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異世界の死の商人  作者: ワナワナ
第三章

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第四十九話 勘違いの果て

遅れました。すいません。ここまで読んでくれた方ありがとうございます。せめて完結はさせますので待っていてください。

 危機的状況だったが『月がきれいですね』という言葉の意味そのものをごまかすことにした。幸いにも意味を知らない人が過半数いる。


「月がきれいは言葉通り、それ以上の意味はない。」


「違うよ、僕はあんまりその手の分野には疎いから覚えてないけど好きですとかそんな意味だったはず……。」


「二人とも嘘をついてなさそうです……。」


 ミーラを騙せたことは幸先がいい。いつも彼女は俺の隠し事を見抜くけど今回は騙せるかもしれない。


「どうせユータが恥ずかしくなっただけよ。」


 ……これが精神年齢の差なのか。俺も百希も対人経験が足りなすぎる、過ごしてきた時間がアイスとは違う。このままだと俺が追及されるから話題を変えることにした。


「そういえば、アイスは他の国に行ったことがある?」


 俺は全員に地図を見せる。彼女はしばらく地図を見てから、周りの国々のいくつかを指さす。その中には丁度、帝国が派兵している国もあった。


「この国は草原とそれを囲むように山が多かったわね。ユータも行ってみるといいわ。いい国よ。」


「戦争が終わったら一緒に行きたいですね。」


 他の国に行ったことがないミーラは興味があるのか楽しそうだった。確かに今その国に行くのは無謀だ。そういえばリベレはもうここに到着したと言っていた。


「終わったらね。」


 東の大帝国もこの時代にしてはおかしい大きさの国だ。わずか一世紀程でここまで大きくなったというから信じられない。帝国はそんな国を敵に回している。


「終わりますかね?」


「終わるよ。多分。」


「そういえば、君は今日どこで寝るの?」


「……テント?」


「違うよ、どの寝袋を使うか聞いてるの!」


 百希はさもとても大事なことのように尋ねた。正直そこまで気にしていない。そういえば4人用のテントってアイスは言っていた。これはもめるな。


「平和的に決められれば別に。」


「ならチェスで決めようよ。」


「百希さんに有利すぎませんか?」


「公平にくじ引きにしないかしら。先にユータから引いて。」


 アイスはデザインが微妙に異なる四本の棒を俺の前に差し出す。俺が引いた後にアイスはくじを引いてミーラに引かせる。これは本当に公平なのか……。別に百希とミーラが気づかないなら問題ないけど。俺は二番でアイスは三番、ミーラは一番、百希は四番だった。もし百希の目が良かったら絶対にばれていた。後でアイスに釘を刺しておこう。結局、番号順に並んで寝た。














 朝日に照らされて、目が覚める。普段よりも早い時間で起きたからか頭がまだ回らない。そんな時にミーラが一部の新聞を持って来てくれた。


「おはようございます、まだ眠そうですね。」


「……おはよう。」


 まだぼやけた目をこすって新聞を読む。『皇帝の逝去により東の大帝国撤兵』ん?何かの読み間違いかと思ってもう一度読み直す。同じ一文がそこには書かれているだけだった。


「終わりましたね。」


 ミーラは何か含みのある笑顔だった。アイスは何か知っているのか俺が目を向けると目を合わせないようにした。百希と俺は当然何も知らない。でもこんな大きなことにアイスはともかくミーラが何か出来るとは思えない。


「アイス、何か知っているよね?」


「……ええ、でもあれが原因とは思えないわ。あれはおまじないと変わらないわよ。」


「でも、現実に効果がありました。」


 ミーラが何か危険なことをしたのではないか。心配だった。


「秘密にしていたことは謝ります。まずはこれは見てください。」


 ミーラはまた違う日付の新聞を俺に渡す。目を皿にした。それはお世辞にも大きいとは言えなかったけれど、彼女が作った広告だとすぐに分かった。可愛らしい白黒のイラストと枠ギリギリまで大きくした文字。『困難な今は小さな幸運を使うとき』。これだけでは、ミーラが何をしたのか詳細には分からないけど大まかには分かった。


「同じ小さな幸運を持つ人、みんなで使ったってこと?」


「そうです!」


「でもミーラさん、広告は莫大なお金がかかるはずだよね。」


「それは百希さんとあなたに心当たりがありませんか?」


 何かミーラが大金を得る機会があったように思えない。何かあっただろうか。


「そういえば、この前僕のシンギュラリティを試したときに金貨を手に入れてたね。」


 そんなこともあった。あの時の金貨を彼女は持っていたのか。……金か、そういえばミーラと砂金を見つけたことがあった。


「……ミーラは砂金を見つけてたね。」


 それでこんな結果になるとは。俺は彼女の可能性を誤解していた。神頼みのような事でも技術的特異点に頼らないでここまで実現した。彼女はいつの間にか俺の目指すはるか先に行ってしまった。


「ユータ、どうしたのよ?ちょっと悲しそうよ。」


「別に……。」


 元から彼女は努力ができる人だった。だからこれは当然の結果で受け入れるべき。でもおかしいな体力で彼女に負けても別に何とも思わなかったのに。


「どんな時代でも本当は平民が一番力を持っているのよ。」


「そう思うと道具に使われている僕の身分が奴隷なのも皮肉だね。」


「全然奴隷らしくないのに不思議よね。」


「本当ですよ。少しは昔の私を見習ってください。」


「結構ひどいこと言うね君たち。僕が最先端の奴隷なのに。」


 百希は俺を元気づけようとしてるのか楽しそうに言う。彼女まで巻き込んでこんな生活を始めた以上、この道の果てまで進む責任と願いが俺にはある。


「せっかくミーラの功績に報いないとね。実は俺も一つ隠し事をしてたんだ。」


「またですか?今度は何ですか。」


 彼女は俺をみて何か期待する目で俺を見た。俺は静かにラッピングされた三個のプレゼントを持ってくる。


「へ?僕にプレゼント?どれが誰の?何?どこでいつ買ったの?なんで?どうやって僕に隠したの?」


 百希の質問は5W1Hすべてだった。控えめに言うと彼女は知りたがりだから当然だった。


「それでもう開けてもいいわよね。」


 アイスは特に俺の返事を待たずに開封した。箱の中には紅い宝石で飾られたイヤリングが入っていた。彼女は早速取り付けるのかのように見えたが俺に渡してきた。彼女の性格からして何をさせたいか分かった。俺は少し背伸びして彼女の耳に着けてあげる。


「私が最初でいいのかしら?」


 何故かアイスがそんな反応をしてきたが特に順番は気にしていない。


「?別に。」


 ミーラは透明な宝石のイヤリングを大事そうに胸に抱えている。百希は俺のプレゼントが希少だからか翠色の宝石に魅入られている。


「ミーラ、俺が着けるよ。」


「いいですか?私が二番で?」


 何故か彼女も順番を気にした。大したことでもないのに。俺は適当に答えておく。


「ミーラだから。」


 俺がそう言うと彼女は顔を紅潮させて、それから目を閉じた。俺はセミロングの髪をどかして着ける。


「その僕にも着けてくれるかな?」


 百希は緊張して力が入らないのか俺に体重を預ける。俺が着けてもそのままだった。


「僕は……君と婚約できるだけでも十分だから……。」


 ……?待て。何故か宝飾店にイヤリングが多いと思ったけどまさか……。それなら順番の意味は……。


「あの、順番に意味はないから。」


「取り消しなさい。あなたも貴族なら分かるわよね。」


「嘘!?本当に!そうだよね。君がこんな狭い国のルールにとらわれるはず無いよね。」


 やばい……今から正直に罪を告白しても許してもらえると思わない。まずアイスはこの事実を無かったことにはしないだろうし、ミーラはこういうことには厳しい。百希はこの事実を最大限利用する。詰みだ。なら改めてちゃんと好意を伝えよう。改めて渡そう。


「……分かった。今日の夜もう一回正式に渡す。」

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