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来世でも一緒に  作者: 霜月
本編
44/63



 夏休みも終わったというのに、まだまだ暑い日が続いていた今日この頃。

 就活も落ち着き今度は卒論の為に研究室にいる事が多くなった先輩とは、また以前と同じように過ごしている。


 ちなみに夏休み中は、先輩とは夏祭りに行ったぐらいで関係も特に進展することなくキス止まりだ。


 そしてと言うかなんと言うか、昨夜は知佳と話をしていたのだが、……とうとう知佳から報告があった。


 本当は春頃には付き合うことになっていたらしいのだが、私を気遣ってなかなか言い出せなかったらしい。

 智也先輩から告白をされたと報告をした後もしばらくは様子を伺っていて、その結果、大丈夫そうだなと判断したので自分も打ち明けることにしたのだと言われた。


「お互い幸せになろうねー!」と言われた後に思わず相手の名前を聞いてしまったのだが、「涼さんって言ってね。あ、写真見せるよ」と言いながら見せられたスマホの画面には、幸せそうに頬を寄せ合う知佳と涼先輩が映っていた。


 そこでたまらず「この人、私の研究室の先輩……」と言ってしまった後は大変だった。


「え! え?! マジ?!」から始まり、「私の事、大学で何か言ってる?」やら、「万里は気付いてたの?」やら、色々と聞かれた。


 ちなみにその質問には。

 大学ではそもそも涼先輩に会うことがレアで、1度相談を受けたことがあった時にまさかと思った程度で、それ以降は特に何も聞かされておらず、確信もなかった。

 知佳の話も「やっと就活も落ち着いて彼女と会う時間が増えた! マジ幸せ! 万里ちゃん、あの時はありがとう!」ってこの前言われたぐらいだよと答えておいた。


 そんなこんなで遅くまで起きて話をしていたので、今朝は寝坊してしまったのだ。


 だからたまには何か買って研究室で食べようかと売店に行ったのだが、当然のようにナポリサンドは売り切れていて。

 諦めてサンドイッチと紙パックのコーヒー牛乳を買い、研究室に歩いて向かう途中、なんだか前にもこんな事があったなと思った。


(そっか。あの時、初めて智也先輩に会ったんだっけ……)


 髪が長くラフな格好をした智也先輩を思い出して、思わずクスリとしてしまう。


(あの後図書館で本を取ってもらって、さらにその後研究室で会ってビックリしたんだよね)


 無口で無愛想だと思っていた先輩が実はすごく優しい人で、まさか付き合うことになるまでとは。


(……恋って不思議だ)


 そんな事を考えながら研究室のドアを開けると、ナポリサンドを片手にPCに向かう先輩がいた。


「あー。智也先輩、またナポリサンド食べてる」


「んん?」


「……私も食べたかったのに」


 いつかの日のように、恨みがましい目でちょっと睨んでみる。


 すると、智也先輩が一瞬ポカンとした後ブハッと笑ったので、今度は私がポカンとしてしまった。


「ハハハ。あ、いや、ごめんごめん。前にも市川に睨まれたの思い出して、可笑しくなった」


「え?」


「覚えてない? 市川が初めて研究室に見学に来た日。売店で涼と買い物してたら、後ろに並んだ市川に睨まれたんだよ」


「いや、覚えてますけど……」


 というか、さっき思い出していたばかりだ。


「……気付いてたんですね……私が睨んでたの……」


 なんだか恥ずかしくなって、視線を逸らす。


 すると智也先輩が立ち上がり私の前まで来たかと思えば、先輩の腕がふわりと私を囲んだ。


「気付いてたよ。んで、今みたいに耳赤くして目を逸らしてんのが可愛いなって思って、覚えてた」


 そう言う先輩の手が、私の耳を優しく撫ぜる。


「その後、図書館で一緒懸命に本を取ろうとしてるのを見かけて、なんとなく手を貸したくなったんだ。……あの時にはもう、好きだったのかもな……」


 顔を上げれば、目元をほんのり染める先輩と目が合った。


「初めて……聞いた……」


「だって、市川には初めて言ったもん」


「……もん?……ふふふ。先輩が、もんって。あはは」


「……なんだよ」


 ちょっと横を向いて拗ねる先輩がまた可愛くて、愛しくて。


「ふふ。からかってごめんね」


 私がそう言って先輩の頬にキスをすれば、先輩がちょっとビックリした顔をして私を見た後に、さらに目元を染めてふわりと笑った。


「市川、……もっかい」


 優しくホールドされてそんな顔でおねだりされれば、抗うことなどできる訳なく。


 私は初めて自分からキスをした。


 そしてそれは唇を軽く合わせるだけの幼いキスだったのに。

 ペースを合わせるように先輩から角度を変えて同じようなキスを繰り返されれば、幸せだなと改めて思った。


 大事なものを扱うように優しく抱き締められれば、この人の彼女になれて良かったと心から思った。


(できることなら、ずっと一緒にいたい……)


 キスが終わって。

 キュッと抱き締めてくれる先輩の腕の中で、私はそう願わずにはいられなかった。




 *




「なー。市川って、ちゃんと食べてる?」


「……食べてますよ? 今現在も、サンドイッチを」


 キスとハグが終わって、いつものようにそれぞれの席についた後、不意に先輩からそう話しかけられた。


「や、そうじゃなくて。普段」


「……? 食べてますよ。自炊するの嫌いじゃないです」


「でもなんか……細くね? 抱き締めた時、折れそうだなって時々不安になるんだけど」


「そう、ですか……?」


 たしかに両親を亡くしたすぐ後は何も食べれなくて、知佳にすっっごく怒られるくらいにまで痩せた。

 でも怒られてからは少しずつ食べるようにして、自炊も少しずつ覚えて、体重も戻った。

 今では知佳の方が痩せているくらいだ。


「でも、細いっていうなら先輩もどちらかというと細身ですよね。ナポリサンドみたいなハイカロリーそうなのよく食べてるのに」


(っていうか、先輩すっごく食べるのに。……羨ましい)


「あー。俺、元からあんまり太らないんだわ。体力作りで走ったり筋トレしたりしてんのもあるんだろうけど」


「なるほど」


「そういえば市川はサンドイッチたまに食べてるけど、好きなの?」


「……うーん、うん。好きです。っていうか、サンドイッチってピクニックの思い出があって、懐かしい気持ちになるんですよね」


「ピクニックか。俺行ったことないかも」


「え? そうなんですか? 外で食べると、気分も変わって美味しいですよ」


「へー。いいな。行ってみたい」


「あ、じゃあ、時間ができたら行きましょうよ。私、サンドイッチとナポリサンド作ってみます」


「え、マジで。期待しよ」


「あー……期待は……しないで下さい」


「大丈夫だって。市川が作ったなら絶対美味い」


「なんですかそれ。プレッシャー」


「ハハハ」


(これは、練習せねば……)


 その後、笑顔の先輩に頭を撫でられてしまって。

 私はナポリサンドの練習をしなくてはと心に誓ったのだった。

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