第39話. 勇者の血筋
読んでいた本を畳むミツキ。“シルベニア王国史”…か。以外と真面目な本を読むんだな。他にも、ミツキの机にはたくさんの本が積まれている
このふざけた態度でも、読書家の子なのか?お昼休みになにしているかと思ったら、図書館に通っているのだろう。
どうやら半分以上が恋愛小説ばっかりだが、シルベニア以外も含めたアストリアの王国の歴史書に、心理学や人体解剖の本…。なんだか独特な組み合わせだ。
あと、コイツは隠しているつもりだろうが、本来禁止されている炭酸飲料を教室内にこっそり持ち込んでいる。相変わらずよく分からんやつだ。
「今日はピコラス休んでるから、ミツキが相手してくれると嬉しいんだけど」
「う〜ん、それって“もしかして、私へのお願い”なのかなぁ?」
なんか俺の横…リリアの方から殺気みたいな空気を感じる!
でも、わかってくれリリア。毎日我流の訓練をマイペースに続けるだけじゃ、あのハエのバケモノからはみんなを守れない。
ヴェスパと戦って制するなら、少なくともミツキは超えなければならない。これはリリアのためでもあるんだ。お前が拐われてしまうと、全てが終わる。
「頼む!このとーり!」
「しょーーーがないなーー」
待ってましたと言わんばかりのミツキ。こうなるのを読んでたな?コイツ。
「えーーーなんで!?」
リリアはショックを受け、俺の肩を持ちがたがた揺らしてくる…。俺は壊れた機械か何かか。
「こっから更にレベル上げるためには、しょうがないんだよ。こないだのリリアも見てただろ?ミツキは強い。わかってくれ」
「⚪︎△×◻︎♯!!!!」
聞く耳を持たないリリアがぽかぽか殴ってくる。今はダメだ、会話にならない。最近わかったけど、この子は予想していたよりもワガママだ…。
本当はお昼休みに説明しようと思ったんだけど、彼女はミツキのことを話題に出すと、途端に黙り込んでしまう。だから上手く伝えようにも、正直困ってしまっている。
ヴェスパと戦えるくらいに経験を積んで、みんなを守れるくらい強くなるための筋道を模索する以外に意図はないのだが…。
守らなければならない対象はリリアだけではないし、ここで立ち止まるわけにはいかない。
感情の嵐が過ぎ去ったら、ちゃんと説明してやろう。
「もう知らない!」
「あ、おい!どこ行くんだよ!」
リリアはへそを曲げてどこかへと行ってしまった…。
「どーしたんだろーねあの子。じゃ、行こっかレインくん」
「お前なぁ…」
俺とミツキは訓練場へと足を運ぶ。
(ふふふ。やっと、きた…⭐︎)
(絶好の“チャンス”!!)
(あの子が離れれば怖いモノナシ!ようやく“わたしの役目”を果たせる!)
訓練場──
俺のせいでピコラスがダウンしている今、テスト前の時期ということもあって、放課後の訓練場には他に誰もいない。
ここにはいろんな種類の近接武器が置いてあるが、ひとまず前と同じ条件、俺はショートソードの“アルタイルエッジ”、ミツキはスタンダードなレイピア。お互いに傷つくことがない魔法道具をつけた状態で打ち合っていた。
相変わらず、ミツキは速い。逃げるというより、一見当たりそうに思える間合いを作っておいて絶妙に躱す。
この間までは、彼女との終わらない鬼ごっこでヤツに舐められるしかなかったが、今日は一味違う。
躱すことがわかっているなら…!
俺はミツキが身を翻す先に剣を宙に置くように、構え、振る。このままだと、向こうからその素早い身のこなしで当たってくれる形になる。
(速くてもあんたの躱し方はもう覚えてんだよ!)
(!)
余裕の表情を浮かべていたミツキは、ほんの少し驚いた様子をみせ、俺の宙に置くように振った剣をレイピアでガードする。
彼女はスピードも疾いが、反応速度も並のそれじゃない。
このガードされた瞬間…。ここが俺の起点となる。
コイツが以前見せた“王道の剣技”。
それを俺は忘れなかった。
いきなり身につけるのは無理でも、覚えていれば完成までの筋道となりえる。
名前は、ピコラスと考えていた…。
“ロイヤルブレード”!!!
(この子、見よう見まねでわたしの動きを…!)
俺はガード直後硬直したミツキに対し続け様に4回叩き込む。ミツキに全てガードはされたが、自分の身にソレが技として宿ったのを感じる。
「・・・いいね〜、なかなか、やるじゃない!」
「全部受けるお前もすげーよ。絶対訓練してただろ」
「だからこないだが初めてだってば」
ソレが本当ならまじでどんな化け物なんだって話になる。
とはいえこの程度で満足していてはヴェスパからは仲間を守れない。
ガードされっぱなし、それはあの虫の外殻に歯が立たないのと同じだ。
だから──
「わりぃ、ちょっと力入れるぞ」
女の子でも、ミツキなら受けれる。
ミツキの動きを読んで、ガードさせることはどうやらできる。
──そこから
“グランストライク”!!!
(またこの間の…!)
俺は剣を返し押し出すように薙ぎを叩き込む。
が、手応えがやわらかい。俺の力と速度に呼応するようにレイピアでしなやかに捌かれ、その力を殺され受け流される。
だが、コレからだ──
受け流される前提でグランストライクの二撃目を放つ。
本来は魔法に乗せる意思の力。それを“自らの剣に乗せる”。
襲われている者を全力で守りたいという、俺自身の意思──
(!!!)
“カアアアアアン”
ミツキの剣は弾け、宙に舞った。
彼女はその場に立ち尽くす。
「お、おいミツキ、大丈夫か?」
(やっぱり、間違いない…)
(普通の人間ではまず捉えられないわたしを捉えたり、一目でわたしの動きを会得しようとしたり、経験を積むことによる常人では説明のつかない成長性…!)
(この子は、わたしたちの誰もが今まで見つけることができなかった…)
(“勇者の血筋”だ──!)
AI非使用




