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  第二十二話  ヴァンパイアマスター


 



「チョット待って」


 レオミアが声を上げた。


「その、実は、あのぉ……」


 珍しく歯切れの悪いレオミアにドラクルが笑顔を向ける。


「分かってるよ。ワラキアだろ」

「う、うんアタシ、ワラキアの灰を集めてたんだ……」


 レオミアが袋を差し出す。


「知ってたよ。ワラキアの為にフーディンの首を取っておいたんだろ? さっさとワラキアの灰にかけてやれよ」


 フーディンの首を斬り飛ばした時。

 レオミアが床に転がったフーディンの首を拾い上げていた事は知っていた。


 その見た時。

 ああ、レオミアはワラキアを生き返らせたいんだな、と、直ぐに分かった。


「い、いいの?」


 そう問い返すレオミアは、いつもの戦いの女神のようなレオミアではなく可憐な乙女のようだった。


「もちろん」


 答えるドラクルにフーディンの首が喚く。


「や、やめろぉ! ホ、ホントに死んじまう!」


 首だけになっても、まだ生きてやがった。

 さすが神を名乗るだけある。

 が、これはこれで好都合。

 きっと体から流れ出る血より、効果が大きい事だろう。


「反省している! 心を入れ替えるから! 頼む、助けてくれぇ!」

「黙れ」


 メギ!


 レオミアが泣きわめくフーディンの首をグシャリと握り潰すと。


「ワラキア……生き返って」


 その血を最後の1滴まで絞り出してワラキアの灰に振りかけた。

 そして全員が見守る中。


「復・活ぅぅぅぅぅ!」


 再生したワラキアが、歓声を上げながら立ち上がった。


「急にカルくなったな」


 呆れるドラクルにワラキアが笑う。


「恨み重なるフーディンには、惨い死を与えた。そしてヴァンパイアシティーに対する恨みはドラクル、お前のおかげで捨てる事が出来た。ならもう、復讐だけに生きてきたワラキアとはおさらばさ。なあ、ミア」


 ワラキアに語りかけられて、レオミアは涙ぐみながら微笑む。


「お前にそう呼ばれるのは4000年ぶりだな、ヴラド」

「ミアにヴラドと呼ばれるのもな」


 微笑み合う2人にドラクルが怪訝そうな声を出す。


「ヴラド?」


 その声に答えたのはドラクルの父だった。


「そうだ。コイツの名はワラキア=シギショアラ=ヴラド=ツェペシュ。我が家のご先祖様だ」

「そのご先祖様をコイツ呼ばわりかよ」


 苦笑するワラキアにドラクルの父が言い捨てる。


「4000年も前の恨みで、もう既に何の関係もないヴァンパイアシティーを壊滅させた馬鹿者などコイツで十分だ」

「これはキビシイねぇ」

「ドラクルの眷属になっていなければ、復活など絶対に阻止したものを」

『え!?』


 ドラクルの父の言葉に、全員の視線がドラクルに集中する中。

 ドラクルが頭を掻く。


「いやあ、ワラキアの血を吸った時に、一応眷属にしてみようとしたんだ。どうせ無理だと思ってたんだけど、どうやらワラキアは俺を受け入れたらしくて、俺の眷属になっちゃったみたいなんだ」


 ドラクルの説明に、ワラキアが苦笑を浮かべる。


「おれはドラクルの力を理解した時からドラクルには勝てないと悟っていた。だからドラクルに血を吸わせ時、心の底で眷属になる事を望んでいたんだろうな。そのおかげで、俺もデイウォカーと化したから、ドラクルが太陽の力を行使しても俺は滅びずに済んだ。結果、ヴァンパイアとして復活する事が出来たってワケさ」

「しかし、ヴァンパイアシティーを破壊した責任はとってもらわねばならん」


 ドラクルの父が厳しい顔で言い渡すと、ワラキアも真剣な顔で頷く。


「ああ。ヴァンパイアシティー再建に全力を尽くす。そしてその後、どんな罰も受け入れよう」

「アタシも全力で手伝うから、ワラキアを許して!」


 大声を上げるレオミアに、ドラクルの父が領主の威厳を漂わせて答える。


「ヴァンパイアの眷属となった者は、それ以前の罪を問われるトコはない。それがヴァンパイアの決まりだから、その事を心配する必要はない。ではここに私、ドラコニア=ヴラド=ツェペシュはヴァンパイアシティーの領主として宣言する。これよりワラキアを含めた全員で、ヴァンパイアシティーの復興に取り掛かる!」

『おお!』


 500人の高位ヴァンパイアが歓声を上げる中、キャスがドラクルをつつく。


「マスターはどうするの?」

「そうだなぁ。俺もヴァンパイアシティー再建の手伝いをするか」

「私も手伝う!」


 間髪入れずにそう声を上げるキャスに続いて。


『お供します!!』


 アーマードタイガー一同が声を揃えた。 

 もちろんミウも黙っていない。


「拙者達も手伝うでござる! ね、父上!」

「当然。拙者達はドラクル様の眷属。終生ドラクル様に仕える所存でござる」


 そんなウェポン族とアーマードタイガー族に、レオミアがボソリと呟く。


「しかし故郷に残してきた一族はどうすんだ?」

「もちろん呼び寄せまさぁ。女子供を里に残してきたのは、戦いでオレ達が全滅した時に一族の血を絶やさない為ですからね」


 即答するタイラントにマサムネも頷く。


「ウェポン族もでござる。ヴァンパイアシティーのすぐ横に、ウェポン族の村を作って一族を呼び寄せる所存でござる」

「ようし、じゃあミンナでヴァンパイアシティーを前よりもっと立派な街にしようぜ!」

『おう!』


 レオミアの掛け声にドラクルの眷属全員が声を上げる。

 そんな様子を微笑みながら眺めていたドラクルの肩を父がポンと叩く。


「ドラクル、とんでもなく高レベルの眷属達だな。まあ、ワラキアと獣王がいる時点で世界最強レベルなのだが。そんな彼らの主であるお前は、高位ヴァンパイアを超えた存在だ。こらからはヴァンパイアマスターを名乗れ。そして私の後を継いでヴァンパイアシティーの領主にならんか? 誰も文句を言う者はおるまい」


 そんな父にドラクルは苦笑する。


「今はまだ学生なんだから、とてもそんな事は考えられないよ。それに力だけで街は治められない事くらい俺でも分かる。もし領主になるとしても、もっともっと勉強してからだよ」

「そうだな、私とした事が少々舞い上がってしまっていたようだ。取り敢えずはヴァンパイアシティー再建に力を貸してくれ。その後、ユックリと時間をかけて考えれば良い。なにしろヴァンパイアには考える時間がたっぷりあるのだから」

「そうするよ」


 ドラクルは自分を見つめるキャス、ミウ、レオミア、マサムネ、タイラント、そしてワラキアを見回した後。

 小さく微笑んだのだった。




2020 オオネ サクヤⒸ

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