15 闇へ
「リーガ……!」
ローランド卿は二、三歩歩み寄った。リーガは胸の真ん中を撃ち抜かれていた。無様にも大の字に寝転がっていた。辺りにじわじわと血が広がっていく。
「は……っ……俺も、年貢の納め時、てか……」
光の無い目を虚空に向けて、自嘲気味に呟いている。
「忘れたのか?あんたが俺を殺すなら、俺はあんたを殺す」
シアーズがリーガを見下ろした。汚いものでも見るかのような目。
「そうだった……かな……」
それだけ言うと、リーガは目を閉じた。それきり、動かない。ローランド卿は明らかに動揺していた。こいつが、本当に殺したというのか?まさか。戦いをあんなにも嫌っていたのに。以前、貴族同士のいさかいがあり、決闘になりかけた時でさえ、わざわざ仲介に入っていったこいつが。
「お前、本当にシアーズ……」
やっとのことで絞り出した言葉を、目の前の海賊は鼻で笑った。
「変わったか?ほんのしばらくの間に。俺は平気で人を殺せるようになった」
「じゃあ、やっぱりリーガはお前が……」
ローランド卿は少しずつ落ち着きを取り戻しながら、それでも震える声で呟いた。リーガに目をやると、少し前まで生きていたのに、まるで人形を見ている気分になった。
シアーズがほとんど囁くような声で言った。
「自分が生きるためだ」
どこかで聞いたことがある。ローランド卿の手が汗ばんできた。取り戻したはずの落ち着きは、また失われた。
「今ならお前の気持ちがよく分かる。だが事実は変えられない」
殺される――直感でそう思った。
「待てっ!」
ローランド卿は焦った声で叫んだ。シアーズは動きを止め、固まったままローランド卿を見つめている。
「俺はリーガと話すためにここにきたのだが……。シアーズ、もうこんな真似はやめて軍へ戻れ。私の下で働け」
シアーズはそれを笑った。
「お前正気か?死にたいのか?」
ローランド卿は焦りから、まくしたてるように喋った。
「違う!本国ではリーガは懸賞金がかかっていた。お前にかかるのも時間の問題だ!公賊でもいい、お前が軍に戻ると言うなら、俺が何とかして――」
「昔っからお前は俺に優しいよなあ、ウィル」
ローランド卿がびくっとする。
沈黙が流れた。張り詰めた空気の中で、お互いに微動だにしない。
「そうやって罪滅ぼしのつもりか……?」
静かな声。シアーズから軽蔑の目が向けられた。思わず下を向いて視線をそらす。
「お前になら殺されても構わない……」
「じゃあ、お望みどおり、殺してやるよ」




