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フェイント  作者: 坂本健太
11/13

エピローグ

 定時で仕事を切り上げ、最寄りのバス停まで歩く。職場から自宅までは、バスで30分ほどかかる。亜紀ちゃんはめずらしく体調が悪いと言って、今日は仕事を休んでいた。


「ただいま」

 賃貸マンションの2階、自分で玄関のカギを開けて、1LDKの部屋に入る。リビングの灯りはついているが、夕食の匂いはしない。


「てっちゃん、おかえり。ごめん、晩御飯準備してないんだ」

「そっか。まだ体調よくないの?病院、行ってきた?」


「……」

 なんだ、この間は?まさか、重い病気だったってこと?


「てっちゃん、おめでとう。やっとパパになれるよ」

「え、亜紀ちゃん、それって、赤ちゃん……?」


「うん、できたって。もうすぐ6週になるんだって」

「そっかあ」


 こういうときの男って、夫って、どういう顔をすればいいのか、なんと声をかければいいのか、とっさにはわからない。だけど、なんだか顔が熱くなって、胸がドキドキしてきた。


「赤ちゃんかあ」

 亜紀ちゃんをそっと抱き寄せてから、それだけを言った。


「男の子だといいな」

 亜紀ちゃんが耳元でささやく。

「え、なんで?」


「男の子だったら、一緒にフットサルできるじゃん」

「何言ってんの?女の子でもフットサルはできるよ」


 なんだかわくわくしてきた。名前は何てつけようかな?ポジションは?背番号は何番がいいかな?家族でチームを作ると言ったら、パパはまたゴレイロをやってくれるだろうか?



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