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今日から二週間のお休みです。
私はと言うと、まだベッドの上でゴロゴロとしています。
久々の朝寝坊よ!
・・・と、その時。
【トントントン】
部屋をノックする音が聞こえて来たのだ。
「お嬢様、もう朝ですよ?お仕度の準備に参りました」
サーシャが来てしまった・・・。
「サーシャ、まだ寝たいのよ。もう少し経ってからでいい?」
「今日は王宮での食事会になります。皆様、もう準備に取り掛かられておりますよ」
・・・・・・!?
「そうだったわ!大変じゃない!?すぐに起きるわ!」
「はい。それと本日のお召し物は、こちらのドレスで如何ですか?」
スプレーグリーン色のスレンダーラインでとても春らしいドレスだった。
「初めて見るドレスね。とても綺麗だわ」
「奥様が用意してくださったのです。こちらで準備を進めさせて頂いてもよろしいですか?」
「ええ。お願いね」
それからは手際よく準備をしてくれる。
髪型はアップだと大人っぽくなり過ぎるので、ハーフアップにしてもらい、毛先を巻いてもらった。
食事室へ行くと、みんな既に準備が終わって、軽食を取っていた。
「おはよう。寝坊したのかい?」
「おはようございます、お兄様。少し寝過ぎましたわ」
私達の様子を見ていた母と父が声を掛けてくれた。
「そのドレス、良く似合っているわ。本当に妖精の様よ」
「本当だな。ベルの見立ては間違いない!
王宮ではなく、みんなで何処かに出かけようか?」
「・・・あなた、それはまた今度にしましょうね」
母が父を窘めたところで、私は父に問いかけたのだ。
「もうそろそろ出かけますか?」
「そうだな。エルも、軽く何かを食べていきなさい。
馬車の準備をさせよう」
執事を呼んで指示を出す父。
その後、みんなで馬車に乗り王宮へ着いたのだ。
そして親族会の会場には、既に陛下達がいて父と挨拶を交わす。
「今日は、皆良く来てくれた。ゆっくりしていってくれ」
「ご招待いただき、ありがとうございます。お言葉に甘えて、楽しませて頂きます」
「ふむ。
それと、フェアリエルちゃん、待っておったぞ!
ウィルフォードとは仲良くやっているか?たまには、わしの所にも顔を出してくれたら嬉しいぞ」
陛下は私に笑顔で話し掛けてくれた。
確かに、王宮へ行っても王妃様とウィルフォードにしか会っていない。
「陛下、お言葉ありがとうございます。是非、今度お伺いさせていただきますわ」
「待っとるぞ。それにアディエルは随分と逞しくなったな。
どうじゃ?王太子の側近にならんか?」
だが、その言葉に父が反応した。
「陛下、アディエルはダメですよ。公爵家の跡取りとして、教育している最中なので」
「ベンジャミン、そう冷たい事を言うな。選択肢は、いっぱいあった方がいいじゃろう?」
陛下は、さも当然の様に勧誘してくる。
それに、父だけだと断り切れないと思った兄が口を開いたのだ。
「陛下、お誘い頂きありがとうございます。ですが、今は父に付いて学んでいる所なので、そちらに専念しようと思っております」
「そうか。では、気が変わったら、いつでも言うのじゃぞ」
それから、陛下の後ろには王妃と王太子、ウィルフォードがいた。
第二王子は留学先から帰って来なかったのだろう。
王太子妃は半年前に第一王子を出産している。
今回は産後の為、欠席との事だ。
その時、ウィルフォードと目が合った。
今日は紺色に金糸の刺繍がされているフォーマルスーツだった。
お互いに微笑み合い挨拶をする。
「ごきげんよう。ウィルフォード様」
「やぁ、フェアリエルは今日も美しいな。それと、いつもみたいに呼んでくれていいよ」
愛称呼びを提案してくるが、流石にみんなの前では恥ずかしいので辞退をしたのだ。
するとウィルフォードが拗ねる様に『そうか』と言い『では、一緒に庭園へ行かないか?』と、にこやかに誘って来る。
「はい。ご一緒致します」
そうして私とウィルフォードが部屋を出ようとすると、兄が話しかけて来たのだった。
「エル、どこに行くの?」
「ウィルフォード様と庭園へ行って参ります」
兄は一度、ウィルフォードへ視線を向けると、口を開いた。
「・・・そう。分かったよ。
ウィルフォード殿下、エルをよろしくお願い致します。」
「ああ。もちろんだ」
そして、ウィルフォードにエスコートをしてもらい、二人で庭園へと向かったのであった。
「今日から学園が休みでしょう。ウィルは何かするの?」
「特には決めていないな。君は?」
「私はね、来週アグネスの家に遊びに行くの。
とても楽しみだわ」
「それはいいな。楽しんでくるといい。
それと、気になる事があるんだが、アイディア帳に書いてあった【瞬間移動】とはなんだ?」
私は思い付く限りの事をアイディア帳の最終ページに走り書きをしているのだが、そんな所まで見ているとは思わなかった。
「そうね、簡単に言うと、王宮にいる私が、一瞬で自宅に帰れる事かな。
それがあれば、移動時間を気にする事はないでしょう?
・・・でも、原理が分からないので、作るのは不可能に近いけど。
ついつい欲しくて書いてしまったのよ。それにしても、よく見ているのね」
「ああ、君のアイディアは面白いからな。
・・・だが、なるほど。
確かに、あれば便利な道具だ」
そう言って、顎に手を当てて思案し始めている。
「実現出来ればよかったのだけど、これは難しいから、また違うのを考えてみるわ」
そろそろ親族会も中盤に差し掛かる頃だろう。
私達は会場へと戻る事にしたのだった。
会場からは楽しそうな声が聞こえる。
この一年間は色々と変化のあった年だったけれど、とても楽しかった。
また今年も、みんなが元気で楽しく過ごせるように、と願うフェアリエルであった。
【アディエル視点】
今日は年に一回の親族会だ。
王宮へ着き、エルとウィルフォード殿下が話している事にビックリした。
毎年二人は挨拶だけで、それ以外、互いに近づかない。
僕もだが、父も気が付いている。
・・・二人が上手くいっていない事に。
だが、今日の二人は全く違った。
仲の良い友人以上の関係に見えたのだ。
何があったのか・・・。
だから、2人で何処かへ行こうとしている所を見た時は、思わず声をかけてしまった。
何事もないエルを見て、大丈夫だと思ったから送り出したのだ。
もちろん、上手く行っているのなら、それでいい。
だが、エルを傷つける様なら、その時は容赦しないよ。




