14 血塗られた弾丸
「君がこの船に乗って半年も過ぎた。以来、どうも海軍に出会う回数が増えた気がするのだが。君とローランドの計画か?気のせいであることを願うね」
シアーズは驚いた。何のことを言っているのか、本当に身に覚えがない。あの海戦でウィルとは別れたっきりで、今彼がどこにいるかすら知らないのに。それに、最初に計略ではないと判断したのはリーガ自身なのに。
「何をおっしゃいます!最初に言ったはずです。それに、何のために俺が身分を捨てたと思って……」
ああ、いつから俺はこんな海賊相手に敬語なんて使うほど落ちぶれたんだろう。なぜ今、ここで生きているんだろう。シアーズの頭を一瞬で複雑な感情が横切った。
リーガは振り向いて、いやらしく笑った。
「貴族は簡単に身分を捨てられないさ……。しかも、お前はロバートの息子。不穏分子は消すのが俺流だ。悪いが、死んでもらう」
そう言って挙げた右手には、単発の銃が握られていた。動けない。視線だけで、縛られたようだ。二人の間の空気が張り詰めた。
鈍い音が船内にこだました。
「海軍だ!武器をとれえ!」
外が一気に騒がしくなる。思わずリーガとシアーズも扉の方を気にかける。
「戦いたくなかったが……先に砲撃したのは向こうだ。倍返しにしてやれ。私はリーガのもとへ行く」
ローランド卿は部下に告げた。あのフランス訛りの英語を聞くのも嫌だったが、仕方ない。
「ちっ、この忙しいのにローランドめ……」
リーガが扉をちらっと見やり、いらついた様子で舌打ちした。
「さっさと死んでくれ!」
「キャプテン=リーガ!話がある!」
ローランド卿が勢いよく扉を開けた。その音に一発の銃声が重なった。ローランド卿は思わず固まった。逆光でよく見えないが、一人の男が立っている。その男の足元に目をやると、別の男が倒れていた。立っていた男がゆっくり歩いて来る。
「お久しぶり、ローランド卿」
シアーズが冷たく微笑んだ。




