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【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
後日談

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11

そして、あれから私達は幾つかの国境を越え、アリステリアス王国へと入国する事が出来た。


時は(すで)に、出発から20日程経っていたのである。


景色も街並みも、そして気温や湿度も全く違う。

私達も持参して来た夏服を着ているのだ。


車窓から眺めると、牧場や畑が点在している。

あと少しで、ベティニア達のいる都市へ入るそうだ。


そうして、少しすると城壁が見えてきた。


・・・これが城塞都市。


重厚な門構えもさることながら、堅牢な城壁が街全体を囲っている。


どんな攻撃を受けても破壊できない。

そんな雰囲気を感じた。


そして、許可証を見せる事で難なく通過する事が出来た私達は、門から一番奥にある王宮へと進むのであった。


その道中、窓から見える景色に、ウィルフォードが色々と教えてくれる。


見慣れない食べ物や、工芸品、街並みなど、初めて外に出た子供の様に、アレコレと聞いてしまったのだが、嫌な顔せず、一つ一つ教えてくれたのだった。


そして、王宮の門を潜り、エントランスへ横付けした馬車から降りた私達に、使用人達が出迎えてくれたのだが、その人の多さに驚いてしまったのである。


え!?

すごくない?


人が列を成し、一本の道が出来ていた。

私は初めての事に狼狽えてしまったのだが、ウィルフォードを見ると、アルカイックスマイルを浮かべて、平然としている。


そのままウィルフォードがエスコートをしてくれるので、私も笑顔を浮かべて、それに応えたのであった。


そして一先(ひとま)ず客室へと案内され、準備が出来次第、アリステリアス王家の人達に謁見する予定だ。


お茶の準備をしてくれたメイドが下がって行ったのを横目に、私はウィルフォードに聞いてみたのである。


「毎回、あんな感じで出迎えてくれるの?」


「うん?

・・・ああ、そうだな。

どこの国へ出向いても、大体こんな感じだ。

まぁ、アリステリアスは大国だから、人数は他国とは比べ物にならないけどな。

それに今は王族扱いだが、婚姻して臣籍降下(しんせきこうか)したら、もっと落ち着くんじゃないか?」


・・・なるほど。

外交の(たび)にこうなのかと思ったのだが、違うようだ。


私はウィルフォードに『そうなのね。教えてくれてありがとう』と話し、そのまま他愛ない話しをしていたら、お手洗いに行きたくなってきた。


「あの、ウィル?

お化粧室に行く時間って、あるのかしら?」


すると、ウィルフォードは腕時計を確認してから『まだ大丈夫だろう。今、メイドを呼ぼう』と言うので、私は大丈夫と答えたのだ。


さっき案内された時に場所は把握している。

わざわざ、呼ぶ必要もない。

それに、知らない人に用を足すまで待たれるのも、なんか嫌だ。


私は『行ってくるわ』と言い残して、客室を後にしたのである。


そして、お化粧室へと向かう道すがら、さっきの光景が蘇った。


ウィルフォードが着けていた腕時計。

実は、私が誕生日にあげた物なのだ。


ネイトピア王国では、懐中時計しか見た事がなかったので職人の元へ通い、試行錯誤して作ったのである。


話せば長くなるので割愛するが、ウィルフォードは、とても気に入ってくれたようで、いつも身に着けてくれるのだ。


それを見る度に、私も嬉しくなる。


と、そんな事を考えていたら化粧室に着き、用を済ませて戻ろうと廊下を歩いていた、その時。


ベティニアが前から歩いて来た。


「ベティ!

久しぶりね。会えて嬉しいわ!」


私は嬉しくなって、駆け寄り、抱き付いたのである。

すると、ベティニアも抱きしめてくれたのだ。


そして、気持ちが落ち着いてから見ると、黒い髪が短くなっていた。


「あの綺麗な髪を切ってしまったのね」


すると、コクリと頷いたのである。


・・・あれ?

なんだか、違和感を感じる。

ベティって、こんなに大きくて硬かったかしら?


私は不安に思い、少し離れてまじまじと見た。

顔はベティニアで間違えない。だが、体格が違う。


・・・え!?だれ!?


とその時。

「なんだ、気付いたのか。残念だな」


すると、頭の上から男性の声がしたのだ。

見上げると、ベティニア(もど)きの人が続けて口を開いたのである。


「ベティニアの友人か?」


まさかの人違い!

私はすぐに謝罪をした。


「し、失礼致しました。ベティニア様だと思ってしまい、大変ご無礼な事をしてしまいました。申し訳ありません。

それと、ベティニア様とは友人として仲良くさせて頂いております」


ベティニアを呼び捨てにするこの人は、絶対に王族だ。


私は恐る恐る返事を待っていると『いや。良い思いをさせてもらったからな。だから、いい』と言った。


へ?なにを?


そう思ったのは束の間(つかのま)『名はなんと言う?』と聞かれ、口を開こうとした、その時。


「何をしている?」


とウィルフォードの声がした。

その声に思わず安堵(あんど)してしまう。


「・・・ウィルフォードか?

もしかして、お前が親善大使なのか?」


とベティニア擬きが私を通り越してウィルフォードを見つめていた。


「ああ、そうだ。久しぶりだな。

で、俺の婚約者になんの用だ?」


ウィルフォードは怪訝な表情で返している。


「お前の婚約者なのか?

だが、さっき私に抱き付いて来たぞ」


!?

間違えたって、さっき言ったじゃない!


私はウィルフォードに向き直り『ベティと間違えてしまって』と答えたのだ。


すると『コイツはベティニアの双子の弟だ。それより、いきなり抱き付くのはどうなんだ?』と眉を寄せて言われてしまったのである。


確かにそうだ。

久々に会えた事に嬉しすぎて、飛び付いてしまったとは言えない。


「ウィル?ごめんなさい。嬉しくて思わず。

・・・気をつけるわ」


私が謝っていると、ベティニアの弟が口を挟んで来たのだ。


「ウィルフォードの婚約者は面白いな。

私も、いきなり抱き付かれたのは初めてだよ」


と言って、ニヤニヤしてる。


ベティニアには悪いが、なんか嫌な感じだ。


そして私は、ウィルフォードの隣に移動しようとした瞬間、手首を掴まれた。


「私はマティニアだ。覚えておいて欲しい」


そう言い残して去って行ったのである。


それからは、ウィルフォードにコンコンと言い聞かせられたのだ。


最後には、知らない人には付いて行かない。


なんて、幼児に言うセリフまで頂いてしまったのである。


私は肝に銘じて、ウィルフォードに返事をしたのであった。


それからすぐに、謁見の準備が出来たと聞き、侍従の案内で謁見室へと向かう。


ここに入れば公式の場となるので、失敗は出来ない。


私達は親善大使として挨拶をしなくてはならないのだ。


深呼吸をすると、侍従が扉を開いてくれた。

私はウィルフォードにエスコートされながら歩く。


すると、本物のベティニアの姿が目に入ったのだ。

相変わらず元気そうで安心した。


そして、その隣にはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたマティニアがいる。


私はマティニアを見なかった事にして、国王と王妃に目を向けたのであった。


そうして挨拶を交わし、恙無(つつがな)く謁見は終了したのである。


そして、先程の客室で待っていると、ベティニアが会いに来てくれた。


「ウィルフォード、エル。

また会えて嬉しいよ。元気そうで何よりだ」


「ああ。ベティニアも元気そうだな」


私も『会えて嬉しいわ』と抱き付かずに返したのだ。


「積もる話もあるが、まずは滞在してもらう部屋へと案内しよう」


そう言って私達は客室を後にしたのであった。


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