エピローグ
定時で仕事を切り上げ、最寄りのバス停まで歩く。職場から自宅までは、バスで30分ほどかかる。亜紀ちゃんはめずらしく体調が悪いと言って、今日は仕事を休んでいた。
「ただいま」
賃貸マンションの2階、自分で玄関のカギを開けて、1LDKの部屋に入る。リビングの灯りはついているが、夕食の匂いはしない。
「てっちゃん、おかえり。ごめん、晩御飯準備してないんだ」
「そっか。まだ体調よくないの?病院、行ってきた?」
「……」
なんだ、この間は?まさか、重い病気だったってこと?
「てっちゃん、おめでとう。やっとパパになれるよ」
「え、亜紀ちゃん、それって、赤ちゃん……?」
「うん、できたって。もうすぐ6週になるんだって」
「そっかあ」
こういうときの男って、夫って、どういう顔をすればいいのか、なんと声をかければいいのか、とっさにはわからない。だけど、なんだか顔が熱くなって、胸がドキドキしてきた。
「赤ちゃんかあ」
亜紀ちゃんをそっと抱き寄せてから、それだけを言った。
「男の子だといいな」
亜紀ちゃんが耳元でささやく。
「え、なんで?」
「男の子だったら、一緒にフットサルできるじゃん」
「何言ってんの?女の子でもフットサルはできるよ」
なんだかわくわくしてきた。名前は何てつけようかな?ポジションは?背番号は何番がいいかな?家族でチームを作ると言ったら、パパはまたゴレイロをやってくれるだろうか?




