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調査クエストー教会ー ②


 教会の地下は明かり一つない真っ暗な空間でややかび臭いにおいが漂っている。持ってきたランタンで明かりを灯すと細長い通路にいくつもの小部屋があるような構造をしているのが分かった。

 部屋の一つを覗く壁は漆喰のようなもので壁を補強していたのか若干白っぽく、棚と机とベッドのようなものが配置されしきりを挟んでトイレでもあったかのような跡がある。つまりは簡易的な居住スペースであり、他の小部屋も使われた形跡のあるランプや折れて倒れたカバン掛けがあったりといった備品の些細な違いはあるが概ね同様の構造になっている。


「どこもここも同じ部屋……。なんというか牢屋のような、いやこれは地下シェルターか?」

「キョースケはここに来るの初めてだから分からないか。」

「ここはかつての大戦の時に市民を匿うために作られたとされている簡単な居住空間ね。」


 響介の疑問にレオナが答えそれにミサキが続く。スタティエンテの巨壁もそうだがここ周辺は戦争の時に作られたものが遺跡化しているものがほとんどだ。そしてここも例外ではない。見た目こそ教会の形をしているが、実際は今は亡き大国に住まう人々を匿うために偽装して作られたものである。教会の屋根や壁の一部がなくなっているのもその戦争での爪痕なのだ。


「でもそれを考えると多きな国に住む人をかくまうための居住空間が地下二階までしかないっていうのはおかしくないですか?」

「まあな。他にも似たような施設が散在しているがここまで小規模なのは他にないからな。だから前々から隠された地下があるんじゃないかっていう噂があったのさ。」

「なるほど。でもそれじゃますます見つけにくいじゃないですか。さんざん探されてるわけでしょう?」

「ま、最悪床壊せばなんとかなるでしょ。」

「(そんなんでいいのか?)…そんなんでいいのか?」


 つい心の声が漏れる響介。気づくと地下一階の端まで来ていて、目の前にはいびつでなんとも降りにくそうな階段があった。


「良いわけありません。」


 階段を降りつつミサキが言う。


「いくらギルド側が確信を持ってると言ってもまだ地下空間がある"かもしれない"の段階よ。それなのにギルドが推奨してる初心者用ダンジョンを破壊して結果なにもなかったらあなた責任とれるのかしら。」

「それ言われちゃうとなんにもできないってー。」


 階段を下りきると一階と何ら変わらない光景が目の前に広がる。これでモンスターもほとんど出ないと言うのだからもはや新人冒険者用というよりは肝試し用のダンジョンと言っても差し支えないのではと響介は思う。


「━━ていうかレオナさんが床破壊して床に大穴開けられるのは誰も否定しないんですね」

「「「え、なんで?」」」


 3人揃って立ち止まり疑問を口にされてしまっては理由も聞くに聞けない響介は引きつった笑いを見せてそそくさと一階同様の一本道を進んでいく。

 しばらくすると再び突き当りに付いたがそこには階段ではなく両開きの扉があった。他の小部屋とは明らかに作りが違い、その扉も他のものより豪華な作りであまり朽ちていない様子も見えない。それを不思議に思った響介が無造作に扉を開けようとするのをレオナが抑える。


「この先は食堂のような大広間だ。唯一モンスターがいる可能性がある場所でもある」

「私とレオナで先に入るからクオンは敵が飛び出して来た時のために彼を守ってあげなさい」

「ミサねえ了解!」


 クオンはそういうと響介を通路の真ん中にいると飛び出して来た時にそのまま攻撃されて危ないからと脇にいるよう指示する。二人の動きを確認したレオナはミサキと目を見合わせた後ゆっくりと片方の扉を開ける。きぃっと小さく音を出してわずかに開いた隙間から中の様子をうかがう二人だが安全だと判断したのか手をこまねいて響介たちを呼び大部屋に入った。

 部屋の中に入ると広さもそうだが壁は漆喰ではなく元の地肌が丸出しで急ごしらえな印象があり、柱があったり木の床があったりと小部屋と明らかに違う構造になっているのが判る。周囲を見ると床同様朽ちていたり何というか人の手で掘られた洞窟の隠れ家という例えがしっくりくる。また足が折れたりといった長机が複数あることから主に食堂として使われていたのだろうか。そして中央にはどうやってここまで運び入れったかわからない大きな人型らしき銅像が佇んでいて何というか不気味で落ち着かない印象だ。


「一番可能性があるのがこの部屋よね。唯一床がしっかりとあるわけだし隠し階段とかあってもおかしくないわ。」

「でも前来た時と違って随分と床の木材が朽ちてるな。一部地面がむき出しになってるところもあるし。」


 そう言われて周囲を見るとところどころ床の木材が朽ちて下の地面が見えているが、床の地面が見えている時点で可能性があるのはやはりあの銅像である。大きな像を動かすと下に隠し階段があるというのはテッパン中のテッパンだ。響介はそう思うが早く銅像に近づいたが、近くで見るとやはりどのように入れたかわからない巨大さで一人で動かすには到底不可能だ。おまけに床を見ると床がすり減っていて数人がかりでやったのか何度も動かした跡があった。銅像をまじまじと見る響介に近づいたミサキが言う。


「まあ銅像の下にっていうのは結構ありきたりですけど確かそこの下には何もないのよね。」

「ていうか誰かがこの銅像を動かしている音が怪奇現象の正体だったりして」


 ミサキの言葉を聞いて軽くショックをうける響介に追い打ちをかけるクオン。しかしこれより下の階が現状見つかっていないことを考えるとこの程度のありきたりなパターンではないのは確かなのでクオンの言っていることの方が現実味があるのは事実だ。もっとも単体でこの巨大な像を動かせる存在がいるのであればそれはそれで問題ではあるが、床の状態と調査内容を擦り合わせるとその可能性はないとレオナは言った。


「とりあえず現状手掛かりはないって感じかしら?」

「うーん」


 それを聞いて響介は再び周囲を見渡す。すると入った時には銅像で見えなかったが、4人が入ってきた扉の正反対の位置にも小さな扉――といっても小部屋のものよりはやや大きくしっかりとした作りのものである――があるのが見えた。周囲を見る限りこの部屋は普段食堂として使われていたので、おそらく扉の先には調理場だったりがあるのだろう。

 しかしこの部屋にはそれだけでなくギルドの多目的ホールを兼ねた大広間に近い雰囲気を感じていた響介にはその小さな扉の位置に違和感があり、そばにいたミサキにたずねる。


「あの扉の向こうって何があるんですか?」

「あの部屋は調理場ね。ここは普段食堂として使われていたそうだからあそこから料理を配膳していたんじゃないかしら。」

「そうですよね。うーん…。でも普通だったらそういう扉って隅によってませんか?壁に絵を飾ったりとかするにしても中央にどんと設置するのはなんか違うというか…。」

「それは面白い着眼点ね。つまりは別の理由あってあの位置に扉があると。」


 そう言うとミサキは手を口元に宛て周囲を見ながら思案にふける。そして二つの扉と銅像をみて何かに気が付いたのか、「もしかして」とポツリとつぶやいた。


「何かわかったのか?」


 手がかりを見つけたであろう小さな声にレオナが飛びつく。ミサキは少し黙り考えを整理したのちゆっくりと話し始めた。


「はがれた床を見て、よく見ると見ると部屋の四隅が小部屋と違って丸まっているの。そして二つの扉と銅像の配置が一直線になっている。それで私が考え付いたのはここが本来は広いスペースにする予定じゃなかったってこと。ここも元は他同様通路と小部屋だった。二つの扉は通路だた場所に設置されていて、それをごまかすためにこんな大きな銅像が部屋の真ん中にあるんじゃないかしら。」


 要はもともと地下一階と全く同じ構造にする予定だった。しかし何らかの理由でここを急に突貫工事で広くなるように削ることになったため、四隅が丸まっててどことなく洞穴のような印象を感じさせているのだ。もしそうだとすればこの教会地下が他の似た施設と違って地下二階までしかないことのつじつま合わせにもなる。その理由の答えになるものがもともと通路だったとされる調理場にあるのは間違いなさそうだ。

 ミサキの考えが今回の調査の第一歩になると確信した一同は調理場に向かう。部屋に入ると扉の正面にはほとんど剥げているがタイルが付いているシンクと手漕ぎの大きなポンプがあり、右側には棚がいくつか並んでいた。左手には何もないが腰より少し高いぐらいに地面が盛り上がっていて、通気口のような穴が上に穴が開いているのでここで調理をしていたのだろう。


「これって確か井戸とかに使われているでかい蛇口ですよね。昔からあるやつ。」


 響介はそういいながら手漕ぎポンプを何回か動かしてみるが水が出る様子はない。もともとは水が出ていたが枯れてしまったのだろうか。


「でもこれがあるってことは穴を掘ったってことですよね」

「しかも扉の真正面。これはビンゴだな」


レオナは響介に同調しながら右手のひらを上に向けてそこに少しばかり意識を集中させる。すると光り輝く球体が発生してランタン以上に部屋を明るくする。


「みんな少し離れて」

「ちょっとレオナ!本気で壊すの?」

「それしかないだ、ろ!」


ミサキは少し焦った様子で注意するが、言うが早いかレオナはシンクに向かって光球を投げつけた。


ドォン!


 と豪快な音とともにシンクは爆発し待った土煙で視界が覆われる。しばらくして煙が収まるとシンクは粉々になりそこには穴が現れた。


「本当に壊すなんて!」

「でもほら見なって。ちゃんと穴空いてるぞ」

(ホントに破壊できるなんてすごいなこの人…。いや、俺の感覚が追いついてないのか?)


 ミサキとレオナのやり取りを聞きつつそんなことを考えていた響介もつられて穴の中をのぞくと井戸用に開けたのとは少し雰囲気が違い大きくかつ四角く丁寧に掘られていて、壁側をよく見ると一回から二階にあったのとよりもさらにいびつな階段があるのが見えた。そこの方はやはり完全に水が枯れているのか光が反射する様子がないが、横穴らしきものがあるのが確認できた。


「よし、さっそく降りてみよう」

「じゃあクオン。さっきと同じで私たちが先に行くからキョースケ君のこと守ってあげてね」


 クオンが快く返事をするとレオナとミサキは下に降りて行った。少しすると下の方から安全を知らせる声がかかったが、身のこなしがおぼつかない響介は足場が悪すぎてまともに下りられなかったのでクオンに介抱され、顔を赤らめながらゆっくりと降りて行った。

 



 降りた先の雰囲気は教会地下の居住地のそれとはとは全くかけ離れていた。人の手がかかっているが明らかに教会よりも古く、整備された通路の固い壁には一部の倒壊して行く手を阻んでいるものや、完全に風化していて元の地肌と変わらなくなっていたりもするが、何かが掘りこまれていている。また壁は精密に模様を彫り込んである群青色の柱で区切られていてかなりの異彩を放つ遺跡が広がっていた。

 初めて見る世界に少し煽情的になっている様子のレオナは、響介達を置いて先の方まで歩きながら周囲一帯を見渡しつつぽつりと言う。


「壁もそうだが床も結構もろくなってるな…。それにしてもこれが教会地下が二回までしかない理由ってやつか。とてつもないものが隠されてたんだな。」

「ミサねえすごいよ!地下にこんな遺跡があったなんて!ちょっと崩れたりしてるけどここ最近手を付けられたような形跡がないし、お宝とかがあってもおかしくないよね?」

「お宝?!」


 興奮気味のクオンが発したお宝という単語に響介も対反応してしまう。少なくとも教会の地下から今まで誰も来たことがないのだから財宝の一つや二つあってもおかしくはない。トレジャーハントなんてまさしく冒険らしいことではないかと響介は興奮を隠しきれないで目をらんらんとさせた。しかし、


「うわ!」

「なに?!」


 響介とクオンは驚いた声を発する。ズンッ!と突然縦に大きく揺れると地響きとともにもはや立ってられないほどに周囲一帯が激しく揺れ始めた。壁が崩れ柱も倒れるほどの危険な状態だ。レオナはこれがギルドでの報告にあった地響きの正体なのかと考え、それにしては大きすぎると思考を巡らせる。

 

「おまえら気をつけ―――」


 仮にそうだとしてもと、この強さのゆれに自然の驚異とは全く異なったかなりの異常性を感じざるを得なかったレオナは、階段付近で伏せている三人に注意を呼びかけようとしたとき――


「は?」


 三人は驚愕し、響介に至ってはは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。なんと地面がばっくりと割れ足元には大穴が出現したのだ。それを見たレオナもあまりに突然すぎる衝撃の光景に思わず目を丸くしている。床がもろくなっていたとはいえ何の前振れもなしに地面が割れるとは考えもしていなかったのだ。


「きゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 クオンと響介は叫び声を上げ、ミサキは顔を真っ青にして闇の中に吸い込まれていった。




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