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他に見ておく場所ってあるの?

20191015改稿。

「他に見ておく場所ってあるの?」

「うーん、あとは怪我や病気をしたときにお世話になる施療所(せりょうじょ)とか、武具をしまっておく蔵あたりかな」

「怪我した場合は姉貴にお願いしたらすぐに治してもらえるじゃないか」

「それはそうなんだけどね」

「そうだ、厩舎には行ったのか? 馬がいただろ、馬!」

「ここに来る前に寄ってきたよ。立派な馬が何頭もいたね」

「そりゃな。なにしろ国王様に献上された馬が優先的に来てるって話だからさ。姉貴の領地から献上された馬もいるんだろ」

「うん、そうだよ」


 澪の領地は国王様に献上するような良質な馬を育ててるのか。

 ちなみに厩舎につながれていた馬はサラブレッドみたいな大型で足の細いタイプではなく、木曽馬のような中型でガッチリした体躯だった。

 速度よりも力強さ、足腰の強さが求められているのだろう。


 そういえば献上する馬を一番いいやつにしちゃうとジリ貧になるんだよね。

 もしも一番いい馬ばかりを献上しているのだとしたら教えた方がいいのかも。


「でもさ、機巧武者になったら馬には乗れないよね。どうして馬術も練習しないといけないんだろう」


 へ?と言いたげに澪と大平が顔を見合わせていた。


「そりゃ(さむらい)だからだろ。侍っていったら馬に乗れなきゃ話にならないからさ」


 なるほど、そういう理由か。

 もともと侍っていうのは「騎馬戦闘を許された武士」だもんな。


 江戸時代だと藩によっては藩士を大きく三つに分類していて、それが侍、徒士(かち)、足軽になる。

 このうち侍と徒士が士分(しぶん)とされて正式な武士のことをいう。

 戦場で一番多い兵卒である足軽は士分に該当しない。ここには明確な線引きが存在する。


 その士分のうち騎乗を許される上級武士のことを侍といって区別した。

 現実の日本との違いはあるだろうけど、簡単に言ってしまえば侍は戦士として超エリートなわけだ。

 武芸百般を磨き、馬に乗ることが許された人たち。


 そしてこの世界では機巧武者になれる機巧操士は侍を超えた超々エリートという扱いなのだろう。

 侍ができることならば機巧操士はできて当然。だから馬にも乗れる。当たり前というわけだ。


 ……僕は馬になんて乗ったことありませんけどね?


「操心館はできて間もないからどこも新しくて綺麗だけど、足りてないところもあるよね。ほら、食堂とか食堂とか食堂とか……」


 僕の言いたいことを理解した様子の大平さんは「あー」という顔をしたけど、澪はきょとんとしている。

 あれ? 澪の反応おかしくね?


「わかる、わかるぜ、兄貴! 俺もちゃんとした食堂が欲しいよ。外に食べに行っていたら時間と金がもったいなくてさ……」

「だよな。あれはさすがにだよな」

「え、なんの話? 食堂、普通じゃない?」


 今度は僕と大平さんが顔を見合わせる番だった。


「いやいやいやいや! あれはないって。姉貴だって食っただろ」

「今朝、一緒に食べた。僕はないと思った。明日もあれを食べろって言われたら、ごめんなさいするぐらいにない」

「えー、何言ってるのよ、二人とも。せっかく作ってもらったものなんだから、美味しくいただかないとダメなんだからねっ」


 いや、だからね。

 僕たちだって美味しくいただきたいのは山々なんですけども、味付けっていうか料理法っていうか、とにかく駄目なんですよ!


「真面目な話、食堂の改善は館長に進言すべきだと思っているんだ」

「兄貴、俺は賛成するぜ! そのときには俺にも声をかけてくれ。いっしょに直談判にいこう!」

「ああ、頼む!」


 男同士の友情である。

 むしろ命の危機に対する正常な反応とも言えなくはない。


「ヘンな二人。あんなの普通なのに」


 いえいえ、翠寿が朝食を遠慮したレベルでいけてないと思いますよ?

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