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ヒトの骨格を持つ蝿の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ/GQもん
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意

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第49話. バグ

アルテア城 玉座の間——


「あんた何してるの?」

「・・・」 


 アルテアの景色を一望でき、そして天文台として機能する城のその間。そこに在る財宝や装飾、天体に対する敬意や後世への伝承、意思を高めるためのものではなく、最早玉座に座する者の権威を象徴するために、ただ積み上げられていた。


 そこに座する者は、サリアニケス。漆黒の外套に威圧的な帽子、数々の装飾を身に纏いし魔導士の出で立ちをした彼女は、眼前の帰還者を高くから睨みつけている。その周りには、その城を制し支配するに至らしめた力を有する精鋭が並び、集っていた。


「黙ってるんじゃねーわよ!」

 サリアニケスは叫ぶ。対峙する帰還者——ミツキは微動だにせず、サリアニケスを睨み返している。


(止めようと思ったけど・・・わたしでも、なんとか頼めば、と思ったけど)


「いい?時間をかけていい仕事なんかこの世に存在しない。ちゃっちゃと働けないのあんたは!?」

「・・・」

 玉座に座する彼女は脚を組み、宝石を弄ぶように指で転がす。


(これは無理だ・・・サリアニケス。こいつはわたしの話を聞かない。いや、誰の話も・・・)


「ま、いいわ」


「あの学校には、新たにもう刺客を送ってある。忌々しい魔導士も、あんたを色ボケにしてる坊やも今頃死んでるんじゃない?」

「・・・」

 サリアニケスは愉悦の笑みを浮かべる。

 ミツキは無言のまま眼を伏せ、その拳を裾と一緒に握りしめた。


「わかったら、働け」


 その言葉に対し、ミツキは顔を上げ、再び真っ直ぐ相手を睨みつけると、はじめてその者に口を開く。はっきりと、自分自身の意思を乗せて。


「——わたしは」


「あなたの言いなりになるために生きているわけじゃ、ない」


「ああ!!!??」


「今なんつったテメエ!!??」


 その間にいる者全員に響き渡る怒声。それを眺める者たちは、ただ動けずにいた。

 ——が、ミツキは眉一つ動かさず、その表情は揺るがない。


 そして、力強く返答する。


「——わたしは」


「あの人たちと一緒に、自分の生きる意味を見つける方が、よっぽどいい」


「はぁ???ヒト???」


 サリアニケスの表情はみるみる歪んでいく。そして、立ち上がり更に高い位置から言葉を投げつけるように浴びせた。


「なにいってんの!!??」


「私達より遥かに"劣り"!なけなしの力を"差し出し"、ただ"蹂躙され"!時とともに"減り"この世界からじきに"消えていく"だけの存在がなんだって?」


 が、対す者は、ただ呆れたような顔をする。

 

 その掌には"アトラデネブ"——

 輝きを放つ深紫の結晶を浮かべ、一対の翼を模した宝石の"弓"へと姿を変える。


 そして、言葉を返す。


「サリアニケス。あなたには、わからないでしょう」


 そして、怒りに打ち震え身を震わせるその相手に対し、遠くを見つめるような瞳で、笑顔をほころばせながら、心の底からの想いを打ち明けた。


「好きな人と心を通わせるのって、すっごく楽しいのよ」


「・・・・・・・」


 ミツキから飛び出したのは、人間に対し侵略を進めてきたヴェスパにとって、決してあってはならない言葉だった。

 サリアニケスは最早怒りを通り越したのか、その言葉に目眩でも起こしたかのように、片手で頭を抱えながら目を瞑り、大きく息を吐く。


「ミツキ・・・・・・あなた、バグってるわね」


「それは人間どもを蹂躙するための手段であって、私達の目的ではない」

「おい、レイオット!!ミツリ!!!こいつを捕らえなさい!!」


 その声は再び部屋中に響く。その場にいて声が聞こえない者はいない。意味もわからないものもいない。

 ——が、誰一人動かない。

「・・・」


「ツェグロース!!」

(いや無理、ワシを呼ばんでくれ。アドゥバンも酷かったけど、ここはまた別の意味で怖い!この職場もすぐ辞めよう……。ていうか人望なさすぎじゃろあの魔導士風のヤツ)


「ちっ」


「どいつもこいつも無能ばかりかよ!!ええ!?」


「わかってんの!?私の能力はあんたと違って、相手が何を思おうが関係ない!私が思うままに掌握する!!」

 サリアニケスはそう言うと、その片手に自分の背丈を超える、宝石の長杖を浮かべ手に取る。


「私の"拘束の意思"がこれまでで最高潮に達しそうな気分よ。あんたが朽ち果てるまでここに拘束してやるわ」

「あっそ、わたしも今までで一番出ていきたい気分かな」


「逃がすと思うの?」

 彼女はミツキへと照準を合わせるように紫色の杖の先を差し向けた。

 

「それ使ったら暴れるけど?あなた以外、みんな私の歩む運命に巻き添えになってもらう」


(こいつ・・・・・・この生意気なガキの能力——好意を蓄積することで、相応する権限を得ることができ、対象を従わせる。認めたくないが、単純なスピードだけならこいつのほうが上・・・そしてこっちの攻撃を外せばあのガキに兵をもっていかれる!)


「ぐ・・・・・ガキが!」

「じゃあ、もう帰らないから」

 宝石の長杖を構えたまま硬直するサリアニケス。ミツキは踵を返し、玉座の間を後にしようとした。


その瞬間——


"ムーンドロップ"!!

"シグナスノッチ"!!


 ——それは、ほとんど同時だった。

 青白い雫の如き光の塊が頭上から降り注ぎ、その標的となったミツキは身を翻し、その避け方を知っていたかのように躱す。

 そして同時に彼女が手にしていた宝石の弓は、周囲に控えていたヴェスパに向かって複数の矢を同時に放つ。輝ける矢は5本同時に放射状に広がり分かれると、重武装の屈強な大型のヴェスパ5体に、それぞれがすべて命中した。


"束縛せし紫水晶の鎖(アメジスト・チェーン)"——!


(こいつ、やりやがった!!!)


 これまで微動だにしていなかった5体の屈強な大型ヴェスパは、凄まじい速度でサリアニケスへと力任せに突進し、その巨大な体躯で身を抑え込もうとする。他の兵が慌ててそれを引き剥がそうとするのを後目に、ミツキは玉座の間を去ろうとする。


「待ちやがれクソガキ!!!誰かあいつを止めろ!!!レイオット!!!」


「さよなら」


 サリアニクスは抑え込まれながら必死に叫ぶも、ミツキを追いかけ、止めようとする者は、その場には誰もいなかった。


(レインくん、リリアちゃん、わたしのせいで・・・だなんてそんなのは絶対に嫌だ。強く願えばきっと大丈夫なはず——!)


(——だからお願い、すぐに行くから、無事でいて!)



[AI非使用]

AI非使用

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