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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意
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第84話. ヒトの弱点、それは繋がり

「お連れ様は、最上階にてお預かりしております。お越しくだされば、お引渡しいたしましょう——と、言いたいところですが」


「あなた方をここで放ったところで、その生命はあっけなく尽き果ててしまうでしょう」


 フィルナス、リリア、そしてレイン。3人の前に突如現れし蝿の魔物レイオット。

 紳士として振る舞う反面、その一見物腰柔らかな口調で語られる言葉の内には、鋭き棘の(ごと)き敵意が表れていた。


(噂に聞く銀の焔の魔導士──例の魔法はともかく、本人は戦闘にまるで不向きな子供……。加えて、保護者ヅラした戦闘能力に乏しい無能。そしてまるでおもちゃを振り回しに来たかのような子供ですか。なぜミツキ様はこのような者どもに……)


(ハッキリ言って全員仕留めるのは造作もない──が、ここで私自ら手を下しコイツらを消せば結果的に私が生存する活路は絶たれてしまいます。こんなヤツらなぞどうでもいいが、私自身が生き残ること、それはなによりも最優先すべき事項──!)


「……ふざけやがって……!!フィオリナは無事なんだろうな!?」


 怒りを露わにするフィルナス。なんらかの能力を有しているとすれば、挑発に乗ることは危険を意味する。頭で理解してはいても、彼女の状況がわからぬ現状は堪えることを難しくさせていた。


(フン、大人しくしていればせめてもの情けをかけてやるものを、さっきから楯突いて(やかま)しい男だ。そろそろ黙らせてやりましょうか)


「おやおや、そう興奮なさらないでください。……ご無事ですよ、今のところは」

「”今“ってどういう事だ……! フィオリナを今すぐに解放しろ……!!」

「……先生!」


(……感情が一気に乱れるのが手に取るように分かります。こうも負の感情に傾いては、まず、魔法は使用不可ですね?)


(目の当たりにして改めて断言できる……ヒトの弱点、それは"繋がり"——! それを軽く掻き乱すだけで、ヤツらは著しく取り乱し判断を誤る! 本来ならば勝てる戦いですらも負ける選択をとる!)


 フィルナスが激情し、2人に制止される一方でレイオットは勝利を確信するかのように、余裕の笑みを浮かべた。


(──そして、こういう類の人間は、何があっても身近な者が傷つかない選択をとるもの……! それでは、あなたが一切行動不能になる魔法の言葉をかけてあげましょう)


「あなたが……」

「ねえ、ミツキがどこにいるか知らない?」


(!!?)

(な……!!)


 瞬間的に場が凍りつく。


 レイオットがフィルナスにとどめを刺すため言いかけた言葉──それに丁度重ねられるように尋ねたのはレインだった。


「レーイーンーくん? なぁ〜に言ってるのかな!?」

「いやだって、こいつなら知ってるだろ」

「本当のこと言うとは限らないでしょ? 罠だったらどうするの?私たちしんじゃうかもよ?」


 リリアとレインが言葉を交わす一方でレイオットは硬直する。それは、本来同胞でありながら今や制御不能、遭遇すれば自身をその場で戦闘不能にさせる能力の持ち主の名には違いなかった。


「だってさ、ミツキの知り合いなら、ひょっとしたらコイツ──」

(くっ!! コイツらこれ以上喋るな……! 心がブレる……!)


(もういい!!……最早どうにでもなる……こんなヤツら!ここは手っ取り早く"おもてなし"をさせていただく!)


「あなた方に教える義理はありませんね。しかし、ご安心ください、最上階まではご案内いたしますとも」


 彼は顔を引き()らせながらそう言うと、踵を返し、大広間へと悠然と歩き始めた。


「ただし、暴れられないよう簀巻(すま)きになった状態で、ですが!」


 その瞬間——


「先生!危ない!!」


 同時に2体。青白い体躯に、不気味なほどに長い手脚を持つヴェスパが挟み込むようにしてフィルナスへと襲いかかる。その腕からは水玉をペンダントのように連ねた糸が鞭のように放たれる。


(絡まれば決して逃げられない粘糸……!さぁ、生け捕りにしろ!!)


 ——が、そこは彼の姿はなく、二体が放つ粘糸は虚しく空を舞うのみであった。


「おや、避けましたか……!そのまま捕まれば楽に上に行けるものを……!」


「先生!?今どうやって……!」


 "リフューザル・ステップ——!"


 ——それは、自身に降りかかる一切の災いを拒絶する願いにより可能となる華麗なる回避の身のこなし。


 これを可能とするのは、彼の動力源たる自由の意思によるものではなく、”否定”の意思。彼自身の自由を守るために少年の頃より会得していた術であった。


「——ボクにそのまま捕まれだと?」


「断る!!!」


(意思の切り替え──!拘束を否定することからの自由!それは僕にとっての日常だ……!瘴気のもとでも、コレはできる……!)


 "|そっと包み込む風のまどろみ《ブレンジー・ギフト──!》"


 フィルナスはその片手をそっと宙に置く。

 その場には、濃縮され包みこまれた風の渦が形成されていた。

 彼はリリアへと視線で合図を送った。


「リリアくん!」

「はいっ……!先生!」


 "ヴェント・ダイナミクス!!"


 包みこまれた自由の意思——濃縮された風と銀の焔が混ざり合い、リリアが杖を掲げると同時に、一気に解き放たれる。

 それは魔法同士の相乗効果となり、爆発的な力として通常の火力を軽く凌駕した。


「ぐっ……!」

(……これは……!)


 フィルナスに襲いかかった二体は粘糸ごとその場で消し飛び、危機を察知したレイオットは大きく間合いを開けることでその直撃を免れる。


(この火力……離れたとはいえ、私にも……! 予想外のこの馬鹿げた力——!)


(まさか……"届く"とでもいうのか!? この城を蝕みゆくあの怪物に——!)


(だとしたら……コイツらは、ひょっとすると食わせずにおく"価値"があるか……? 私が生きこれさえすれば構わない)


「やれやれ、ひどいものですね」

「舐めた態度は止めろ……!もう一度言うぞ……今すぐフィオリナを開放するんだ」


「でなければ……次はお前を吹き飛ばす……!」

 フィルナスは揺るぎなきその瞳でレイオットをまっすぐ睨みつける。対するレイオットの表情からは幾分か余裕が剥がれ落ちていた。




 ✧⋄⋆⋅⋆⋄✧⋄⋆⋅⋆⋄✧⋄⋆⋅⋆⋄✧


[AI非使用]

AI非使用

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