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そうして案内された部屋は、とても豪華な一室だった。
バストイレ完備で大きなベッドとソファにテーブルが置かれている。
ネイトピア王国では、寝室とリビングは分けられているのが主流なのだが、こちらでは広い部屋に全てが揃っている事が普通のようだ。
「ここが2人の部屋だ」
・・・え?
そしてウィルフォードを見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ベティ?私達、まだ結婚していないし、用意してもらってなんだけど、別々の部屋にはならないのかしら?」
「別の部屋は止めた方がよかろう。
さっきマティニアに会ったのだろう?
いたく、エルの事を気に入っておったからな。
夜這いをされたくなければ、同部屋の方がいい」
そうベディニアが悩まし気に言うではないか。
私はその言葉に恐れ戦き『一緒の部屋にするわ』と伝えたのだ。
すると、ウィルフォードから悩ましいため息が聞こえてきたのだが、聞こえなかった事にする。
きっと私と一緒じゃプライベート空間がなくて嫌なんだろうけど、ここは我慢してもらいたい。
「では、旅で疲れているだろう?
少ししたら晩餐だから、それまでは部屋でゆっくりしているといい。話はまた明日ゆっくりとしよう。
もちろん、ラウルも呼んである」
そう言って『では、またな』と付け加えて退室して行ったのであった。
部屋には私とウィルフォード。
さっきから一言も話さないのだが、相当嫌なのだろうか・・・。
それはそれで傷付くのだが・・・。
そして、顔を見ると久しぶりに見る、しかめ面をしていた。
「・・・そんなに嫌なの?」
私は悲しくなり伏し目がちで聞いた。
「いや、そうじゃない。
嫌な訳がないだろう。
・・・ただ、俺の問題だ」
そう言って、バツが悪そうな顔をしている。
すると、部屋をノックする音が聞こえたのだ。
晩餐にしては早過ぎる。
そして、ウィルフォードが扉を開けると、マティニアが入って来た。
「二人は一緒の部屋なのか?
ふーん。別部屋を用意させようか?」
やばい!
ベティが言っていた事が本当になりそうだ。
するとウィルフォードが『間に合っている』と言ってくれたのだ。
「ほう。
お前達は既にそういう関係か?
まぁ、私はどっちでもいいのだがな」
とニヤニヤしている。
やっぱり私、この人ムリ!
顔はベティそっくりなのに、嫌悪感が半端ない。
そして、私はウィルフォードの後ろにピッタリとくっついたのだ。
「マティニア。
俺の婚約者に手を出したら、ただでは置かない」
「ははっ。そうか。
そこの娘、気が変わったら、いつでも来るといい。
可愛がってやる」
ギャー!!
鳥肌が立ってしまった。
私は『結構です』と間髪入れずに口から出ていたのであった。
それからはウィルフォードがマティニアを追い出してくれたのである。
「フェアリエル、大丈夫だ。
アリステリアスに滞在中は、俺やベティニアの傍から離れないで欲しい」
「うん。分かったわ」
その後は晩餐に呼ばれ、食事中もマティニアに変な目で見られるので、せっかくの美味しそうな料理も喉を通らなかった。
だが、晩餐は今日と滞在最終日だけだ。
それ以外は部屋食となる。
なんとか微笑みを絶やさずに終える事が出来たのであった。
【そして夜】
「ねぇ、ウィル?先に湯浴みする?」
「あー。
・・・行ってくる」
そう言って早々と行ってしまった。
ベッドが一つしかないから一緒に寝るのよね?
そう思うとドキドキする。
抱き締めるぐらいのスキンシップならいいわよね?
ウィルフォードも言っていたが、私だって触れたいと思っているのだ。
一人ドキドキしながら待っているとウィルフォードが出て来た。
いつもとは違い、ラフな姿に目が離せない。
こ、これはいけないわ。
緊張してしまう。
するとウィルフォードが『俺はソファで寝るからフェアリエルはベッドを使ってくれ』と言ったのだ。
へ?
期待していた自分に恥ずかしくなってしまった私は、すごすごと風呂場へと向かったのであった。
【ウィルフォード視点】
マティニアのせいでこんな事になるとは・・・。
アリステリアスへの滞在期間は一カ月ほどだ。
その間、同室が続くのだが我慢が出来るのか不安になる。
少しくらいならいいのでは?と思いはしたが、前回のように怖がらせる訳にもいかない。
大切だからこそ、無理強いは出来ないのだ。
『ふぅ』取りあえず、先に湯浴みを終えてソファで寝れば何とかなるだろうと思い、俺はバスルームを後にしたのであった。
そして、フェアリエルが湯浴み中にメイドを呼び、ブランケットをもらってソファに転がる。
湯浴み後のフェアリエルの姿を目に入れるのも毒なので、俺は寝たフリをした。
すると、バスルームの戸が開き、フェアリエルが出て来た。
目を閉じているからだろうか。
音が良く聞こえる気がする。
「あれ?ウィルはもう寝たの?」
と独り言が聞こえた。
その後、フェアリエルは部屋の灯りを絞り、俺の寝ているソファまでやって来て『おやすみ』と言い、頬にキスを落としてベッドへと戻って行ったのだった。
なんだ?今のは・・・。
・・・可愛すぎるだろ!
思わず目を見開きそうになってしまった。
そして暫くすると、フェアリエルの寝息が聞こえてきたのだ。
俺は仰向けになり、天井を見る。
・・・耐えられるのか?・・・俺。
そうして夜が更け、朝方になっても眠れないのであった。




