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【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!  作者: こさか りね
本編

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33

時は少し経ち、剣術大会の日となった。


兄は準備がある為、先に出ている。


私は途中でメルティアとアグネスを乗せてから、会場へと向かう事になっているのだ。


そうして会場へ着くと、人の多さに2人とも驚いている。


今回は女性が多いわね。


「やっぱり、すごい人ね。席は前の方だから、行ってみましょう」


私はそう伝え、はぐれない様に2人の手を取り()()()()と進んで行った。


出場者の関係者席は前の方に区画が作られているのだ。


歩いて行くと、席には既に両親が座っている。

1番前の特等席で試合が良く見えそうだ。


そして二人と両親は挨拶をし、席に着く。


アグネスは『すごい熱気ね!女性の方が多くいる様に見えるわ』と辺りを見回し、興奮気味に話して来た。


「前回は半々くらいだったけど、もしかしたら、お目当ての人が、いるのかもしれないわ」


私が、そうアグネスに話すと、『アディエル様の出番はいつなの?』とメルティアが問いかけて来たのである。


「お兄様は三試合目に出るわよ。応援よろしくね!」


競技場を見ると、2つ横並びに作られている。一試合で4人が戦う事になるのだ。


そうして、一試合、二試合と続き、三試合目に入る前の小休憩(しょうきゅうけい)となった。


「すごい迫力だわ!気迫が伝わって来て、こちらも、手に汗握(あせにぎ)るわね」


アグネスは剣術が好きな様で、とても高揚(こうよう)している。


「模造剣と分かっていても、やっぱり少し怖いわよね。当たりそうになると、目をつむってしまうわ」


メルティアは余り得意ではないのだろう。

試合中は顔に手を当て、恐る恐る見ていたのだった。


私も兄の応援で何回も来ている。

だが、大人の大会は初めての為、その力強さに驚いたのだ。


因みに、出場するには、予選を突破した18歳以上の成人男性と決まっている。


小休憩が終わり、三試合目に入るアナウンスが流れて来た。


すると、兄が出て来たのだ。


と、その時。


【キャー!!アディエル様―!カッコいいー!!】


後ろから、大きな黄色い声援が飛んだ。


女性が多かったのは兄のせいか、と納得したのだった。


そして、メルティアを見ると、ビックリし過ぎて開いた口が塞がっていない。


私も、今更気付いたが、兄は途轍(とてつ)もない優良物件だろう。

公爵家嫡男・眉目秀麗・性格良しと来た。婚約者がいない事の方が不思議なのだ。


・・・メル、負けてはダメよ。


そう思いながら肩を叩く。

するとメルティアはハッとして私を見返した。

何を言いたいのか、伝わったのだろう。

メルティアは頷き、それから、兄の応援を始めたのだ。


審判が『三試合目を始めます。両者位置について下さい』そう言うと、周りが静かになり競技場へと目を向けた。


兄の相手は大柄で騎士の様だ。

そして、兄がこちらを見てニコリと笑ったのである。


と、その時。


始まった!


深呼吸をした兄は、構えもせず、全く動かない。

相手も、どうしていいのか分からない様だ。


時間が過ぎ、耐えきれなくなった相手が、兄に斬りかかって行く。

そして、兄は相手の剣を受け流し、胴部へと剣を叩き込んだのだ。


相手は余程痛いのか、(うめ)き声をあげて膝をついている。


10秒以内に試合へ戻れない場合は失格となる。

審判が数えるが一向に立とうとしない。


そして、10秒後


「勝者、アディエル・クリーヴランド」


その瞬間、地響きがするんじゃないか?と思う程の黄色い歓声が沸いた。


兄はそんな歓声をものともせずに、こちらへ向かって笑顔で手を振ったのだ。


そして、後で聞いた話だが、私達の席に近い女性が(私に手を振ってくれたんだわ!)と勘違いをし、失神した者が何人も出たらしい。


その後、失神したご令嬢からの釣書(つりしょ)が殺到する事になるのだが、それはもう少し先の話になる。



そうして、第一回戦目は終わったのだった。


勝者は8人。

ここから4人、2人と絞られて決勝となる。


二回戦目に入る前に休憩があるので、兄の元へみんなで行くことにしたのだ。


出場者には一人一部屋の控室が(もう)けられている。


「アディ、お疲れ様。次も頑張りなさいね。油断は禁物よ。応援しているわ」

「アディなら余裕だろう?優勝を取ってこい!」


母と父が控室で座っていた兄に話しかけた。


「ありがとう。もちろん頑張るよ。

みんなも応援ありがとう。

どうだい?楽しめているかな?」


兄は椅子から立ち上がり、私達の方に目を向け、笑顔で問いかけて来たのだ。


「はい。とても白熱していて驚きました!剣術がすごい物だと改めて実感しております。優勝、頑張ってください」


「ありがとう、アグネス譲。楽しめているのならよかったよ!

まだ、優勝までは長いが、応援よろしくね」


アグネスは『もちろんです』と笑顔で兄に伝えたのだ。

そして、頬を染めたメルティアが、兄に話しかける。


「あの、アディエル様。とても格好良かったです。頑張ってください。応援しております」


「ありがとう。メルティア譲にそう言ってもらえるなんて、嬉しいよ。

格好良い所をもっと見せられる様に頑張るから、最後まで応援よろしくね!」


その言葉に、メルティアは更に頬を染めたのだった。


そして兄は、これを()で言っている。

・・・なんて罪作りな人なのでしょう。


他の女性にも同じ事をしているのではないか?と、心配になるフェアリエルであった。


「お兄様。もうそろそろ始まりますよね?

私達も最後まで応援しますので、思う存分に楽しんでください」


「ありがとう。楽しんでくるよ!」


そう言って笑顔で手を挙げたのだ。


兄が剣術を始めたきっかけは【男らしくなりたい】だったが、今は違う。


剣術がとても好きなのだ。

生き甲斐と言っても過言(かごん)ではないだろう。


そうでなければ、雨の日も、風の日も、毎日続ける事はできない。

・・・だから、楽しんでもらいたい。


応援席に戻り、辺りを見回すと、人が減っていた。


・・・あれ?

後ろで、すごい声援を送っていた女性達がいないわね。

お化粧室なのかしら?

・・・もう、始まるのに。


すると・・・

「第二回戦目を始めます」

と、審判の声が響いたのだった。


お兄様の試合は最後だ。


競技場を見ていたら、後ろからゾロゾロと歩いて来る音がしたので、振り返ると女性達が戻って来る所だった。


間に合った様ね。

・・・けど、あれ?

さっきとは違う女性陣になっているわ・・・。


「一試合目を始めます。両者位置について下さい」


お兄様の出番ではないで、両競技場を行ったり来たりと見る事にした。


すると、気になる選手がいたのである。


・・・あの人、小さいわね。

成人男性には見えないわ。

それに、動きがとても機敏(きびん)だし・・・。

お兄様よりも小さいから、170センチくらいかしら?


この国の成人男性の平均身長は180センチ以上だ。お兄様も180センチはあると思う。

因みに、父は190センチ超えだ。


帽子を被っていて顔が良く見えない。


・・・気になるわね。


アグネスも気になった様で話しかけて来たのだ。


「あの人すごく素早いのよ!相手の攻撃が全く当たらないわ」


そうなのだ。回避力がすごい。

でも、相手をダウンか降参、又は、場外にさせなければ、勝利は得られないのだが、どうするのだろうか。


結構、時間が掛りそうな試合ね・・・。


とそう思っていたら、(こぶし)で相手の顔を叩きのめしたのだ。


!?

え?・・・剣は、飾り?


しかも、あの体躯では考えられない程の威力だ。

相手はそのまま吹っ飛び場外となった。


「勝者、アルマ・ニコネス」


「エル?剣を使わなくても良いの?」


メルティアが驚いて聞いて来る。


「剣技に伴う体術は、ありなのよ。

なので、剣を持ってさえいれば大丈夫なの。

・・・けど、私も初めて見たわ」


体術より、剣術の方が攻撃範囲が広い為、(みな)剣を使う。

なかなかに面白い戦い方をするものだ。

と思うフェアリエルだった。


そして、立て続けに二試合目が始まる。


お兄様が来たわ。


後ろからは、またしても、すごい声援が沸き起こる。

メルティアも負けじと応援していた。


アグネスは隣の一試合目がまだ終わっていないので、そちらを見ていたのだった。


兄がこちらに向かって笑顔で手を振ってくれる。


楽しんでいるわね。


とその時。


【バタン!バタン!】


え!?なんの音?


後ろから、もの凄い音がしたので、振り返ろうとしたら、『始め!』と審判の声が聞こえた為、意識を試合に戻したのだ。


次の相手は、兄と同程度の体格だろうか。

短剣を持っている。


・・・短剣?

体術を使ってくるのかしら?


兄は構えもせずに、相手へと近寄って行く。


相手も、普通にやって来る兄にビビリ気味だ。

とその時、相手が(ふところ)から何かを投げた。


手裏剣の様な円盤型の飛び道具だ。


兄は全く動じず、円盤を剣で叩き落したのだ。


・・・しかも、笑顔で。


相手は、さぞかし怖かろう。


だが、相手も負けじと、兄の懐へと入り込む。

その動きは速い。


でも、兄の方が上手(うわて)だった。

相手をかわし、剣を振り抜いたのだ。


それが、相手の腹に入った。

倒れてはいないものの、相手は審判にギブアップを伝え、試合終了となったのである。


多分。いや、絶対!

兄が怖かったのだろう。


笑顔の相手に、叩きのめされるのだ。

想像に(かた)くない。


そうして無事、準決勝へと進む事となったのだった。


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