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第15話. 感じた通りそのまま

(あの女を甘くみていた…!…一撃一撃が…さっきとは別人のように重い!!)


城の最上階の高度から、アリシアにより地上へと殴り叩きつけられたノクティーヌ。

この短時間での状況の変化──。

アリシアを戦闘不能寸前まで追い込み、確実に仕留めていたはずの彼女に無視できないダメージを食らっている現状に、ノクティーヌは耐えがたい屈辱と腹立たしさを隠せずにいた。


(アイツ…カラッカラの枯れた井戸のように意思の力が枯渇していたのに!それが、急に…!溢れる泉のように力を取り戻すなんて!、死に損ないの人間にどこにあんな力が残っていたっていうの!?)


鈍く痛みを訴える、上体を起こしながら、後方に目をやると、そこにはアリシアが壁を蹴り、拳を握りこみこちらを攻撃せんとする姿があった。


(来る…!これ以上あの攻撃を食らったら、深刻なダメージは免れない!)


(逸らさなければ…ほんの少しでも、回避を…!)


アリシアは地面で蹲っていたノクティーヌを仕留めるべく、その身を繰り出すと轟音と共にその一撃が炸裂する。


攻撃の直後、そこには、標的を目掛け渾身の拳を叩きつけたアリシアと、それにより形成されたクレーター。そして、そのわき腹をほんのひと拳分だけ回避したノクティーヌの姿があった。


彼女は咄嗟の判断により、自身の否定の刃を地面との間に生成し、ごくわずかに身をずらすのが精いっぱいだった。その行動には最早アリシアの攻撃を見切る程の余裕は残っておらず、闇雲な判断での回避であったが、偶然にも戦闘不能となるレベルのダメージを負うことを免れていた。


刹那の隙──


その一瞬を見逃さず、ノクティーヌはその身を翻し地面を蹴ると、否定の刃をスケートの様に利用し目にもとまらぬスピードでその身を滑らせる。


「逃がさない!!」


アリシアは"猛然たる金剛石の突撃(ダイヤモンドブリッツ)"で追うことを試みるも、

ノクティーヌは戦闘そのものを"拒絶"するかのように、あっという間に見えなくなってしまう。


「くっ…流石に追いつけない…とんでもない逃げ足ね」

悔しいけど、スターユを置いて深追いするわけにもいかない…。


(アイツ以外にも、警護と称して引き連れてきた下級の虫どもが入ってきているみたい…まずはみんなを避難させないと…この城と…町はもう危険…)


「アリシア様!」

スターユの声。今なお危険な状況ではあるが、何かがほんの少し違っていれば、互いに戦闘不能になっていた。

こうやって合流できることに、私は安堵する。


「御無事ですか?」


「ええ、平気よ。アイツには逃げられちゃった…。さっきは危なかったけど、あなたのおかげで、私…」

スターユは快く微笑む。私も思わず笑みが零れた。


「その、随分と技を連発していましたが…」

確かに、以前の私ならあんな風に技を連発なんて、とてもできなかった。

今の状態を正確に説明するのは難しい…けど。


でも、感じている通りにそのまま言うとすれば──


「大丈夫よ!わたし、スターユと一緒にいればいくらでも意志の力が湧いてきて、魔力切れにはならない気がするの!」

自分でも、いったい何を言ってるんだろう、というようなことを口走ってしまったが、

自身が感じるこの感覚に、何も間違いはなかった。

暖かくも胸が高鳴るような、不思議な高揚感がまだ残っている。


「え、えーっと…それは良かったです」

照れくさそうに頬をかく仕草をしながら視線を逸らすスターユ。


「スターユ、リュクスのところに行くわよ」

「リュクス様…ユースタシアの王女のところへ、ですか?」


「ええ、虫たちがこの城に入ってきてる。たぶんアイツは、女性タイプのヴェスパ…。なんでノクティアさんの姿をしていて、王家の血筋の能力まで持っているのかはわからないけれど、バルメキアは、もう危険な状態だと思う」


「そんな…」


「そして、アイツは今日、この城を堕とすために虫を引き連れてきた。多分、この町の周りの巣からも、虫が次々に来ると思う…急いでみんなを避難させなくちゃ。リュクスの力を借りたいの。あの子、でっかい兵器を持ってきてるから、裏門の方にいるかも」


「わかりました。参りましょう!」


「そこの御人達、ちょっと良いかな」

声…。城の方から…誰か歩いてくる。


「其方は、この国の王女様であられますな?」

声の主は、小柄でシワクチャな老人のような顔をしている…。触角に…、背中には羽。手には古めかしい曲がりくねった杖を持っている。

ヴェスパだ。


(上級…?ボス以外にも人の言葉を話せるやつがいるのね。そしてコイツは多分…魔法を使える…。まあ、王家以外にも魔法を持つ血筋はあるから、使えたとしても不思議ではないか…)


すると、小さな老人のような見た目をしたヴェスパは、膝をつき、頭を垂れ、手のひらを地に伏せる。


(土下座──?)


「ワシは、ツェグロースという者じゃ。見ておったぞ、お主の姿。我々の頭目をああも痛めつける相手とマトモに戦おうとは思わぬ。見ての通り、こちらに戦意はない」


「我々には停戦の準備がござりまする。無用な争いはもうここで終わりにしましょうぞ。さぁ、こちらへ」

ツェグロースはそう言うと、こちらへ手招きしてみせる。


(コイツ……)

[AI非使用]

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