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第45話 Óðinn

スマホが震えた。


《レベルUP》

《ステータスUP》


そっか。


「オレ達、レベル上げしに来たんだよな……」


「うん。てか、翔くん……時間が」


オレは、スマホの時間を見た。


「え!? ほとんど時間進んでない……」


今の戦いは、なんだったんだ……。


……夢、じゃねえよな。


「せっかくだから、博物館見てく?」


切り替え、早っ。

元気だな、ミラ。


「あ、そうだな」


自動ドアが開くと、外の空気がすっと途切れた。


中は思ったより明るくて、静かだった。


天井は高めで、白い壁に展示パネルが並んでいる。

正面には大きな模型があって、ガムラ・ウプサラの丘陵地帯が立体で再現されていた。

小さな人形や木々まで作り込まれていて、思わず足が止まる。


「へえ……」


ミラが少しだけ身を乗り出す。


「翔くん、あれ!」


ミラが指差したガラスケースには、王の墓からの出土品、武具や装飾品が展示されていた。


「あの剣……折れてるけど、間違いない」


「さっきの王が持ってたね」


ベオウルフ……。


「なあ、ミラ。なんであの3人の王は、ドラウグルをぶっ飛ばしたんだ? 仲間じゃねーのか?」


ミラは首を振った。


「この場所は、おそらくヴァルハラ。アースガルドの兵舎だと思う」


「アースガルドの兵舎?」


「うん。ラグナロク……最終戦争に備えて、死んだ英雄の魂を集めてる場所」


「つまり、さっきの三人の王ってのは……」


「アースガルドの兵士」


なるほど。

だからヘルヘイムのドラウグル達を追い払ったってことか。


「ん? 待てよ。死んだ人間は、みんなヘルヘイムに行くんじゃないのか?」


ミラは、また首を振った。


「北欧神話では、死んだ人間は選別されるの。戦力のなりそうな勇敢で強い魂は選別されてヴァルハラに行き、神の軍隊になる。そうじゃない魂は、ヘルヘイムに吸収される」


死者の選別……か。


「その選別をして、ヴァルハラに魂を連れてくるのが、私の守神。ヴァルキリー……」


そう言うと、ミラはヴァルハラの模型を指差した。


さっき見た、青白い建物と同じだ……。


「……なあ、ミラ」


「ん?」


「ヴァルキリーってさ。神にとって……味方なのか?」


ミラは頷いた。


「うん。そのはず。アースガルド、そしてオーディン直轄の神だから」


オーディン?

確か、最高神って言ってたな。


「ほら、アレ。ヴァルキリー」


ミラが指差した方向には、一際大きな絵画があった。


白銀の鎧に純白の羽を生やした女戦士達。


え。

ヴァルキリーって、一人じゃねえの?


ん?


そして──


オレはその横に、小さく飾られた絵を見つけた。


その瞬間、体に電流が走る。


「あ……あの絵……」


「さっきの……」


オレとミラは、一枚の絵画を見て固まった。


ヴァルハラが閉じた時に現れた老人。

あの老人にそっくりな絵。


額縁の下に、“Óðinn”の文字。


「ミラこれって……」


「うん。オーディン……そう書いてある」


背筋に寒いものが走る。


さっきの老人が、まさか最高神オーディン!?


ここに来てから感じてた視線は、もしかして……。


同時に、点と点が音を立てて繋がった。


──ヴァルキリーの加護が切れた理由。

──三王が現れた理由。

──ヴァルハラが、強制終了した理由。


これ、全部──


ミラだ。


──ヴァルキリーが、ヴァルハラを壊してはいかんのう。


あの言葉の意味が、わかった。


「ミラ」


「うん?」


「つまりさ──」


言いながら、自分でも整理する。


「ヴァルキリーの力が消えたのは、お前が悪いんじゃなくて」


オレは、老人の絵を指差した。


「あいつが止めたんだろ」


「……あいつ?」


「あのジジイ。最高神オーディン」


ずっとオレ達を見てたのも、王を呼び出して兵舎を守らせたのも、そして──ヴァルハラを閉じたのも。


「全部アイツだ」


「うん。そうかもね……」


下を向いたミラ。


「どした?」


「ううん」


「なんだよ」


「いや……翔くんとアースガルドに近づくと、またヴァルキリーの加護が消えちゃうのかな?……そしたら、私、また足手纏いになっちゃうかもって……」


オレは笑った。


「ははは、ミラ! バカだなぁ、お前」


「え!?」


「その時は、オレがあのジジイを、先にぶっ飛ばしてやればいいだろ!」


ミラが吹き出した。


「もう、翔くん! 私、真剣にへこんでんのに!」


オレはもう一度、オーディンの絵画を見上げた。


「それにしても……だったらなんでヴァルキリーはミラの守神についたんだ? なんであのジジイはそれを許したんだろうな」


「……うん」


その時、スマホが震えた。


《世界階層データ・シンクロ率》

《アースガルド シンクロ率:増加》

アースガルド 22% → 25%


《ヘルヘイム シンクロ率:増加》

ヘルヘイム 38% → 45%


アースガルドとのシンクロ率が、全然上がらねえな。


あと。


ガルムルを止めたあの声。


王妃って……。


……意味わかんねえな、北欧神話。


オレは、顰めっ面のジジイの絵を見上げた。


──その時。


絵の中のジジイが、笑った気がした。


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