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異世界で「無職・スキルなし」と判定されたけど実は超一流の秘密工作員。~正体を隠して裏で無双する  作者: 波瀾 紡


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第6話:さすが勇者殿!

「ぐぉぉぉぉぉっ!」


 オークが3頭とも突然叫んだ。それが合図かのように、こちらに向かって走り出した。


「来ました! 奴らは我らでも倒すのに苦労します。勇者様! ぜひお力をお貸しください!」

「お、おう……わかった」


 騎士団が一斉にオークに向かって馬を走らせる。

 その勇ましい背中を見て、我に返った奥田が叫んだ。


「そうだ課長! いい攻撃方法を思いつきました! その剣を相手に向かって全力で振ってください! その剣は離れたところからでも、波動で敵にダメージを与えることができるから! 勇者の能力でなら、オークに大打撃を与えられるはずです!」


 スキル【世界図書館《ライブラリ》】を使って得た知識だ。

 その言葉を聞いて、佐藤は思った。──それは好都合だ。


「よし、わかった! 俺は勇者だ。俺様に任せとけっ!」


 課長が全力で剣を振った。付与スキル【身体強化《ブースト》】のおかげで、常人よりも強い力を得たせいで、強力な波動が剣から放たれた。


 波動は突風を巻き起こし、前方に飛んでいく。

 突風はあっという間に前方を走る兵士達を追い抜き、オークに向かって飛んでいった。


 しかし力任せに振った剣で、強力な敵を倒すほどの威力や精度は到底出せない。

 オークの群れに波動は当たったが、魔物達はたいしたダメージを受けなかった。


 ──と思いきや。


「ぐおぉぉぉぉっっ……!」


 オークは3頭とも苦悶の表情を浮かべ、首を掻きむしって、やがて崩れ落ちるように倒れた。白目をむいて気絶している。


「おおーっ! 今がチャンスだ。とどめを刺すぞ!」


 騎士団10名が一斉に襲いかかる。全員で何度も切りつけた。すると──


 魔物の身体から黒い霧のようなものが立ち上り、やがて霧散して消えた。

 完全にオークを倒した。


 騎士団の面々が振り返り、課長を絶賛する。


「さすが勇者殿! 我々は総がかりで何度も切りつけてようやくオークを倒しましたが、勇者殿は遠隔からのたったの一振りで、一度に3頭を気絶させました。これはすごい! 凄すぎるっ!」


 ギャル沢も奥田も目を丸くしている。


「カチョー、やるじゃん! かっけー!」

「凄いですよ課長! 見直しました!」

「そうだろ、そうだろっ!」

「それにしても課長。よくぞ怖がらずに戦えますね。尊敬ですよ」

「まあ、どうせ夢だしな」


 太刀の波動は常人には見えない。だから誰もが課長の一太刀でオークが気絶したと思い込んでいる。


 皆が歓喜に沸くその後方、最後尾で──


 佐藤は一人冷静に、超小型銃をスーツ内側の隠しポケットにしまった。

 サイレンサー付きで、手のひらに収まるサイズの特殊な銃だ。弾丸も特殊で、即効性の強力麻酔薬が内包され、先端には針が付いている。


 ──やつらの身体の構造はわからんが、この麻酔針は魔物相手でも有効なことは証明された。ふむ。これは僥倖《ぎょうこう》であるな。


 しかし問題は別にある──


 カートリッジは弾丸10発入りで、予備が1つ。合わせて20発。それが現代日本からこの世界に持ち込んだ弾の数だ。

 ここが本物の異世界なのであれば、弾丸の補充ができない。

 いや。今のモンスターを見れば、やはりここは本物の異世界なのだと思わざるを得ない。


 幸い3頭のオーク相手に、1発も外すことなく頸動脈を撃ち抜いた。

 残りは17発だ。

 他にも武器はあるが、遠方から隠れて敵にダメージを与えられるのはこの銃だけだ。


 見たところ、課長の剣の威力は大したことがなさそうで、期待できない。


 つまり弾丸の使いどころを慎重に見極めないといけないということだ。


 ──ん?


 佐藤はただならぬ気配を感じた。

 さっき倒したオークの何倍もの邪悪な気配。


 ──なんだ? まだ何かが潜んでいる?


 周りでカチョーを称える喝采が起きて、気配がかき消される。

 気がつくと邪悪な気配は消えていた。


「さすが勇者殿です。感動しました!」

「ふふん。そうだろそうだろ」


 佐藤は怪訝に感じたが、深追いなどするわけにもいかない。他のメンバーから不審がられるだけだ。


 しかし元々魔物がいなかったはずの場所に突如オークが現れた。

 もしかしたら裏で糸を引く何者かがいるのかもしれない。


「これは予想以上に厄介なミッションかもな」


 佐藤は周りに聞こえない声でぼそりとつぶやいた。

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