第二十一話 決着
無数の惑星を一瞬で滅ぼせるレベルの破壊力を持つガンマ線バースト。
ドラクルは、そのとんでもないエネルギーで体を強化した。
そんなドラクルの戦闘力を、誰よりも正確に察知したのがフーディンだった。
神を名乗れる力があるからこそ、余計にドラクルの強さを理解したのだろう。
「お、お、おい、何だよ、そのデタラメなパワーは……」
フーディンの顔が、今までの傲慢な顔から小心者の顔へと変わる。
「ウソだろ、おい! こんなエネルギー、神でも持ってねェぞ……」
立ち尽くすフーディンに、ドラクルは全エネルギーを込めた拳を振り上げた。
確かにフーディンは、この星の神かもしれない。
が、ドラクルが拳に込めたエネルギーは、この星すら消滅させるレベルだった。
いくら神を名乗ろうが、フーディンは所詮この星の上で生きている存在だ。
とても耐えられる破壊力ではない。
「覚悟しろ。お前にも終わりの時が訪れたんだ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! や、止めてくれ、オレ様の負けだ! な、な、何でも言うコト聞くから! だから、だから、だからぁぁぁぁぁ!」
情けない声で鳴き喚くフーディンに、ドラクルは拳を叩きつけようとした寸前。
ーー殺すな!
拘束するんだ!
ワラキアの声がドラクルの頭の中に響いた。
太陽の光で消滅したはずじゃ?
と不思議の思うものの、取り敢えずドラクルは、ワラキアの言う通りにする。
ボキン!
ドラクルはフーディンの左足を蹴り折り。
「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
悲鳴を上げるフーディンの右脚も蹴り折った。
「ひげぇぇぇぇぇ!」
ドラクルはフーディンの悲鳴を無視し、更に両手も蹴り砕く。
「ぎゃひぃぃぃぃぃぃ!」
そして悲鳴を上げるフーディンの背後に回り込むと。
ゴシャ。ゴシャ。ゴシャ。ゴシャ。ゴシャ……。
今度は背骨の1つ1つをパンチで砕いていく。
「……! ……! ……! …………!!」
どうやら、余りの激痛に悲鳴を上げる事すらできなくなったらしい。
が、そんな事を気にしてやる必要など欠片もない。
ゴキン! グシャ! メギャ! グチャン!
更にフーディンの両肩、両肘、両膝の関節も粉々に砕く。
そしてドラクルは、大きく脚を振り上げると。
「これで仕上げだ」
フーディンの骨盤をグシャリと踏み砕いた。
「ふん」
ドラクルは、もうピクピクと痙攣するだけになったフーディンを見下ろして呟く。
「こんなモンでどうだ、ワラキア? お前の分まで痛めつけたつもりだけど」
ーーチョットものたりないが、それでもスッとしたぜドラクル。
お疲れさん、とりあえずはこれでいい。
「そうか……さて、キャス達を助けないとな」
これから皆を槍から降ろして手当てをしなければならない。
もちろん生き血さえ飲めばヴァンパイアの怪我は回復する。
が、これほどのダメージから回復させるには大量の生き血が必要となる。
さて、どこから手をつけたらイイんだろう?
と考えを巡らせるドラクルだったが。
「え!?」
そこに目を疑うような光景が展開され始めた。
切り落とされたキャスの手足の灰が元の場所へと集まっていく。
そして両手両足が元の場所へと宙を飛び、元通りになる。
と同時にキャスは再生した手で槍をへし折ると。
「よっと」
地面に着地して、腹から穂先を引き抜いた。
その直後。
抜いた後には、もう傷など跡形もなかった。
それを呆然と眺めていたドラクルが声を漏らす。
「キャス?」
キャスは、まだ唖然としているドラクルの元にバヒュンと駆け寄ってくると。
「マスター!」
そのままの勢いで抱き付いてきた。
「マスター、マスター、マスター、マスター!」
その華奢な身体を抱き締め返しながらドラクルは尋ねた。
「元気になって良かった! でも生き血も飲まずにどうして回復したんだ?」
ドラクルの質問にキャスが最高の微笑みを浮かべて答える。
「マスターから、神龍なんかとは比べ物にならないほど凄い力が流れ込んできたからだよ。だから、ほらミンナも」
キャスが言ったように。
ミウもレオミアもウェポン族もアーマードタイガー族も手足を取り戻して、槍から脱出していた。
どうやら全員が神龍すら超えるほどの力を得ているようだ。
「そうか。俺はデイウォカーの本当の力に目覚める事により、ガンマ線バーストのエネルギーを吸収して
フーディンすら超えるほどの力を得た。だからその影響でミンナも神すら超える力を手に入れたんだな」
呟くドラクルにキャスが再び抱きついて囁く。
「もう駄目かと思って怖かったよ、マスター」
ドラクルはそんなキャスを、再び優しく抱き締める。
「ああ、俺もキャス達を失うのか、と、凄く怖かったよ」
「マスター……」
ドラクルの胸に顔を埋めるキャスだったが、そこに。
「独り占めはダメでござる!」
「アタシもギュっとする!」
ミウとレオミアが体当たりといってもイイくらいの勢いで抱き付いてきた。
更に。
「真祖様」
「ドラクル様」
3人にしがみ付かれたドラクルの前に、タイラントを先頭にしたアーマードタイガー族とマサムネを先頭としたウェポン族が整列する。
そんなウェポン族とアーマードタイガー族にドラクルは頭を下げた。
「ミンナありがとう。何とかフーディンに勝つ事が出来たよ」
感謝の言葉を口にするドラクルにキャスが聞いてくる。
「で、これからマスターはどうするの?」
その質問に答えようとしたドラクルの頭にワラキアの声が響く。
ーーミドラスの俺の城に行け。試したい事があるんだ。
ワラキアの声はドラクルを通して全ての眷属に聞こえたらしい。
レオミアが即座に大声を上げる。
「ワラキア!? 一体どうして……」
ーー話は後だ。
とにかくミドラスへ俺を連れてってくれ。
フーディンと一緒にな。
「フーディンと一緒に? どうして?」
そう尋ねるレオミアにワラキアが頼み込む。
ーー俺も確信があるワケじゃないから今は詳しく説明できない。
だけど、大切な事なんだ。
頼むよレオミア、オマエからもドラクルを説得してくれ。
「ドラクル……」
レオミアがワラキアの言葉を聞いてドラクルを見上げる。
「分かってるよレオミア。俺もワラキアの言う通りにしようと思ってたとこさ。だからミドラス帝国に今から行こうと思う」
「じゃあ、さっそく出発しよ!」
そう言ってキャスがドラクルの右腕に抱き付いてくる。
「そうでござるな、さっそく出発するでござる」
すかさずミウがドラクルの左腕に抱き付く。
「え、いいのか? もう戦いは終わったんだから、2人共、自分の故郷に帰っていいんだぞ?」
ドラクルの言葉にキャスもミウも首を横に振る。
「ワタシはマスターの眷属。これからもずっと一緒だよ!」
「拙者も終生、ドラクル殿の傍を離れないでござる」
キャスとミウの答えにタイラントとマサムネも頷く。
「もちろんオレ達もでさぁ」
「1度主と認めたら、生涯をかけて尽くすのがサムライでござる」
そしてウェポン族とアーマードタイガー族も全員がドラクルに膝を突いた。
『我らも同じです!』
『マサムネ様の言葉通りでござる!』
「ありがとう。じゃあミンナでミドラス帝国の城へと向かおう」
フーディンすら超える力を得たドラクル達にとって、ワラキアの城までなどはあっという間だった。
ちなみにフーディンによって魅了された神化兵の暗示は解いておいた。
やがてミドラス帝国に戻ってくるだろう。
ーーオレの玉座の後ろを探してくれ。
壺がある筈だ。
ワラキアの指示で捜してみると、確かに壺が見つかった。
その数500。
「これは?」
尋ねるドラクルにワラキアが重苦しい声で答える。
ーー高位ヴァンパイアの灰だ。
恨み重なるヴァンパイアシティーの住民ではあるが、万が一に備えて灰を集めさせておいたのさ。
「万が一? 神化兵に心臓を食われて灰になったらもう2度と復活できないのに」
ドラクルはソウディーの時の事を思い出して尋ねる。
ーーああ、普通ならそうさ。
でも世界中で好き勝手に暴れられるほど超越した力を持つ神龍の生き血だったらどうだ?
「! なるほど、試す価値はありそうだな」
ドラクルがフーディンへと振り返る。
その目に宿った冷酷な光に、フーディンが悲鳴を上げる。
「お、おい、そんないい加減な理由でオレの生き血を搾り取る気か!? や、やめろ、そんなコトしたって無駄だ! やめてくれぇ!!」
ーーこの為にお前を生かして連れてきたんだ。
それにな、最初からお前を生かしておく気なんかない。
ドラクルはワラキアの声が響くと同時に左手で、フーディンの首をギリギリと握り掴んだ。
「ミンナ、壺を1列に並べてフタを開けてくれないか?」
ドラクルの言葉通りに、眷属205名が一斉に動く。
「ありがとう」
ドラクルは礼を言うと、フーディンを引きずって、壺の前に移動する。
「や、やめろぉおおおおおお!」
「うるさい」
ドラクルは右手に刃を出現させると、泣きわめくフーディンの首に添える。
「ひぃ! やめろ! やめろぉおお! やめてくれぇぇぇぇ!」
その言葉を最後にフーディンの首が宙を舞った。
と、同時にフーディンの体が、元の体長50メートルの神龍へと戻る。
「さあ、どうなる……」
ドラクルはフーディンの身体からあふれ出る血を壺へと注いでいった。
「……生き返ってくれ」
全ての壺にフーディンの生き血を注ぎ終わったドラクルが、いやドラクルと全ての眷属が見守る中。
バリンバリンバリンバリンバリン…………!
500個全ての壺が割れ散り、そして高位ヴァンパイアが姿を現した。
何が起こったのか分からないのだろう。
顔を見合わせている彼らに、ドラクルは大声を上げる。
「ワラキアの問題は解決しました! もう何の危険もありません!」
ドラクルの説明にホッとした表情を浮かべると、高位ヴァンパイア達は用意されていた服を身に着ける。
中々細かい事まで配慮してるんだな。
とワラキアに感心するドラクルの元に、モーリアンが駆け付けて来た。
「ドラクルが助けてくれたのね! ありがとう!」
と同時にドラクルの肩を叩く者が。
「ああ、ありがとなドラクル」
「ソウディー!?」
驚くドラクルの頭にワラキアの声が響く。
ーーああ、オレが灰を集めておいた。
「……ありがとう、ワラキア」
と、そこに。
「「ドラクル!」」
更にドラクルの名を呼んで抱き付いてくる者が。
「父さん!? 母さん!?」
「お前だけにワラキアとの戦いを押し付けてしまったな。済まなかった」
「やっとあなたを抱き締める事が出来ます。やっと何の心配もなく、あなたを我が息子だと自慢出来ます。今まで辛い想いをさせました。ごめんなさい」
「父さん、母さん……」
ドラクルも両親を抱き締め返す。
「父さん、母さん、事情はもう知ってるから……父さんと母さんの気持ちは分かっているから……」
感極まって言葉を失うドラクルを眷属達が取り囲む。
「よかったね、マスター」
「よかったでござるな、ドラクル殿」
「よかったッス、真祖様」
「一件落着でござる、ドラクル様!」
こうしてドラクルの戦いは終わったのだった。
2020 オオネ サクヤⒸ




