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幼き日

ユーラスト歴469年



「おい、早くしろよユーイ」

髪をかきあげたようなオールバックの少年が話しかけてくる。彼は友人で幼馴染みのルイス・トイストル。今日は2人で剣の鍛練をする約束をしていたのだ。僕は少しだけ寝坊をしてしまい、彼は若干苛立っている。いつもはこの程度の事じゃ怒ったりはしないが、今日は僕がいつもより早く鍛練をしようと提案したのだ。いつもより2時間早いと彼も大変だったろうに僕は寝坊をしたのだ。怒るのも無理はない。

「ごめん、今行くよ」

僕は訓練用の刃引きされた剣を手にとり外へ出る。この剣はルイスの両親が息子のついでにと作ってくれたものだ。

トイストル家は長年続く名家で王からも認められる程だ。ルイスの父親は今や騎士団長を務める程だ。それに比べれば僕の家-ルクス家は貴族の中でも下の方で家系のおかげで貴族の座を保っているだけだ。それでもトイストル家は僕の事をルイスの友人だからといろいろと世話をやいてくれる。

僕は剣は持っていたものの、自分に合った剣を作るのにお金をかけすぎて鍛練用の剣を作れなかったのだ。だがルイスの両親は息子の鍛練の相手にと鍛練用の剣を僕にくれたのだ。しかも既製品ではなく僕の剣とまったく同じ重さと形の物を。それ以来ルイスの両親には頭が上がらない。

今日の鍛練は、お互いの成長を見るための組手だ。現在2人とも13歳で、まだ成人していないが2年後には騎士団の入団試験を受けられる。それまでは鍛練を怠ることはできない。2年前、僕達は必ず一年目に入団することを決意し約束した。その約束を果たすのが目下の目標だ。

城壁から出て少し離れた森林についた。この森林のほぼ中心に開けた、しかも誰も来ない場所がある。鍛錬を行うにはうってつけの場所だ。

この場所につく頃にはルイスのイライラもおさまっていた。

「それじゃあすぐに始めるぞ」

ルイスは早速始めようと剣を取り出す。僕もそれに倣って剣を用意する。

僕たちの鍛錬では今までは定期的に組手をやって他の時は自分にあった型の研究をしたり、素振りをしたりしていた。今までは組手にしても、あまり効果が出ないと思っていたからだ。今日は定期的に行っている組手とは違い、体術ありの完全に実戦と同じ形式の組手を行う。

僕はルイスと少し距離をとり剣を構える。ルイスは近くにあった石を拾うと真上に投げた。これが地面についた瞬間が組手の開始の合図だ。

石が地面に落ちる。

それと同時に僕は体を半歩前に進め、剣を横薙ぎに振った。しかしそれは嫌な金属音を響かせながらルイスが縦に構えた剣にそれは弾かれてしまう。でもここまでは概ね計算通りだ。初撃が決まるなんて思っていない。ルイスはそのまま僕の力を受け流しながら利用し回転しながら横薙ぎの一撃を放ってくる。

ルイスの剣技はカウンター重視のバランス型だ。どの流派にも所属していない完全な我流で、それは名家の出身では珍しい。

そして相手はカウンターが得意なのだからただ剣を振ったのでは返り討ちにあうのは必至だ。だから最初の一撃はそもそも様子見で、重心移動をほとんどしていない。

ルイスの一撃は明らかに必殺を狙ったものだった。それを僕は半歩身を引きながら鞘でその一撃の軌道をずらしながら避ける。

「!」

ルイスは驚いたような表情を浮かべて距離をとった。それはそうだ。これは僕がルイスに内緒で編み出した剣術だ。

僕の今までの剣術は完全にスピード重視のもので剣は薄く細かった。しかしそれでは相手の剣を真正面から受けることなど到底できない。そんなことをすれば剣が折れてしまう。だから僕は避けることを前提とした剣技を練習してきた。でもそれでは危うすぎると気づいて守りについて考えたのだ。最初は剣を厚みのあるものに変えようとも思ったのだが、それでは今まで通りの動きが出来なくなってしまう。そこで辿り着いた結論は守るための装備を別に用意することだ。出来るだけ自然にもとの動きに組み込むことの出来る装備。そして僕はそれに鞘を選んだ。だから鞘は鉄製の物に変えたのだ。そしてここからは鞘も戦術の一部として使う。

「驚いたな。お前が新しい技を身につけているとはな。でも、俺だってなにもしていなかった訳じゃないんだぜ?」

ルイスはそう言うと剣の鍔の装飾を外した。そして一度思い切り縦に振った。すると機械音をたてながら剣の形が変わった。刃幅も間合いも中距離のミドルソードが刃幅が減り間合いが役1.5倍のロングソードへと形を変えた。流石にそれに僕も驚いた。

「その剣は買ったのかい?それにしては、僕はそんな物見たことが無いよ」

「ああ、これは買ったんじゃないんだ。俺が独自にパーツを組み合わせて作ったんだ」

なるほど、それなら納得がいく。ルイスは昔から機械いじりが得意だった。

それからはしばらく沈黙が続いた。

そして一陣の風が吹き抜ける。それと同時に僕たちは動いていた。ルイスがいつもはカウンターの姿勢を崩さないにもかかわらず、大きく踏み出し、変化した剣を振り下ろした。また僕は不意を突かれはしたものの、それを鞘で防ぐ。そしてそのまま剣を突き出そうとした。しかしその動きはルイスの剣によってはばまれた。ルイスの剣のロングソードになる時に可動した部分が分解し降りかかって来たのだ。そのまま態勢を崩された僕は敗北した。



「今回はいい勝負だったが、まだまだだな」

ルイスは汗を拭きながらそう言った。

「流石にあれは予想外だよ」

「ああ、あれか。俺も予想外だった。まさかこんな簡単に壊れるとは」

「え、じゃあ今のは偶然なの?」

「ああ、本当は角度が変わるだけのはずだったんだ。ちょうど相手の喉もとに剣先がくるように、な」

「・・・なんか随分仕掛けに凝ってるね」

僕は苦笑しながら言った。

「それが俺のやり方だからな。正面からやり合うのは性に合わん」

ルイスもまた苦笑しながら言った。

「だが、やっぱり組手は今日で最後にしよう」

「なんで?」

「2年後の入団試験の決勝戦。そこが俺たちの次の手合わせだ。分かったな?」

ようやくルイスの言ってることを理解した。つまり2年の間に決勝戦に勝ち上がれるだけ強くなって、そこで勝負をしよう、ということだ。僕は頷き彼と別れた。


次回投稿は12月4日(木)の予定です

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