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第23話. 分かち合う意志

アドゥバンの目にも止まらぬ踏み込みと、ウェポンブレイカーを用いて力一杯殴りつけ生まれる圧倒的なエネルギー。再び俺は攻撃を防ぐが、いかに俺の大剣が破損しないといっても、ガードは崩れ、慣性によってその身は後方に大きく運ばれてしまう。


「もう一発だ」


俺が体勢を立て直す前に、アドゥバンは距離を詰めようとする。

連撃が来る…圧倒的なパワーを以って戦うこのアドゥバンの勝ち筋は、ガードもろとも叩き潰すか、ガードを崩して仰け反ったところを連撃で屠ることだろう。

直撃すればその場で勝敗が決まる程の威力。それだけは避けなければならない。

俺は背の柱を蹴り勢いをつけると、体勢を低くし、ウェポンブレイカーを頭上スレスレで潜る様に躱す。その勢いのまま、身を翻し回転させる力を利用し、アドゥバンの足元…装甲で護られていないアキレス腱に当たる部を目掛け大剣を振るう。


同時に、先ほどまで俺の背にあった石柱はウェポンブレイカーの追撃により粉々に砕け散る。


「そんなもんか?この国で最強っつーのは?その程度なら姿を消してちょろちょろするのも仕方ねーなぁ?オイ!」


俺は、オフィーリアの薙ぎを確かに足元に命中させた。


しかし、断ち切ったという手応えが、ない…。俺の大剣によるダメージがなく…効いていない。

それだけ硬い敵ということだ。


アドゥバンは踏み込み、詰め寄ってくる。間合いをとらせず追い詰め、逃げ場を封鎖し力で叩き潰すという、こいつの意図は明確、対抗できる手段は限られる。


つまり、まともに攻撃を食らえば即死級のダメージを負い、こちらの大剣を以ってしても恐らく通常の攻撃は通らない。逃げるという選択肢はなく、間合いを取れば一気に詰められノックバックと共にガードを崩される。


(どうする…)


来る、向こうの射程内に、入ってしまう。


(あの武器…)


(あれの、有効な距離と俺の距離は違う…ならば、俺の攻撃が通るギリギリの距離で…)


俺はすぐさまアドゥバンの踏み込みに合わせる様に接近する。

ウェポンブレイカー…圧倒的な破壊力を持つ武器には違いないが、あまりにも大きく、その形状の特徴から過度に接近すると十分威力を発揮できないハズだ。


"クレセント・スバルツォ”──


アッパーカットの様に大剣を下から勢いよく打ち上げる。城の入り口で戦った際、アリシアとのコンビネーションでバスティに叩き込んだ、かなり接近していても有効な技だ。


確かに頭部に命中する軌道…しかしアドゥバンは上体をわずかに横に逸らし、大剣の剣先は前傾姿勢であったアドゥバンの顎を掠める。見てから対応されている…。


(この反応速度…!)


スターユが前に詰め寄った行為が意外だったのか、一瞬驚いた表情を見せると、スターユの鎧をウェポンブレイカーを持つ反対の手で強引に掴む。


(これは…まずい!!)


「おらよ!!」


俺は先ほどアドゥバンの一撃により粉々に砕け散った柱に向かって片手で投げ飛ばされ、背中から激突した。


「ガハッ……!」


「…フン、おもしれーやつだな?」

アドゥバンは鉄塊を床に叩きつける。


「これまで、俺の目の前に現れて来たやつは、殆どがその場で動けなくなるか逃げ惑う奴らだった。逆に俺に近寄ってくるやつはそうそういねー。それも、諦めて死ぬ気じゃなく、本気で戦う気で向かってくるヤツは、初めてかもな」

その眼光は高くからこちらを見下ろす。俺も、負傷しようとも一瞬たりとも敵の動きから目を離さない。


「ガッカリさせんじゃねえぞ?」


柱に激突し体幹が鈍く痛むが、痛みに構っている場合ではない。俺は必死に身体を起こし体勢を立て直そうとする。


──すると、いつの間にか、俺の身体が何かに包まれている。


(灰色の炎…?)


攻撃だ、斜め後方の死角から狙った俺への、魔法を使ったヴェスパからの隠れながらの追撃。見覚えがある。


「邪魔するんじゃねえ!!!!」


(!?)


アドゥバンは突如怒鳴り声を上げると、俺の後方…目にも止まらぬ速度でその攻撃を放つ主へと接近し、ウェポンブレイカーを叩きつける。一瞬だけ見えたそれは、貴族の様な魔導ローブに身を包んだ、小柄な老人の様なヴェスパ…、ツェグロースだった。彼は、解放された小窓から遥か遠くへと叩き飛ばされ夜空へ消えていった。


他にも、俺がダメージを受けたところを功をなさんが為に、下級であろうヴェスパ達が駆け寄ってくる。が、アドゥバンにより頭上から一撃で叩き潰されていく。

(コイツ…仲間を…)

「ちっハエどもが!!」


アドゥバンは一対一の戦いに拘りがあるのだろうか。

この瞬間だけでも息が整う助けになる。


先ほどの灰色の炎…ツェグロースの使った技…。

確か奴は、城の入り口で戦いあの技を放った時、“バッドステータス”と言っていた。

けれど、俺の体はほんの少し暖かさを感じる以外には変わったことはない。


(…!)


"揺るぎなき金剛石の意(ダイヤモンドサニティ)思"―


稲妻の様に脳裏を駆け巡る記憶。心が折れない限り保つ炎をはじめとした属性攻撃、そして状態異常への耐性。

これはアリシアに備わっているはずの能力だ。

俺が装備しているバングル…隠密としての効果は衝撃を食らったことにより切れているが、このバングルにはアリシアの“揺るぎない意志の力“…魔力が込められている。


俺を信じて、あの時、能力を分けてくれた意志──


(城の入り口で戦った時のこと…あれを思い出し…意志の力を集中させる!)


アドゥバンは下級ヴェスパを屠り終え、再び俺に向かいウェポンブレイカーを薙ぎ払う。今度は潜る隙もない程に低空から打ち上げる様な軌道。


(来る!)


俺は脚に力を込め、退かない意思と共に跳躍し圧倒的なエネルギーと共に薙ぎ払われた武器を飛び越える。

床を蹴り弾く感覚──

俺は、自分でも想像した以上に高く跳躍していた。


そして──


「…!」


オフィーリアを真っ直ぐ縦に構え、脳天を目掛けて振るう。

「ちっ…!」

アドゥバンは首を逸らし、頭部への攻撃を回避するも、大剣による一撃は肩に直撃する。

(くっ…やはり硬い!)

しかし、奴は怯む様子はない。

アドゥバンは俺の着地を狙い、俺の鎧を強引に掴む。


投げられる寸前、俺は思い出す。アリシアの姿、俺を信じて能力を共有してくれた時のこと。そして確かに俺もその能力を攻撃に乗せたこと──


"気丈なる金剛石の一撃(ダイヤモンドスラム)!!!!"


「ッッ!」


俺はアドゥバンの腹に握り込んだ拳を、腰を落とし意志の力と共に思いっきり叩き込んだ。響き渡る衝撃、輝きと共に奴は前のめりになる。

続けて俺は地面を蹴り弾き、垂れた頭の顎に、全力で跳躍せんとする勢いと共に膝で蹴り上げた。


「グハッッ!!」


アドゥバンは弾き飛ばされて後方に転倒する。体勢を立て直す前に俺はオフィーリアを構え直し、再び地を蹴り弾く。


“フルムーン・アズール!!!!”


「!!!!」


完全な手応え──


本来、相手を無力化させた後に俺が戦闘を終わらせる為に使って来た技…。


どうやら切断は叶わない敵の様だが、一切のブレなく薙ぎ払う渾身の剣に意志の力を乗せ、衝撃と共に弾き飛ばす…。この技によってアドゥバンへのダメージが確認できる。


「…やるじゃねえか」

アドゥバンは身体を起こすとウェポンブレイカーを床に突き、立ち上がる。


「ククッ…この国で最強ってんなら、そうでなきゃな?お前の名前は──」


「…スターユ」


「…覚えといてやる」

アドゥバンは武器を担ぎ、再び構える。同時に後方からゾロゾロとヴェスパが駆け寄って来ていた。


(十分だ…攻撃が通る手段さえあれば…!)

AI非使用

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