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十字架を架ける 【蒼碧の鎖-2-】  作者: 沖津 奏
第2章 影を知った
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09 裏と裏

 その日の夜、シアーズは甲板に置かれた大砲の上に腰かけ、ぼうっと海を見ていた。黒く深く、見ているだけで吸い込まれそうだ。空はよく晴れていて、星が霧のように細かく空できらめいていた。なんという非現実。

「シアーズ君」

 名前を呼ばれて振り返ると、リーガが酒瓶を持って立っていた。

「ここへ来た君の本当の目的を聞こうか」

「分かってんでしょ、船長」

 シアーズが笑う。リーガは樽を引っ張ってきて、その上に座った。

「親父さんの仇、ねぇ……」

「正解」

 だが迷っている。仇討ちなんて本当はやるだけ無駄な気もする。だって、本当に殺したのはリーガではないのだから。ではなぜ、俺はウィルのもとから逃げたのか。全てを捨ててまでここに居るのか。

 リーガがぐいっと瓶の中身を飲んだ。トプン、と液体のぶつかる音がした。リーガは酒瓶をシアーズに向け、飲むか、と聞いた。しかしシアーズは断った。今は飲みたくない。代わりに疑問を口にした。

「何であの時、親父を裏切ってローランドに味方した?」

 リーガは笑った。

「そりゃお前……俺は海賊だぜ。あの時はローランドが優勢だった……そして今回はお前の方に力があった、俺には分かる。勝つ方に味方して何が悪い?」

「海賊……ね……」

 小さな呟きが潮風に掻き消される。

「俺を殺すかい?」

 リーガがしわがれ声で訊ねた。シアーズは右手で瓶の蓋を弄びながら言った。

「あんたが俺を殺すなら、俺はあんたを殺すよ」

「殺す理由がない……お前は有能だ」

 シアーズとリーガの黒い微笑みが交差する。

「じゃあ、そういうことで……これから頼みますよ、キャプテン」


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