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あっと!ヴィーナス!!  作者: 神崎理恵子
ハーデース編
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ハーデース編 partー9 愛ちゃん

 椅子から飛び降りると、ハーデースに向き直った。

「やい!愛ちゃんをどこに隠した!?」

「隠す?」

「そうだ!今すぐ、愛ちゃんを出せ!」

「隠していないが……その者なら、隣の部屋でくつろいでいるがな」

「隣の部屋だと?」

「ああ、そこの部屋だ。鍵は掛かっていないぞ」

 ハーデースが指さした扉に向かう弘美。

 取っ手に手を掛けようとするが、ヴィーナスが忠告する。

「開けるのか? 罠かも知れんぞ」

 するとハーデースが応じる。

「その心配はない!」

「信じられるのか?」

「インディアン嘘つかない」

「お、おまえもかよ! 天上界では、よほどローンレンジャーが流行ってるんだな」

 といいつつ、取っ手に手を掛けドアを開けた。

 そして、弘美の目に飛び込んできたものは?

「なんだこれは?」

 広間の中央にデンと置かれた大きなテーブル。

 その上に、これでもかと並べられた食事の数々。

「まあ、ゆっくりしていきたまえ」

 と、声を掛けたのは、

「アポロン!」

 誘拐犯の主犯、その人であった。

「あ、弘美ちゃん! 遅かったじゃないの」

 と、声を掛けたのは双葉愛だった。

 食卓の末席で、食事を頬張っていた。

「愛ちゃん! なんでだよ?」

「来るの遅いから、先に食べちゃったわよ」

「た、食べて平気なのか?」

「うん。おいしいわよ」

「確か、神の食事って人間が摂ると不死になるとか……有害じゃなかったか?」

「まあな。人間にとっては危険ともいうべき食べ物だ」

 ディアナが解説する。

「心配するな。愛君の食べているのは、ちゃんとした人間の食べ物だよ」

 アポロンが解説した。

「本当だろうな?あ、インディアン噓つかないって言うなよ。当たり前だのクラッカーもダメだ」

 機先を制して口封じする。

「まあ、私を信じたまえ。愛君の隣に座ればよかろう。そこが人間の席だ」

 指定された席に着く弘美。

 ともかくも、洞窟を歩き疲れて腹も減っていたのだ。

「腹が減っては戦は出来ぬというからな」

 目の前の人間用の食事を手に取る。

 それを見届けてから、二人の女神に向かって、

「ヴィーナスとディアナもどうだね? 神の酒(ネクタル)神の食物(アムブロシア)も用意してあるぞ」

 とアポロンが勧める前に、ヴィーナスが神の酒を既に飲み始めていた。

「ちゃっかりしてるやっちゃな。ヴィーナスは」

「酒には目がないからな」

 ディアナも救い難いという表情をしていた。

「おまえらも飲むか?」

 ヴィーナスが弘美たちに、神の酒を勧めようとする。

「あほか!神の酒が飲めるかよ。不死になっちまったら人生終わりだ。だいたいが、俺達未成年だ!」

 やがて、ハーデースも主席に着いて、宴が始まった。

 弘美も取りあえずは空腹を満たすために、目の前の食事に手を付けている。

「おい。そんなにがっつくと太るぞ!」

「そうそう、せっかくのプロポーションが台無しになるじゃないの」

「知るかよ。空腹を満たすことの方が大事だ」

 仮に太ったとしよう。

 弘美は、ファイルーZリストに載っている人間だ。

 女にされた時に、見目麗しき姿に変身したくらいだ。

 醜態な状態になれば、ゼウスが放っておかないだろう。

 必ず、再び元の美麗な姿に戻すと思われる。

 それを知ったか知らずか、気にもせずに食べ物を口に運んでいる。

「ところで愛ちゃん」

「なあに?」

「どうやってここに連れてこられたの?」

「そうねえ……(としばし思い出そうとする)家に帰って玄関の扉をくぐったら、ここに出ていたのよ」

「つまり玄関扉が、どこでもドアになっていたということか……」

「どこでもドア?」

「分かりやすく言うと、転送装置だよ」

「ああ、そういうことね。でも、どうして私を?」

「人質になっていたんだよ」

「人質……私が?」

「俺……じゃなくて、あたしを連れてくるためにね」

 神の前では『俺』と称する弘美だったが、弘美の前では『あたし』と称している。

 愛ちゃんは、弘美を女の子と思わされているから、その前では俺とは言えなかった。

「さてと宴もたけなわ、本題に入ろうか。アポロン議事進行!」

「え、自分がでありますか?」

「やりたまえ」

「分かりました」

 すると、食事を乗せていたテーブルが、音を立てて床の下へと沈んでゆく。

 代わりに現れたのは、会議テーブルだった。

「ああん。もっと飲みたかったのに~」

 ヴィーナスが名残惜しそうに床の下を見つめている。

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