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二試合しかしていない為、小休憩ののち、すぐに準決勝戦が始まった。
兄が左側で、さっきの小さい人が右側の競技場だ。
兄を見たいが、小さい人も気になる。
それに、兄の為に敵情視察もしたい。
どうしようかしら?
うーん・・・。
(考える事5秒)
いや、お兄様に敵情視察なんて必要ないわね。
と思い直したのだった。
そして、少ししてから、兄が笑顔で入場して来る。
今回の相手は剣を2本持っていた。
二刀流の様だ。
小さい人の相手は、どんな人かしら?
目を向けると、筋骨隆々の熊の様な人だった。
武器は両手剣。
・・・相性が悪そうね。
小さい人は素早いから、攻撃が当たらないんじゃないかしら?
そんな事を考えていると。
『始め!』合図が聞こえて、兄に目を向ける。
そこには、防戦一方の兄がいた。
メルティアは心配そうに見ている。
メタメタに打ち込まれているのだが、きっと、見て受けて学んでいるのだろう。
以前、兄が言っていたのだ。
自分が知らない剣技や戦法は、一度受けてみて、良い所は真似をするんだよ。
そうすれば、自分の剣技がより良いものになるだろう?と。
それから、少し経ち、兄が動く。
メタメタに打ち込んでくる2本の剣を逆に振り抜き、弾き飛ばした。
それに相手が怯む。
そのまま、反撃の余地を与えずに、相手の足を薙ぎ払い、後ろに転ばせて喉元に剣先を突き付けたのだ。
そうして、その後は相手のギブアップの声が聞こえたのである。
やっぱり、お兄様は強いわね。
・・・そうだわ!
小さい人はどうかしら?
見てみると、既に試合は終わっていた。
私は気になり『右側の試合は、どちらが勝ったのか分かる?』とアグネスとメルティアに聞いてみた。
すると、アグネスが答えてくれたのだ。
「私、見ていたわ。小柄な方が、一瞬で相手をのしてしまったのよ。すごかったわ!」
そんなに早く終わっていたのか・・・。
であれば、兄が打たれている間に見ていればよかった。
そう少し、心残りに思うフェアリエルだった。
その後、決勝戦に向けてのお昼休憩がある。
開始は二時間後だ。
会場には、飲食可能なブースがある。
会場で食べても良いし、会場外でもOKだ。
そして、私たちは外で食べる事となった。
私達3人と両親、兄の6名で近くの飲食店へと入る。
兄は本番前なので、フルーツとチキンサラダにパンと、軽い物を頼んでいた。
私達も各自メニューを見て頼む。
「これから決勝だが、調子はどうだ?」と父。
「そうだね。まだまだ大丈夫だよ。
だが、次の相手は少し厄介だね」
兄はパンを千切りながら、難しい顔で答えている。
そんな兄を見て、母が口を開いた。
「あら、アディがそう言うなんて、珍しいわね。余程の実力者なのかしら?」
私は、この会話に少し気になる事があったので、兄に聞いてみたのだ。
「お兄様は、その方の剣技を、いつ見たの?」
すると、何でもない事の様に兄が答えてくれた。
「うん?
・・・ああ。
さっきの試合でさ。大男を一撃で倒しただろう?
あの身体の何処に、そんなパワーがあるのかと思ってね。
通常、あの素早さで、あれ程の力が出るのは、考えられないんだよ」
・・・兄は、あんなに打たれていても、周りを見る余裕があったと言う事なのだ。
「まぁでも、強い相手と戦えるなんて光栄だよね!気負わずに楽しんでくるよ。
二人も、今日は付き合ってくれてありがとう」
そう言い、兄はメルティアとアグネスを交互に見た。
「いいえ、私が来たくて来たのです。
アディエル様が優勝する事を信じています」
「ありがとう、メルティア譲。そこまで言われると、優勝しない訳にはいかないね!
メルティア譲の応援は、毎回僕に届いているよ。次もよろしくね」
すると、メルティアはぷるぷると震えて、ギブアップ寸前だ。
あの大勢の中で、自分の声が聞こえている、と言われたのだ。
特別に想ってくれているのでは?と思ってしまっても仕方あるまい。
「私も良い体験をさせていただき、ありがとうございます。こんなに面白いとは思いませんでした。
知らなければ、人生の半分を損する所でしたわ」
人生の半分とは・・・。
アグネスは余程、良かったのだろう。
もしかしたら、お兄様に勝るとも劣らない、戦い好きかもしれない。
そうして、楽しい食事を終え、会場へと戻ったのである。
辺りを見回すと、後ろの女性陣が、また見慣れない方になっていた。
後ろの席は、よくコロコロと観戦する人が変わるわね。
と、そう思っていたら、始まりの合図が聞こえて来たのだった。
良く見ると、競技場の入り口に、兄と小さい人が立っている。
兄が何かを話しかけている様だ。
そうして、両者入場して来て位置に着く。
『始め!』審判の声が響き渡った。
両者、間合いを取る。
相手の出方を探っている様だ。
・・・そして、先に動いたのは兄だった。
肩を狙い振り抜いた剣を、相手は軽々と飛び越えたのだ。
なに!?あのジャンプ力は!
・・・人が成せる技なの?
メルティアもアグネスも驚いた様で、目がまん丸だった。
そして、兄の口が動いている。
またしても、何かを話しかけているのだろう・・・。
そこから、兄の猛攻が始まった。
速過ぎて剣筋が追えない。
そして一筋の剣が掠ったのか、帽子が破れて現れたのは、グレー色の動物の耳だった。
・・・あの形は猫かしら?
帽子の中に猫を隠しているとは考えにくい。
と、言う事は・・・獣人?
え?この世界、獣人がいるの?今まで、見た事も聞いた事もないわ。
・・・尻尾はあるのかしら?
と見ていたら、周りが騒ぎ出したのだ。
【頭から動物の耳が生えているぞ】
【きっと化け物よ!】
そうして、観客が口々に言い始め、収拾がつかなくなったのである。
その為、試合は一時、休止となったのだった。




