第二章 partー7
やがてファミレスから二人の後を追うように黒服が出てくる。
「あ、あいつだ」
飛び出そうとするのを、止めるディアナ。
「なぜ止める!」
「言っているだろ。すでに起きてしまった過去に干渉するなと」
「だからって黙って見ているのかよ」
「そうだ。おまえが出て行けば、おまえが二人になるってことだ。これが判るか?」
「う……」
図星をつかれて、しどろもどろになる弘美。
そうこうするうちに、黒服が愛をさらって行く。
「よし、いいだろ」
というと、手のひらを上向きにして何やら呟くと、その上に小さな天使が現れた。
「あの、黒服が抱えている女の子を追いなさい」
「はあい」
かわいい声で返事をすると、ぱたぱたと羽ばたいて黒服を追い始めた。
「エンジェルに尾行させるのか?」
「ああ。あの子は、黒服には見えないからな」
「なるほど」
やがて黒服も小さな天使も空の彼方に消え去った。
「で、これからどうするんだ?」
「なあに大丈夫さ。これがある」
と、スマートフォンを取り出した。
「スマホか?どこに隠し持ってたんだよ」
「秘密のポケットがあるのさ」
「ドラエモンかよ」
「これで天使と連絡を取れる」
「神でも電話するのか?」
「神を馬鹿にするなよ。天上界にはパソコンもインターネット環境も揃っているぞ」
「なんだよ、それ」
「エンジェルもスマホ持ってるのか?」
「彼女には探偵バッチで通話できるぞ」
「少年探偵コナンかよ」
「ついでに天使の位置情報を表示することができるぞ、ほら」
と見せ付けるスマホの画面には、赤い点滅が表示され動いていた。
「眼鏡レーダーじゃないんだな」
「そこまではパクレないわよ」
スマホ画面を見つめる弘美とディアナ。
と、突然スマホから音声が、
「あーあー。本日は晴天なり、本日は晴天なり」
聞こえた。
「黎明期のラジオ放送か?」
「彼女からの通信だよ」
「あ、そう」
「感度良好だよ。何かあったか?」
スマホに話しかけると、答えが返ってくる。
「今、黒服が大きな雲の塊の中に入っていきます」
「追えるか?」
「任せてください」
通信が途絶えた。
「大きな雲の塊ねえ……」
と空を仰ぐ弘美。
すでに黒服と天使の姿は見えない。
真っ青な空に雲一つ見えない快晴。
なのだが、場違いとも思える巨大な雲塊がゆっくりと流れていた。
「入道雲じゃないな。どうやら、あの雲みたいだ」
ディアナの言葉を受けて、
「もしかしたらラピュタか?中に城があってさ」
弘美が推測する。
「うむ、そうかもな。アポロンの居城があるのかも知れない」
意外にも同調するディアナ。
「どうやって、空の上の雲に行く?」
「大丈夫さ。これがある」
と突然姿を現したのは、ディアナの愛機。
「天駆ける戦車だよ」
古代ギリシャで使われていた、馬が戦車を引くアレだが、ソレは空を飛べる天馬が繋いであった。
「ソレで近づいたら、アポロンに気づかれないか?」
「なあに、アポロンは女以外は興味がないし、全知全能のゼウスの息子だ。たかが一般職の神相手には目もくれないさ」
「一般職ってなんだよ」
「知らないのか?」
「知るかよ」
「アポロンから見れば、わたしはただの時間管理局の局長だし、ヴィーナスは運命管理局の局長だ」
「なるほど。ゼウスが国王とするならば、アポロンは大臣で、ヴィーナス達は各省の政務次官というところか」
「まあそういうことだ」




