと……?」


 困惑をもらしていると、またも


『ウウウワァァァァァ!!』


 という声、そしてドンドンドンドンッというノックの音が、変わらずすぐ近くからひびいてくる……

 ゾクリと、名状(めいじょう)しがたいイヤな(ヽヽヽ)予感が、背すじを走り抜ける。


 わけがわからず、とにかくドアを閉じておこうと再度スイッチを押した。

 しかしまだひらききっていないドアは、ひとまず「ひらく」という任務を完遂(かんすい)すべくたゆまぬ歩みをつづける。


 ヴン、という耳なれない音がした。


 すると――廊下の壁の色が変わり、壁に偽装(ぎそう)していたデス畳がそのあざやかな緑をうす(やみ)に浮かびあがらせている……


「イヤァァァ!」

『ウウウワァァァァァ!!』


 ふたつの悲鳴が、同時に重なった。

 “可憐”は、その“びびり八段”の悲鳴だと思いこんでいたものが、人の声をまねて冥界(めいかい)へといざなう化生(けしょう)のごとく、デス畳が彼の声を記録していたものにすぎぬと気がついた。


『デ、デス畳がァ、助けてェ!』

「閉まって、閉まってェッ!!」


 壊れてしまいそうなほど、スイッチをこぶしで何度も強く殴打(おうだ)する。

 ようやくひらいた瞬間、一転して閉じようとする扉の下の空間に、ガツンとデス畳がその身をねじ入れた。


 扉はかまわずに、強いちからでデス畳をねじ切ろうとするごとく、降下をつづけていく。

 メキメキという音が立ちはじめたが、その発生源がデス畳なのか扉なのか、判別(はんべつ)がつかない。

 常識的な判断をするのであれば、厚い鉄でできた扉と、いぐさでできた畳の強度はくらべものにならぬはずであるが……


「……タミ」


 デス畳が発したのは、そのだるそうなひと声だけであった。

 そのままふっと身をよじると、あまりにもたやすく、頑強(がんきょう)な扉にヒビが入り、大きく割れ、やがて無力な破片へと化していく……


「やめ、やめて……だれか……」


 すでに入口のほうへとあとずさっていた“可憐”であったが、しかし入口の鉄扉(てっぴ)は閉まっているはずで、立ちはだかるデス畳に対し、逃げ場はない。

 “わけ知り顔”たちはどうしただろう……いぐさもないので、メカ畳は起動できない。

 しかも、襲来(しゅうらい)したのは、「より強い」と称されていた新デス畳のほうである。


「タミィ?」


 低い声で、新デス畳が研究室を見渡す。

 一瞬、メカ畳へ目をとめたようにも、見えた。


 そのときであった――


「どっせい!!」


 勇ましい叫声(きょうせい)がひびいたかと思うと、デス畳に渾身(こんしん)のドロップキックを喰らわせる者があった。


 ――“お嬢さま”である。

 片手には、いぐさを入れたのであろう袋をぶらさげている。


「“可憐”さん!!」


 さらに、“わけ知り顔”と“びびり八段”が部屋へと突入(とつにゅう)してきた。

 今度は、まぎれもなく本人であるらしく、研究室の状況を把握した“びびり八段”が「これぞ本家」と言わんばかりの絶叫を、ひときわ高く放出する――


「ウウウワァァァァァ!!」


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