第6話. また会えて良かった
[AI非使用]
その後、私達は軍部のなかでスターユが受けていたミッションの依頼元を当たった。
依頼主は軍の情報管理部門。映像記録は一旦リハルの息のかかった部署である戦略部門に回されるが、その後クラウが提出した記録が紛失していることが発覚した。
映像の記録に使われるカード状の媒体は、記録用のものと、撮影用のものとの2枚の対になっている。無くなった方…盗まれた方は記録用のもの。片方が紛失しても、もう片方の方角だけはわかるようになっている。
幸い、撮影用の方はクラウは提出する必要がなく、借りたものをコンパスのように使って記録用の映像記録カードを探し当てるというのがミッションだった。
スターユはそのミッションを、背景を知らずに日課のミッションとして偶然受注し、賊にたどり着いて捕獲、取り戻した中身をそのまま納めた。だが、情報管理部門からすれば、無くなったものを取り戻したに過ぎず、依頼主からはそれ以上の情報は掴むことはできなかった…。
紛失現場である戦略部門に尋ねることは、リハルに直接聞くのとほぼ同義だ。犯人である可能性が高い人物に、決定的な証拠なしにいきなり犯行の詳細を聞いても警戒され、単独ならまだしも何人いるかわからない内部の加担者と敵対・内部分裂してしまうだろう…。
わざわざ危険なリスクは取らなくとも、敵の輪郭と、敵が持つ能力のヒントさえ、なにかの手段でわかれば目的は果たせる。
どうしよう、
[それでも戦略部門に向かう]か、
[レオニウス先生に会いに行く]か…。
そうだ、ヴェスパの危険性をみんなに伝えようとしてくれていたレオニウス先生なら、情報をもっと得られるだろう。内部の敵も、そして魔物に関する見識はきっと彼の右に出るものはいない…。
レオニウス先生は今どうしてるだろう?
王立研究所──
シルベニア王国の研究所は城の近くに立つ、歴史のある巨大な建物で、生物部門だけでなく、魔法部門、科学部門、医療部門など多様な分野を内包する。その近くには学校があり、研究者だけでなく学生も頻繁に出入りしていた。しかし、今日は何やら皆の様子が慌ただしい。
「なにかあったんですかね…?」
「さぁ…?スターユはこういうには来ることはあるの?」
「いえ、その…ぜんぜん…」
(だろうね…)
「今度魔法のこと教えてあげよっか?」
「私が…魔法のことを?」
「うん、魔法使えるようなヤバい敵には滅多に出会わないだろうけど、今のスターユ、めちゃくちゃ魔法に弱そうだもん。あなた、何考えてるかだいたい全部わかるし…知っといたほうがいいよ?」
「なるほど…」
研究所内──
「アリシア様!それに、スターユ様!」
研究所を訪ねると、金髪で長い髪の淑女、リゼットが出迎える。
「リゼット!」
挨拶を済ませ、レオニウスに会いたい旨を告げる。
「うちの人…娘がいなくなってから、昨夜出て行ったきりだったんですけどー」
緊張が走る。おそらく、レオニウス先生はフランが消えたであろうヴェスパの巣へ…。
「大丈夫です、先ほど無事に帰ってきました!娘と一緒に」
「「良かった…!」」
アリシアとスターユはホッとして胸を撫で下ろす。
「はい、本当に…!」
家族が戻り、笑顔で涙ぐむリゼット。
「どうぞ、こちらへ」
王立研究所 生物部門──
扉を開けると…。
何やらドタドタとこちらへ走ってくる…。
物凄い勢いで。
「アリシア〜〜〜〜!!!!」
栗色の髪をした三つ編みの女の子が犬のように飛び込んできた。
「フラン!」
「また会えて良かった〜〜〜〜!!むちゅ〜〜!」
「あはは!うん、私も本当に嬉しい…ってこ〜ら、くっつきすぎ!」
「えへへ〜、変わってないね〜よしよし。…ん?」
フランはアリシアを抱きしめながら、くりっとしたまんまるな目でスターユを見つめる。
「じ〜〜〜〜」
「む…」
フランはスターユを凝視、目が合い、アリシアと交互に見る。
「じ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「むむ…」
スターユは助けを求めるかのようにアリシアの方を向き、二人は目が合う。
「はっ!」
フランはその様子に何か気付いたのか、はっと顔を覆い…
「アリシアが男連れとる〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
研究所の外まで響きそうな音量でフランは叫んだ。リゼットは口に手を覆い微笑ましく笑う。
「なっ、いやそういうのでは…」
慌てて何やら弁解しようとするスターユ
「そういうのじゃ…なかったの?」
「なくないですっ!」
「なんかいちゃつき始めた〜〜〜〜〜〜〜!!!!あたしもうダメかもしれない」
目をぐるぐる回し気絶するフリをするフラン。
(う、うるせぇ〜…相変わらず。でも、このいつも通りのフランにはもう会えなくなるのは覚悟していた。ひとまずは、よかった…)
彼女、フランは、案の定単独で巣に潜入していたようだった。
「フラン、大丈夫なの?どこも怪我はない?」
「うん!一度転んで膝すっちゃったけどね。なんか途中で眠らされてたみたいなんだけど、なんともないよ!パパが助けてくれたの」
「もう少し遅ければ、危険な状態でした…」
フランがパパ、後ろを指した先、口髭を蓄えた大男が姿を現して告げる。レオニウス、王立研究室長でフランの父親だ。
「アリシア様、お久しぶりです。スターユ殿も」
レオニウスは二人に向かい、その巨体で深く礼をする。
家庭が元通りになり、暖かい空気が流れる。
この人たちは、信頼できる。
「レオニウス、あなたが、あの魔物が危険だということをみんなに伝えるために尽くしてくれていたこと…軍の者からあなたに無礼があったことは、クラウからしっかり聴いたわ。ありがとう」
「いえ、本当に申し訳ございません…私の考えが甘く、力不足でこのような事態に」
「皆で協力しましょう。そうでないと、私達はあの魔物には勝てない」
皆は深く頷く。
(レオニウス先生ならきっとあの魔物の弱点を見出せるはず。徹底的に話し合おう。フランには、刺激が強いかな…?)
「じゃあ、行ってきまーす!すぐ戻ってくるから!」
「フラン!?今の話聞いてた!?」
やっぱり、フランも仲間外れにせずしっかり聞いてもらおう…彼女には教育ともう少し落ち着きが必要だ。
(そもそも、どうしてフランは危険を顧みず向かったんだろう?)




