自己ログ倉庫91 「ありがとう」
今日模試当日。
代々木ゼミナールの阪大模試で、大阪大学のキャンパスで受ける。
別の高校に通っていて、阪大文学部を目指している吉田と朝の8時に地元の神社に招集をかけている。
いつものことだな。
彼とはどちらか片側が意気消沈した時や話したいことがある時によくその神社で会合をしている。一週間前も互いに勉強の不調で話した過去がある。
俺にとってその神社は何よりの思い出の地であると同時に青春を斜めに見る俺らの聖地でもある。
そんな神社に今から1時間33分後に集まり、そのまま電車に乗り、大阪へ向かう。
阪大へと向かう。
俺はこの一週間勉強ができていなかった。
それは前話で話した通りだ。
俺は孤独で勉強をすることを望み、それを実行した。常に一人部屋で常に一人。集中はできたかもしれない。けれど何に集中するかが問題になった。
いずれ俺はやる気をなくした。実績をどんどん失っていく自分は、勉強へ強烈な忌避を持つようになったのだ。
夏休みの計画は根元から失敗した。それは事実だし、阪大に行くことがかなり厳しくなったのも事実だ。
今回の模試で俺らが夏休みどれだけ努力したかが明確になる。自信はまったくない。
けれど、それでいいと思っている。
昨日の夜。俺は早めに布団についた。連日24時越え8時起きという悪習慣が染み付いたこの俺には久しく、8時に寝床につき5時に起床した。
5時の朝の空は紫色であった。
昨夜、俺は布団にくるまりながらとあるCDを聴いていた。
ゆるゆりのCDであった。
CD自体、聞くのが数週間ぶりであった。
なぜかはわからないが、謎の抵抗が芽生えていたのだ。
だけど、昨日は聞くことができた。聴いてみようと思えた。その選択は本当に感謝しかない。
ゆるゆり。俺は涙を見た。心の奥底に眠っている今までの情熱の扉が微かに開く音を聞いた。
心身に風が吹き込んでくる様子を感じた。
俺は目覚めた。
今の俺は昨日の朝の俺とは違う。
元気がある。久しい元気だ。
懐かしい元気だ。
思えば去年の夏。毎日10時間以上友人と学習室で勉強していた頃もゆるゆりを合間に聴いていた。
ゆるゆり。それは俺のバイブルであると同時に、俺を絶望の淵から掬い出し、俺の情熱を再燃させ、そして俺の心を前へ傾けてくれる存在。
そんな存在。
間違いなく俺の受験戦争における最強の傍ら。仲間。心のゆとり。
そんな存在がいてくれることに感謝して、俺は涙を拭く。
大人になっても忘れない。いや、大人になっても助けを乞うだろう。
ゆるゆり。
俺の生涯を変えるほどの強さを持っているのかもしれないと時々思う。
感謝はしている。同時に尊敬もしている。
彼女達がいなかったらと考えると俺の未来は想像できなくなる。
それほどまでに稀有でありがたい存在。
だから
俺は
今
前を向けている
久しぶりに顔を上げられている
何日ぶりかに6時の朝を思い出せた。
だから俺は
夏休みを無駄にしても
志を失っても
心に影を迎えても
それでも前を向ける。
まだ俺の受験戦争は終わっていない
ラグナロクは終焉を迎えていない
最悪の状況
定まりし運命は俺が推測できるようなものではない
まだ誰にもわからない
だからこの戦争は
愛の女神に助けられた
地獄から復活した
最弱の俺でも
まだ、
勝機があると言える
始まりは8月16日今朝
これまで何度も終わり、始まってきた俺の受験戦争
それが今、本当の終わりに向けて再始動する
それに今の俺は忌避感など感じていない
むしろ、よろこびさえある。
いや、ありがとう
俺は彼女達と走る




