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「万里、お誕生日おめでとー!!」
「ありがとー!!!」
「「かんぱーい!」」
今日は私の21才の誕生日。
今年も知佳の家でケーキを食べようと、2人で予定を合わせて集まっていた。
「えーと、私の5才の誕生日からだから、16……17回目か!」
「短いような、長いような……」
「毎年ありがとうございます」
「って、このやり取りも何回目よ」
「あはは」
そんな風に笑い合いながら、ケーキに2人でフォークを入れる。
「んー。美味しいっ! さすが知佳オススメ!」
「久しぶりにチョコもいいかなって思ってね。甘さ控えめで、ビターな感じが大人な味でしょ」
「うんうん! このほろ苦い感じがたまらない! いくらでも食べられそうっ!」
知佳が選んで買ってきてくれたケーキは、長方形の濃厚なチョコレートケーキでとても美味しかった。
「それにしても良かったの? 今日、私と過ごしちゃって。……その、智也先輩? が祝ってくれるんじゃなかったの?」
「あー、うん。それがね……」
「え、何、ケンカ?」
「ちがうちがう。最初は祝ってくれるって言ってくれてたんだけど、毎年知佳とケーキ食べてるって話をしたら、じゃあ、今年まで遠慮するって言われちゃって……」
「へぇー。今年『まで』?」
その言葉に私が黙って頷くと、知佳がニヤリとした。
「じゃあ来年は先輩とだね。社会人になったカレとって事かー。へぇー、いいねー」
「なによぉ。知佳だって来年の誕生日は涼先輩と過ごすんでしょう? 涼先輩だって来年は社会人じゃん」
「そうだけどさ。……はぁー。じゃ、万里の誕生日を一緒に過ごすのは今年で最後か。寂しいわね」
「ニヤニヤしながら寂しいって言われても……」
「寂しいのは本当だよ? でも、それ以上に、万里に良い人が見つかって良かったって思ってる」
知佳から頭をヨシヨシしながらそう言われて。
「えっと、じゃあ……イヴは? 今年は私がいなくても大丈夫そう?」
その知佳の少し心配した声に、胸がすこしキュッとした。
「……うん。先輩がその日は一緒にいたいって言ってくれてて。それ以外でも、しんどい時は一緒にいるから絶対言えって言ってくれて」
「そっか……。うんうん、大事にされてるね。良かった。あ、たぶんそうなるかと思ってウチはお母さんと予定を合わせて行くことにしてあるから、当日は行けないかも」
「うん、分かった。ありがと……」
私がそう答えると、知佳の手が頭をポンポンとしてから離れていった。
「ね。もしかしてさ、プロポーズとかされちゃうんじゃない?」
「へ?」
続いた知佳の言葉に、目が点になる。
「な、なんで?」
「んー……なんとなく?」
「まさか! ないない!」
「え、嫌なの? プロポーズ」
「そんなことない!! ……けど……、ほら、私たちまだ学生だし……」
「むこうは来年から社会人じゃん」
「そうだけど!! ……え、エッチだってまだなんだよ?」
自分で言って、恥ずかしさに顔が赤くなるのがわかる。
「話を聞いてるイメージじゃ、それこそ万里を大事にしてるが故っぽいけどねー。それか……イヴに……」
「ひーーー! 何言ってるの知佳! め、命日! 不謹慎!!」
「そうかなぁ……? 私はいいと思うよ? おじさんは分からないけど、おばさんは応援してると思うし」
「…………」
「ま、とりあえずイヴかどうかは置いといて、そろそろはそろそろなんじゃない? あ。前も言ったけど、ゴムはしっかり付けてもらいなね」
「……ハイ」
「よろしい」
先輩と知り合って1年と少し、付き合い始めて半年が経とうとしていて、正直、先輩とそういう関係になる事を期待している自分がいる。
キスをする度に好きだという気持ちが溢れ、先輩が欲しくなって。
私が先輩のモノだと確かめさせてほしいと思う。
先輩が私のモノだと確かめさせてほしいと思う。
もしかしたら、初めての恋にただ舞い上がっているだけかもしれない。
それでも、今の私には先輩以外との未来は考えられないのだ。
『運命の人』とか軽々しく言うつもりはないが、そうであってほしいと、この恋に永遠があればいいと心から願っている。
「っていうか、ウチらも将来のこと考えないといけないねー」
「知佳は大学に残りたいって前に言ってなかったっけ?」
「うーん、まだ悩み中。万里は就職だよね?」
「うん。今はまだ支えられてばっかりだけど、ちゃんと就職して、自立して、私も先輩を支えられるようになりたいの」
「なるほど。……ちゃんと前向けるようになってきたんだね」
「……うん。知佳のおかげ」
「へ? 先輩のおかげでしょ?」
「先輩もだけど。……あのね、知佳。私、知佳がずっと側にいてくれて、支えてくれたから今の私があると思ってるよ。知佳がいなかったら私たぶんダメになってたし、それこそ恋愛どころじゃなかったと思う。
だからね、知佳。……ありがとう。ずっと私の側にいてくれて。ほんとに、本当に救われた。今まで助けてもらった分ちゃんと返せるように私頑張るから。……これからも、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、ふわりと知佳の腕が背中に回り、ムギュリと抱き締められた。
「……もう。泣かせないでよぅ。……気にしないでいいんだよ。大事な幼なじみじゃん。辛い時に側にいるのは当然でしょ? 私だって辛い時に万里が側にいてくれて助かったこといっぱいあったんだから。だから、返すとかも考えなくていいんだよ。
就職とか、結婚とか、これからは別々の道を進むかもしれないけど、……お互い幸せになろうね。」
「うん……。絶対ね」
そう言って私たちは、一晩中泣き笑いながら語り続けたのだった。




