白衣の天使の行方
「連盟に登録していない者が魔法を使ってないか、ですか?いいえ、最近はそのような事は起きていませんよ。確実に。」
魔法使い連盟に行った4人は、連盟の窓口の男の、その言葉にため息をついた。
「ただ、ちょっと不思議な事が」
おしゃべり好きなのか、窓口の男は話を続ける。
「かの有名な魔女のことは知ってますか?」窓口の男は4人に尋ねた。
知りたくなくても知ってる4人は頷いた。
「あの魔女が今、行方不明なんですよ。魔女の魔力を調べても、全然見つからなくて。殺されたのか、魔力を使わないように身を潜めているのか・・・皆疑問に思ってたんですよ。ところが、あの魔女、生きていたみたいで。最近、また魔力が見つかるようになってきたんですよ。ただ、魔力を使わないように、身を潜めていたみたいですね。理由はよく分からないけれど」
「ちなみに、魔女は今どこにいそうなのか、教えてもらうことはできるのだろうか?」カミルが尋ねた。
「個人情報なので教えることは出来ませんね」
「・・・実はあの魔女に僕たちは呪いをかけられたんです。呪いの解き方を知りたくて」アルフォンスがそう言った。
「ああ、よく聞く話ですね。ちなみにどんな呪いで?」
「最悪な呪いだ」とエアハルト。
「と、いうと?」男は興味津々に身を乗り出した。
「大事なあそこが不能になる呪いだ」とブルーノ。
ブルーノに非難の目線を送る3人。
「それは、残念でしたね。お辛いでしょう。ちょっと上の者と相談をしてきます」憐れなものを見る目で男はそう言い、どこかへ消えた。
しばらくすると、男がまた戻ってきてこう告げた。
「上から許可をもらいました。あの魔女は、現在、西の森にいます。あとは言えません。恨んでいても犯罪だけはされぬように。私たちの責任が問われるので」
「ああ、分かっている」
礼を言って4人はその場を去った。
“西の森”とは。
この国は森ばかりであり、王都から出ると森だらけだ。
東の森、西の森、南の森、北の森と称して地域区分をしているのだ。
カミルの診療所にあったのは“北の森”だ。
「やはりサヤさんが消えたのは魔女が関係してるのでしょうか?」アルフォンス。
「わからないが、手がかりがそれしかない」カミル。
「西の森に行って、隅から隅まで探してみよう」ブルーノ。
「魔女だとしたら厄介だな」エアハルト。
そうして4人は西の森へと向かった。
サヤは、洗濯物を干していた。
西の森にある秘境の村で暮らしていた。
サヤは相変わらず、物腰柔らかで笑顔でその村に溶け込んでいた。
しかし、サヤの笑顔が時々曇ることを、みじかにいた魔女ーーーキャロルは知っていた。
「何を考えてるんだ?」キャロルがサヤに聞く。
「色々、ね。心配してくれてありがとう、キャロル」サヤがそう言うと、キャロルはますます顔をしかめる。
「あの最低な男達のこと?とっとと忘れちまいなよ」
「そんな簡単には忘れられないわよ、楽しかったんだもの」サヤは微笑んでそう言う。
「フン、私とここにいるのが楽しくないってのか?」不貞腐れて言うキャロル。
「そんなことないわよ。キャロルといれて幸せ。それより聞き忘れてたけど、あなた今何歳でしたっけ?」
「数えるのをやめたよ。けどあんたが死んだのは28年前だ。その時は確か、22歳だった」
「50歳なの?全然変わらないわね」
「こっちからしちゃ、あんたも全然変わらないよ、サヤ」
「こんなに見た目が変わったのに?」
「魂までは変わらないさ。ああ、けど確かに見た目は変わったね。私は今のがいいよ」
「ありがとう」サヤは嬉しそうに微笑んだ。
「どういたしまして。さて、とっとと私の呪いを解いてくれよ」
「ふふ、いやよ」今度はいたずらっ子が浮かべるような笑みでサヤは笑った。
「まだなのかい。疲れたよ、早く元に戻してくれ」
キャロルは強気な美女の顔を歪ませて、肩を落とした。
「人に迷惑をかけた罰よ。しばらくそのままでいなさい」
「あれは、イライラして、ついやっちまったんだ。けど、ダメな奴にしかやってないよ」
「将来有望の若者を、殺してたのかもしれないのよ?」冷ややかな流し目をするサヤ。
「それは、悪かったと思ってる」
「じゃあ、しばらくそのままよ」
「イエッサー。ーーーー私のツェツィー」
サヤーーーいや、ツェツィーリアは、艶やかな笑みを浮かべた。