力量(ルノ)
僕たち第2試験小隊は宿舎の近くの訓練場へと来ていた。ここは試験小隊のための訓練場であるため規模は小さいが他の騎士に専有される心配はない。その上今日は皆が顔合わせの為僕たち以外の試験小隊はここに来ていなかった。
まさか本当に組手をすることになるとは思わなかったが、リザも僕の実力を見たいと言い出したためこうして訓練所に足を運んだのだ。
「試合は実践形式。ルールは入団試験と同じです」
試合を取り仕切るのはリザだ。リノは少し離れたところから見守っていて僕とルノは既に向かい合っている。ルノは武器を見せないような構えだが見えないというだけで小型のものであるのは間違いないだろう。
張り詰めた空気が空間を満たす。
「始めッ!」
リザの声に合わせて動いたのはルノの方だった。僕は相手の武器が分からない以上は先手を取るわけにもいかない。ルノは体の影に隠すようにして右腕を大きく振りがぶった。
(投擲武器ッ!?)
僕は慌てて姿勢を低くして避けるがバランスを崩してしまう。その瞬間目に映ったのは僕の後ろに向かってルノの手元から鎖が伸びている光景だった。瞬間的にまずいと察知した僕の体から汗が吹き出る。僕は無様に転びながら横へと逃げる。次の瞬間さっきまで僕のいた場所を刃物が通り過ぎる。
「今の避けるなんて流石だな!」
「これを避けたって言えるならね」
僕は立ち上がりながらルノの武器を見る。それは鎖の先に鎌がついた武器だった。今まで見たことがない武器ではある。おそらくルノが上位に食い込んだのはあの武器を選んだというところも大きいだろう。
「でも次はそうはいかないぜ」
そう言いながらルノは今度は鎖の端の方を振り回し始める。よく見ると先に重りがついてるようだった。予想外の事態に対応するために僕は抜剣して警戒する。ルノは勢いをつけた鎖を投擲する。僕はそれを軽々避けて距離を詰めようとする。前に重心を動かそうとした。その瞬間、グイと体を引き止められる。
「剣が!?」
鎖に剣が絡め取られていたのだ。必死に焦りを噛み殺してどうするかを考える。簡単に解けるような絡み方ではない。考えるまもなく今度は鎌を手にしたルノが一気に距離を詰めもらったとばかりに鎌を振り下ろそうとする。普通剣の自由を奪われ距離を詰められたら武器を手放し距離を取るのが妥当な動きだろう。だが僕はあえてそのまま焦ってその判断ができないフリをした。
極限まで集中する。鎌が頂点まで振り上げられる。まだだ。そしてそのまま振り下ろされる。それでもまだ。鎌が半分以上振り下ろされて相手が油断した瞬間。ここだ。僕は左手で逆手に鞘を全速力を以て振り上げる。完全に勝利を確信していたルノの鎌は簡単に弾き飛ばされる。僕は剣を手放しそのまま右手で空中に打ち上げられた鎌を掴んでルノの首筋につきつけた。
「勝者、ユーイ」
リザは静かに勝者を告げた。




